【堺 弁護士が解説】SNSの乗っ取り被害|復旧と刑事告訴の手順 |堺市の弁護士【田渕総合法律事務所】堺東駅5分

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【堺 弁護士が解説】SNSの乗っ取り被害|復旧と刑事告訴の手順

この記事のポイント

  • 乗っ取りに気づいた直後は、パスワードの変更よりも先に、登録メールアドレスと電話番号が書き換えられていないかを確かめる。ここが取られていると、変更したパスワードをその場で上書きされてしまう。
  • 他人のIDとパスワードを使ってログインする行為は不正アクセス禁止法3条に反し、11条で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められている。IDを盗む行為、配る行為、預かる行為、入力を求める偽サイトを作る行為にも、それぞれ別の禁止規定が置かれている。
  • 乗っ取った先で何をされたかによって、私電磁的記録不正作出や電子計算機使用詐欺、名誉毀損といった刑法上の罪が重なる。名誉毀損と侮辱は告訴がないと起訴できず、告訴できる期間は犯人を知った日から6か月である(刑事訴訟法235条本文)。
  • 誰がやったのかを突き止めて賠償を求める道もある。発信者情報開示命令という裁判手続が使え、消去禁止命令をあわせて申し立てればログの保存も図れる。
  • 初動の記録の残し方と、どこまで自分でやってどこから弁護士に渡すかの線引きは、お問い合わせから個別にご相談いただけます。費用についてもあわせてご覧ください。

目次

ログインできなくなった朝に、まず何を確かめるか

いつもどおりアプリを開いたら、ログイン画面に戻されている。パスワードを打ち直しても通らない。友人から「変なリンクが送られてきたけど大丈夫?」と連絡が入り、自分の名前で見覚えのない投稿が並んでいることに気づく。堺市内からお寄せいただくネット関係のご相談のなかでも、この形で始まるものは少なくありません。

このとき多くの方が最初にやろうとするのが、パスワードの変更です。気持ちとしては自然な順番なのですが、順序としては一段あとに回したほうがよい場面があります。乗っ取った側は、ログインしたあとまず登録メールアドレスと電話番号を自分のものに書き換えます。そこを押さえられていると、こちらがパスワードを変えた直後に「パスワードをお忘れですか」の再設定メールを相手側に飛ばすことになり、何度やっても取り返せません。

ですから、確認の順番はこうなります。まだログインできる状態なら、アカウントの設定画面を開いて、登録メールアドレス、電話番号、二段階認証の登録先、連携している外部アプリの一覧を見ます。ここに知らない情報が入っていれば、それを先に自分のものへ戻します。そのうえでパスワードを変え、ログイン中の全端末からサインアウトする操作を行います。

すでにログインできなくなっている場合は、自力での操作は一度やめて、サービス側の復旧窓口に入ります。この段階で急いで記録を取っておくべきものがあります。自分の名前で出ている投稿やダイレクトメッセージの画面、ログイン通知のメール、再設定を試みたときのエラー表示です。あとから「いつ、どの時点で、誰のものでもない操作が入ったのか」を説明する材料になります。警察に持ち込むときも、弁護士に渡すときも、ここで撮った画面が土台になります。

記録の残し方で差がつくところ

画面を撮るときは、投稿そのものだけでなく、時刻の表示と自分のアカウント名が一緒に写るように撮ります。投稿単体の画像だけが残っていると、それがいつのものか、どのアカウントのものかを後から立証できません。パソコンから見られる状態であれば、ブラウザの印刷機能でページ全体をPDFとして保存しておくと、URLと保存日時が一緒に記録されます。

サービスから届いたメールは、転送したり本文をコピーしたりせず、受信箱に残したままにしてください。メールのヘッダ情報には送信元のサーバや経路が記録されており、転送すると書き換わってしまいます。弁護士に渡すときは、そのメールを添付ファイルの形で出していただくのが確実です。

なりすまし投稿が何罪にあたるかという整理は、なりすましは何罪?成立する犯罪・罰則と被害時の対処法でも扱っています。本記事は、その前段にある「取り返す」段階と、後段にある「責任を追う」段階を結ぶ位置づけです。

