20年以上連れ添われたご夫婦で、別居後まもなく夫の側から離婚調停を申し立てられた40代の女性からご相談がありました。依頼者様は、夫から離婚を求められ、離婚自体はやむを得ないと考えていましたが、子どももいるため子どもの親権をどうするのか、夫婦で築いてきた財産をどのように分けるのか、年金分割についてどのように対応すればよいのか分からず、不安を抱えていました。
特に、20年以上という長い婚姻期間があるため、自宅や預貯金だけでなく、夫の退職金などについてや、離婚後の生活を考えたうえでの親権や養育費についても具体的に検討する必要がありました。
そこで、これまでの子どもの監護状況や夫婦の財産関係などを確認し、離婚調停において依頼者様の希望する条件を適切に主張していくことになりました。
離婚調停を申し立てられた場合に早めに準備したいこと
夫から離婚調停を申し立てられた場合、調停期日までにできるだけ早く自分の状況を整理し、希望する離婚条件を明確にしておくことが望ましいです。調停では、離婚するかどうかだけでなく、親権、養育費、財産分与、年金分割など、さまざまな事項について話し合うことになります。特に、財産、子どもの監護状況、離婚後の生活などについては、必要な資料を集めたり、これまでの経緯を整理したりするために時間がかかる場合があります。調停が始まってから慌てて準備するのではなく、調停で希望する条件を具体的に伝えるため、早い段階から自分の主張やその根拠となる資料を整理しておきましょう。
離婚を切り出された側でも条件を主張できる
夫から離婚を切り出された場合、相手の希望する条件を受け入れるしかないと思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、離婚を求められた側であっても、親権や養育費、財産分与、年金分割などについて、自分の希望する条件を主張することができます。今回の事例でも、依頼者様は離婚自体についてはやむを得ないと考えていましたが、親権や財産分与、年金分割などについては、離婚後の生活を考えて適切な条件を求めました。その結果、母を親権者とし、養育費月額5万円・財産分与約400万円・年金分割の按分割合0.5という条件で調停が成立しました。離婚することと、どのような条件で離婚するかは別の問題であり、離婚を受け入れる場合でも、離婚後の生活に必要な条件を整理し、納得できる内容になっているかが大切です。
財産分与では資料の確保がポイント
財産分与を適切に進めるためには、夫婦がどのような財産を保有しているのかを把握することが必要となります。特に、夫婦の一方が財産を管理している場合には、もう一方がすべての財産状況を把握できていないこともあります。預貯金であれば通帳や取引履歴、不動産であれば登記事項証明書や固定資産に関する資料、保険であれば保険証券など、財産の存在や内容を確認できる資料を準備しておくと有効的です。また、夫に退職金がある場合には、退職金に関する資料についても確認しておく必要があり、どのような財産があるのかを把握できなければ適切な主張をすることが難しくなる場合があります。そのため、別居後に財産状況が分からなくなることも踏まえ、可能な範囲で早めに資料を確保しておくと良いでしょう。
親権ではこれまでの監護状況が重要
子どもの親権をめぐって夫婦の意見が対立している場合には、これまで誰がどのように子どもの監護を行ってきたのかを整理しておくこと必要となります。食事や入浴、着替え、学校への送迎、宿題の確認、学校行事への参加、病気やけがをした際の対応など、日常生活の中で行ってきた監護を具体的に振り返ることで、自分の監護状況を整理しやすくなり、現在の生活環境だけでなく、離婚後に子どもがどのような環境で生活することになるのかについても考えておく必要があります。
親権について主張する場合には、「自分が親権者になりたい」という希望だけではなく、これまでどのように子どもを監護してきたのか、今後どのような生活環境を提供できるのかなど、具体的な事情を整理し主張できるかが親権をめぐる判断に大きく影響します。
年金分割や退職金も確認する
離婚条件を検討するときには、目の前の財産だけでなく、将来の生活に関わる項目についても把握しておく必要があります。退職金は、支給時期や婚姻期間などによって財産分与における扱いが異なる場合があるため、夫に退職金がある場合には、対象となる可能性があるか確認しておくと良いでしょう。また、年金分割は財産分与とは異なり、将来受け取る年金に関係する制度であるため、離婚後の生活設計を考えるうえでも、対象となるか、どのような手続が必要なのかを確認しておきましょう。
財産分与だけで離婚条件を考えるのではなく、退職金や年金分割についても含めて、離婚後の生活を見据えて検討することが、離婚後の生活を安定させるためにも望ましいです。
子どもの親権や養育費、財産分与、年金分割について、それぞれの事情を踏まえて主張をしました。財産分与については、自宅や夫の退職金の清算を主張し、財産分与を実現し、親権については、これまでの子どもの監護状況などを丁寧に主張し、母を親権者とすることができました。その結果、養育費月額5万円・財産分与約400万円・年金分割の按分割合0.5という条件で調停が成立しました。ご依頼から約7か月で調停が成立し、離婚後の生活に関わる重要な条件について整理したうえで解決することができました。
離婚調停で主張したポイント
今回は、主に「親権」「財産分与」「年金分割」の3つについて、依頼者様の状況を踏まえて主張しました。離婚調停では、単に「この条件にしてほしい」と希望を伝えるだけでなく、なぜその条件を求めるのか、その根拠となる事情や資料を整理しておくことが希望する条件を認めてもらうための重要な要素となります。今回のケースでも、子どもの監護状況や夫婦の財産状況などを確認し、それぞれの問題について具体的に主張しました。