乗っ取りの入口はどこだったのか

取り返す作業と並行して、入口を押さえておく必要があります。入口が閉まっていないと、復旧した翌日にまた同じことが起こります。

もっとも多いのは、本物に似せたログイン画面にIDとパスワードを打ち込んでしまう形です。宅配便の不在通知、カード会社の利用確認、SNSからの「アカウントに異常な動きがありました」という通知を装ったメッセージが届き、リンクを開くと見慣れた配色の入力画面が出てくる。打ち込んだ情報はそのまま相手の手元に渡ります。

次に多いのが、別のサービスで漏れたIDとパスワードの組み合わせを、そのまま他のサービスで試される形です。同じパスワードを複数のサービスで使い回していると、どこか一社から流出した時点で、使い回した先の全部が開く鍵を渡したことになります。この経路では、被害者側に何の心当たりもないまま乗っ取りが起きます。

そのほか、公衆無線LANでの通信の傍受、端末に入り込んだ不正アプリによる入力情報の抜き取り、身近な人物が端末を直接操作する形もあります。最後の類型は、警察の受理も、その後の責任追及も、他の類型とは進み方が変わります。相手が特定できているぶん話は早いのですが、家族や交際相手が関与していると、刑事の届出と並行して別の法的問題を抱えることになります。

心当たりがないときの手がかり

多くのサービスには、ログイン履歴を日時と端末種別、おおよその地域とともに表示する画面があります。復旧できたら、まずここを開いてください。自分が触っていない時刻の記録、使っていない端末、関わりのない地域からのアクセスが並んでいれば、それが入口と時期を推定する材料になります。

この履歴は、サービス側の運用で一定期間を過ぎると消えます。見られる状態になった時点で、消えてしまう前に画面を保存しておくことをおすすめします。あとから弁護士が開示請求に進むとき、この履歴が「いつの通信を特定してほしいのか」を絞り込む出発点になります。

取り戻すまでの手順

サービス側の復旧窓口を使う

主要なSNSやメッセージアプリには、ログインできなくなった利用者向けの申請窓口が用意されています。本人確認の方法はサービスによって異なり、登録していた電話番号へのコード送信、過去に使っていたパスワードの申告、本人の顔写真の提出、身分証の画像の提出などが求められます。

ここでつまずきやすいのは、申請フォームに入力する連絡先です。相手に書き換えられてしまった登録メールアドレスではなく、自分がいま確実に受け取れる別のメールアドレスを入れてください。そして、申請は一度出したら返事を待ちます。同じ内容を何度も送ると、別件として処理が分散し、かえって時間がかかることがあります。

申請から復旧までの期間は、サービスによって当日から数週間までと幅が出ます。待っている間にできることとして、周囲への注意喚起があります。自分のアカウントから不審なメッセージが出ている可能性を、別の連絡手段で知らせておく。これは後述する二次被害を抑える意味でも効いてきます。

二段階認証とパスワードを立て直す

戻ってきたら、まず二段階認証を入れます。SMSで受け取る方式よりも、認証アプリで6桁の数字を生成する方式のほうが、電話番号を乗り換えられる形の攻撃に強くなります。あわせて、再設定用のバックアップコードを発行して、端末とは別の場所に紙で保管しておくと、次に何かあったときの立て直しが早くなります。

パスワードについては、他のサービスと同じものを使わない、という一点が効きます。覚えられないという問題は、パスワード管理ソフトを使うか、ブラウザや端末に備わっている管理機能を使えば解決します。なお、不正アクセス禁止法8条は、アクセス制御機能を付けた側に、識別符号の適正な管理と機能の有効性の検証を努力義務として課しています。利用者の自己防衛だけで完結する話ではない、という前提は条文にも表れています。

連携アプリと「残っている足場」を外す

見落とされやすいのが、外部アプリとの連携です。乗っ取った側が、自分の管理する外部アプリにアカウントの操作権限を与えていると、パスワードを変えても投稿を続けられる状態が残ります。設定画面の連携アプリ一覧を開き、心当たりのないものを全部外してください。

メールアカウントが乗っ取られていた場合は、転送設定と自動返信設定も見ます。受信したメールを密かに相手へ転送する設定を仕込まれていると、こちらが復旧したつもりでも、届くメールは読まれ続けます。ここは本人でないと気づきにくい箇所です。

乗っ取りは何の罪になるのか

不正アクセス禁止法が禁じていること

他人のIDとパスワードを使ってログインする行為は、不正アクセス行為として禁じられています。条文の構造を見ておきましょう。

同法2条4項は、不正アクセス行為を三つの類型で定義しています。1号は、アクセス制御機能を持つコンピュータに、他人の識別符号を入力して、制限されている利用ができる状態にさせる行為です。IDとパスワードを使ったログインがこれにあたります。2号と3号は、識別符号ではない情報や指令を入力して制限を免れる行為で、プログラムの不備を突く形がここに入ります。

そのうえで3条が「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と定め、11条が3条違反に3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。条文の原文は不正アクセス行為の禁止等に関する法律(e-Gov法令検索)で確認できます。

注意していただきたいのは、ログインしただけで成立する点です。中を見ただけ、何も投稿していない、すぐ出た、といった事情は、罪が成立するかどうかの話ではなく、量刑や処分の判断に回る事情です。「軽い気持ちで見ただけ」という説明は、成立を否定する理由になりません。

IDを取る、配る、預かる、求める

同法は、ログインそのものの前後にある行為も別に禁じています。

まず4条が、不正アクセスに使う目的で他人の識別符号を取得する行為を禁止します。不正に取得された識別符号を、不正アクセスに使う目的で保管する行為は6条の対象です。そして5条は、正当な理由がある場合を除いて、他人の識別符号を本人とアクセス管理者以外に提供してはならないと定めています。

7条が扱うのは、いわゆるフィッシングです。アクセス管理者になりすまして、あるいはアクセス管理者だと誤認させて、利用者に識別符号の入力を求める情報を、ウェブサイトに置いたり、電子メールで送ったりする行為が禁じられています。偽のログイン画面を公開する行為も、偽の通知メールを送る行為も、ここに入ります。

罰則の構造は一様ではありません。4条、6条、7条の違反には、12条が1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。5条の違反は、相手方に不正アクセスに使う目的があることを知って提供した場合は同じ12条ですが、それを知らずに提供した場合は13条で30万円以下の罰金となります。乗っ取られた側から見ると、入口がフィッシングだった場合、ログイン行為とは別に、偽サイトを作った行為そのものを罰条に乗せられる、ということになります。

乗っ取った先で起きたことに付く罪

乗っ取りは、それ自体が目的であることは少なく、入ったあとで何かをするための手段です。その「何か」に応じて、刑法上の罪が重なります。

本人の名前で虚偽の内容を投稿し、第三者の名誉を傷つけたのであれば、名誉毀損罪(刑法230条1項・3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)や侮辱罪(同231条・1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)が問題になります。この二つは親告罪で、告訴がなければ公訴を提起できません(同232条1項)。誰が告訴権者なのかを整理しないまま届出だけ出しても、先に進みません。

そして、告訴には期間の制限があります。刑事訴訟法235条本文は、親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月を経過するとできないと定めています。乗っ取り被害では、加害者が誰かを突き止めるまでに時間がかかるため、開示手続で相手が判明した日が起算点になる場面が多くなります。ただ、身近な人物の関与を早い段階で把握していた事案では、この6か月が先に進んでしまいます。心当たりがある場合は、日付を押さえておいてください。

アカウントに紐づいた決済手段を使われ、電子マネーの残高を移されたり、ポイントを現金化されたりしていれば、電子計算機使用詐欺罪(同246条の2・10年以下の拘禁刑)の射程に入ります。人の事務処理を誤らせる目的で、本人の名義で権利や義務、事実証明に関する記録を作られた形であれば、私電磁的記録不正作出罪(同161条の2第1項・5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)と、その記録を使った供用(同条3項)が重なります。

本人の名前で第三者を脅す内容を送っていれば脅迫罪(同222条1項・2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)、金銭を要求していれば恐喝の問題になります。こうした重なりを整理したうえで届出に行くかどうかで、警察窓口での受け止め方は変わります。

条文の建前では、これらの罪はそれぞれ独立して成立します。もっとも警察の運用では、被害額や拡散の程度が小さい事案は、不正アクセス禁止法違反の一点で処理され、周辺の罪は捜査の対象から事実上落ちることがあります。どの罪を前面に出して申告するかは、戦術というよりも、捜査する側が動きやすい材料をどう揃えるかという問題です。