親権・監護状況について
親権については、これまでの子どもの監護状況などを丁寧に主張しました。親権について検討する際には、これまでどちらの親が子どもの日常的な世話を担ってきたのか、現在の生活環境はどうなっているのか、離婚後も子どもが安定した生活を送れる環境を確保できるのかなど、さまざまな事情を整理することが必要となります。
親権については、「母親だから親権を取得できる」と単純に決まるものではなく、これまでの監護状況や現在の生活環境など、子どもの利益を踏まえた個別の事情が大切なポイントとなります。そのため、親権を希望する場合には、これまで自分がどのように子どもの監護を行ってきたのかを整理し、具体的な事情として説明できるようにしておくこと準備となります。
財産分与について
財産分与については、自宅や夫の退職金の清算を主張し、財産分与を実現しました。財産分与とは、婚姻中に夫婦の協力によって形成した財産を、離婚に際して分けることをいい、財産分与の対象となる財産には、預貯金や不動産のほか、株式などの有価証券、生命保険の解約返戻金などが含まれる場合があります。また、財産の名義が夫婦のどちらか一方になっている場合でも、婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産であれば、財産分与の対象となる可能性があります。
そのため、「夫名義の財産だから自分には関係ない」と考えるのではなく、婚姻期間中にどのような財産が形成されたのかを確認することが必要となります。今回のように自宅があるケースでは、不動産の価値だけでなく、住宅ローンの残高なども確認したうえで、財産分与においてどのように扱うのかを検討していきます。
さらに、夫に退職金がある場合には、退職金についても財産分与の対象となるか確認し、退職金がすでに支給されているのか、将来支給される予定なのか、婚姻期間中に形成された部分がどの程度あるのかなどによって、具体的な扱いが異なる場合があります。財産分与を適切に進めるためには、夫婦がどのような財産を保有しているのかを事前に把握しておくことが必要です。把握するために、通帳、不動産に関する資料、保険証券、退職金に関する資料など、財産の存在や金額を確認できる資料があれば、できるだけ早めに整理しておくとよいです。また、別居時点における夫婦の財産状況が重要になる場合があるため、別居した時点でどのような財産が存在していたのかを確認できるよう、通帳などの資料を早めに確保しておくと良いでしょう。
年金分割について
年金分割についても主張しました。年金分割とは、離婚した場合などに、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を夫婦間で分割する制度です。財産分与とは異なる制度であるため、離婚条件を検討する際には、財産分与とは別に年金分割についても確認する必要があります。年金分割は、離婚時に現金を受け取る制度ではありませんが、将来受け取る年金に関わるため、特に今回のように婚姻期間が長い夫婦の場合には、離婚後の生活設計を考えるうえでも確認しておきたい重要な項目です。夫婦間で合意できない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることや、離婚調停の中で年金分割について話し合うことも可能です。
ただし、年金分割には請求期限があるため、離婚が成立した後に「年金分割をしていなかった」とならないよう、事前に確認しておくことが必要となります。離婚を求められた側は、離婚そのものへの対応に意識が向きやすいですが、離婚後の生活まで考えると、親権や養育費だけでなく、財産分与や年金分割はしっかり確認しておきたい事項となります。
田渕総合法律事務所が離婚問題に強い理由
離婚調停を申し立てられた場合、離婚するかどうかだけでなく、親権、養育費、財産分与、年金分割など、離婚後の生活に関わる条件についても一緒に整理しながら進めることができます。特に、財産分与では自宅や預貯金だけでなく、退職金などについても確認しておきましょう。また、年金分割は財産分与とは別の制度であり、離婚後の生活設計にも関わるため、忘れずに確認しておきたい項目です。離婚後の条件について希望を伝え、必要な主張をすることはできます。調停が始まる前から財産資料や子どもの監護状況を整理し、自分が希望する離婚条件を明確にしておくことが、納得できる解決につながる第一歩となります。
親権や財産分与、年金分割など複数の問題が関係する場合や、自分だけで対応することに不安がある場合には、早い段階で弁護士に相談することも検討するとよいでしょう。田渕総合法律事務所では、離婚問題をはじめ幅広く対応しております。
今回の事例では、離婚そのものはやむを得ないという依頼者様の意向を踏まえながら、親権、養育費、財産分与、年金分割について一つずつ条件を整理して主張しました。その結果、親権者を母とし、養育費月額5万円、財産分与約400万円、年金分割の按分割合0.5という条件で調停を成立させることができました。特に、年金分割や退職金は、離婚条件を考える際に見落とされやすい項目です。離婚後の生活を考えるのであれば、現在の財産だけでなく、将来の生活に関わるこれらの項目についても確認しておくことが大切です。また、財産分与の基準時は原則として別居時ですので、通帳などの資料は早めに確保しておくと安心です。
夫から離婚調停を申し立てられた場合、相手のペースで話が進んでしまう前に、自分にとって必要な条件や確認すべき財産を整理しておくことをおすすめします。