被害届と刑事告訴|警察に持ち込むときの準備

被害届は、被害に遭った事実を警察に申告する書面です。これに対して告訴は、犯人の処罰を求める意思表示で、名誉毀損や侮辱のように告訴がないと起訴できない罪では、この告訴が手続上の要件になります。似て見えますが、役割が違います。

どちらにしても、窓口での説明は、時系列に沿って短くまとめたものがあると通りやすくなります。ログインできなくなった日時と、それをどの画面で知ったか。自分の名前で出た投稿の内容。登録情報のどこが書き換えられていたか。サービス側への申請日と回答日も入れておきます。これを一枚にまとめ、裏付けの画面を順に並べます。

相談先は、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口です。警察庁のサイバー警察局のページから、各窓口の案内にたどれます。堺市内の方であれば、お住まいの地域を管轄する警察署の窓口か、大阪府警のサイバー犯罪相談窓口が入口になります。

条文の建前では、被害届が出されれば警察は捜査を開始します。現場の運用では、被害額が小さく、加害者の手がかりがなく、既に復旧しているという三つが揃った事案は、受理はされても捜査が進まないことがあります。だからといって出さない理由にはなりません。届出の控えは、後述する民事の請求や、勤務先や取引先への説明で「公的に申告した事実」を示す材料になります。

【弁護士からひとこと】乗っ取り被害のご相談は、取り返す段階と責任を追う段階が同時に走るため、やることが多く見えます。順番さえ決まれば一つずつ片付く作業です。初回のご相談(30分5,500円・税込)では、まず今日やるべきことと来週でよいことを切り分けます。お電話は072-248-4848、お問い合わせフォームからもお受けしています。

二次被害を止める

乗っ取り被害で、あとから重くなるのはこちらです。自分のアカウントから友人や取引先へ不審なリンクが送られ、それを開いた相手が被害に遭う。あるいは、自分の名前で出された投稿が拡散し、消えたあとも引用やまとめ記事の形で残る。

連絡がつく相手には、別の手段で早めに知らせます。ここで「自分のアカウントが第三者に操作されていた期間」を明示しておくと、相手側が自分に届いたメッセージを判断しやすくなります。期間を特定するために、先に挙げたログイン履歴の保存が効いてきます。

投稿が残っている場合は、削除を求める作業が別に必要になります。投稿したのは自分ではないのに、表示上は自分の発信として残る。この状態は、名誉やプライバシーの侵害として削除を求める根拠になり得ます。削除請求の考え方は、ネットで個人情報を晒されたら?削除・開示請求・警察対応と、改正個人情報保護法|削除請求が増える理由と対応策で扱っています。

勤務先や取引先に影響が出そうな場面では、説明の順番も考えどころです。先に経緯を伝えておけば、第三者から「あの投稿は何か」と問われたときに、組織として同じ説明ができます。逆に黙っていると、後から出てきた事実のほうが重く受け取られます。

加害者を特定して賠償を求めるとき

発信者情報開示命令という手続

誰がやったのかを突き止める道として、発信者情報開示の手続があります。根拠となる法律は、令和6年の改正で名称が変わり、現在は特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律という名前です。通称として情報流通プラットフォーム対処法と呼ばれています。改正前の通称であるプロバイダ責任制限法で解説している記事も多いので、法令名の違いで混乱しないようにしてください。

同法は、5条に発信者情報の開示請求、8条に発信者情報開示命令、15条に提供命令、16条に消去禁止命令という条文を置いています。開示命令は、通常の訴訟よりも簡易な手続として設けられたものです。提供命令は、投稿が通ったサイト運営者から、その先の通信事業者に関する情報を得て、二段階の請求を一つの手続の中でつなげるために使います。消去禁止命令は、争っているあいだにログが保存期間の経過で消えてしまうことを防ぐためのものです。各条文の詳細は、法令名を「情報流通プラットフォーム対処法」として検索すると原文にあたれます。

手続の流れと費用感は、発信者情報開示請求を自分でする方法|流れ・費用と弁護士に頼む基準と、ネットのなりすまし被害は迅速な「開示請求」が必要!手続きの流れや注意点で詳しく扱っています。

ここで最も効いてくるのが時間です。通信記録の保存期間は事業者によりますが、短いものでは3か月程度で消えます。乗っ取りに気づいてから数か月放置した事案では、技術的にたどれなくなっていることが珍しくありません。急ぐ理由は、気持ちの問題ではなく、記録が消えるという事実のほうにあります。

損害賠償として何を請求できるか

加害者が特定できれば、民法709条に基づく損害賠償を請求できます。乗っ取りの事案で金額を組み立てる要素としては、次のようなものがあります。

決済手段を使われて直接失った金額と、アカウントを取り戻すために要した費用が土台になります。なりすまし投稿によって名誉を傷つけられたのであれば慰謝料が加わり、事業用のアカウントなら発信が止まっていた期間の損害も算定の対象です。加害者を特定するために要した弁護士費用の一部も、請求に含められます。

請求できる期間には制限があります。民法724条1号は、損害および加害者を知った時から3年で時効にかかると定め、同2号は不法行為の時から20年という上限を置いています。加害者が分からないあいだは1号の3年は進まないという構造ですが、20年の上限は進みます。

名誉毀損の慰謝料の水準は、拡散の範囲、内容の悪質さ、本人の社会的地位、謝罪や削除の有無などで大きく動きます。金額の見込みは事案ごとの幅が大きく、一般的な相場として申し上げられるものではありません。そのうえ、加害者を特定するための手続費用が別に乗ってきます。この二つを並べてご説明したうえで、進めるかどうかはご本人に決めていただく、という形をとっています。

正直に申し上げると、費用が回収額を上回る見込みの事案はあります。加害者が資力に乏しい場合、判決を取っても現実に取れないこともあります。それでも進める意味があるのは、相手が誰かを確定させること自体に価値がある場面、たとえば身近な人物の関与が疑われる場面や、同じ相手から繰り返されている場面です。ご相談の段階で、この見極めをご一緒に行います。

会社や団体のアカウントが乗っ取られたとき

個人の被害と、組織の被害は、やるべきことの重心が違います。組織の場合、復旧と並行して、対外的な説明と再発防止の説明が求められます。

まず、乗っ取られたアカウントから顧客や取引先に不審なメッセージが出た可能性があるなら、その事実と期間を公表するかどうかを早い段階で判断します。公表しない選択をしたのに後から発覚すると、隠したと受け取られます。公表する場合は、分かっている範囲と分かっていない範囲を切り分けて書くほうが、後から訂正する事態を避けられます。

アカウントに顧客の個人データが紐づいていた場合は、個人情報保護法上の対応が別に乗ってきます。漏えいのおそれがある事態として、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要になる場面があり、判断には漏えいした情報の性質と件数が関わります。この見極めは、公表文の作成よりも先に行うべき作業です。

再発防止の面では、不正アクセス禁止法8条が、アクセス制御機能を付けたアクセス管理者に対して、識別符号の適正な管理と、機能の有効性の継続的な検証、必要な措置を講ずることを努力義務として定めています。罰則の付いた義務ではありませんが、取引先から管理体制の説明を求められたときに、この条文を軸に説明を組み立てると筋が通ります。

当事務所では、堺市内の企業から、従業員の退職時のアカウント権限の回収や、SNS運用の担当者が交代するときの引継ぎ手順について、顧問の枠内でご相談をお受けすることがあります。誰がどのアカウントの管理者なのかを一覧にしておくだけでも、有事の初動は速くなります。

自分が疑われてしまったとき

乗っ取りの事案には、裏側があります。自分のアカウントから出た投稿について、第三者から責任を問われる立場に立つ場合です。「あなたの名前で誹謗中傷が投稿された」と内容証明が届く。開示請求の手続で自分の契約者情報が開示され、相手方から請求を受ける。

この場面で、乗っ取られていたという説明が通るかどうかは、記録の有無で決まります。ログイン履歴、サービス側への復旧申請の記録、警察への届出の控え。これらが揃っていれば、自分が発信者でないことを積極的に示せます。逆に、何も残していないまま「自分ではない」と述べても、相手方や裁判所を説得する材料がありません。

ここでも、初動で記録を取っておくことが効いてきます。加害者側として請求を受けた場合の対応は、ネット誹謗中傷の加害者になってしまったら|発信者情報開示・損害賠償を最小限に抑える早期示談のすすめで扱っています。身に覚えがないという主張をする場合も、放置せず、期限内に反論を出すことが前提になります。

名誉毀損や開示請求の基準そのものについては、名誉棄損や誹謗中傷とは?意味や開示請求ができる基準もあわせてご覧ください。

当事務所でよくお引き受けするご相談事例

ここから挙げる四件は、これまでお引き受けした事案のうち、よく似た訴えに繰り返し現れる要素を抜き出して組み立てたものです。関係者が特定されないよう内容は変えてあり、同様の経過をたどれば同じ結論に至ると保証する趣旨のものではありません。

最も多いのは、フィッシングから始まる個人のSNS乗っ取りです。40代の会社員の方から、宅配便の不在通知を装ったメッセージのリンクからログイン情報を入力してしまい、翌日にアカウントを乗っ取られたとのご相談をいただきました。友人へのダイレクトメッセージで同じ偽サイトのリンクが配られており、2名が同じ被害に遭っていました。相手方は不明。ご依頼後、まずサービス側の復旧申請を整理し、ログイン履歴の保存とスクリーンショットの体系化を行いました。警察には不正アクセス禁止法違反での被害届を提出。並行して、偽サイトのドメインについて削除要請を行い、2週間でアカウントは復旧しました。加害者の特定は、投稿ではなくログインだけだったため通信記録の追跡が難しく、費用との釣り合いを検討した結果、ご本人の判断で見送っています。

決済が絡むと、組み立てが変わります。30代の自営業の方の事案では、使い回していたパスワードから、フリマアプリと電子マネーのアカウントが同時に開けられ、残高約18万円が別のアカウントへ移されていました。事業者側は当初「本人によるログイン履歴がある」として補償に応じない姿勢でした。当事務所からは、ログインに使われた端末情報と地域が過去の履歴と一致しないことを整理して書面で指摘し、あわせて電子計算機使用詐欺罪での被害届の受理を得ました。最終的に、事業者側の調査で不正利用と認定され、残高相当額の補填を受けています。

身近な人物が関与していると、刑事と民事が分かれます。50代の方から、別居中の配偶者に自分のメールアカウントを見られていた形跡があるとのご相談をいただきました。転送設定が仕込まれており、受信メールが継続して読まれていた事案です。相手方は当初「共有していた」と主張しました。設定が変更された日時と、その時点で既に別居していた事実を突き合わせ、承諾がなかったことを整理。刑事での届出は本人の意向で行わず、民事の交渉で解決金の支払いと設定の解除、以後の接触の制限を合意しました。離婚条件の交渉と重なる事案だったため、担当を分けて進めています。

法人の事案では、対外説明が中心になります。堺市内の小売業の会社から、店舗の公式SNSアカウントが乗っ取られ、運営に関わりのない広告投稿が数時間にわたり出されていたとのご相談をいただきました。受信していたダイレクトメッセージの範囲を確認したうえで、顧客の個人データが外部に流出した形跡はないと整理しています。当日中に復旧したものの、フォロワーからの問い合わせが続いていたため、公表文の案を作成し、分かっている範囲と調査中の範囲を分けて記載しました。あわせて、担当者3名で共有していたログイン情報を個別アカウントと権限管理に切り替える手順をご提案しています。

4件を並べて見えてくるのは、初動の記録の質が、その後に取れる選択肢の幅をそのまま決めているという点です。ログイン履歴とスクリーンショットが揃っていた事案では、事業者との交渉も警察への届出も進みが早く、何も残っていなかった事案では、主張自体を裏付けられませんでした。ご相談の時点でまだ記録が取れる状態であれば、最初にそこをお願いしています。

費用と進め方

当事務所にご依頼いただく場合の進め方は、おおむね次のようになります。

初回のご相談で、復旧の段階がどこまで進んでいるか、記録が何まで残っているか、相手方の手がかりがあるかを確認します。そのうえで、今日やるべきこと、こちらで引き受けること、ご本人にお願いすることを切り分けます。復旧だけで足りる事案と、責任追及まで進む事案では、費用の組み立ても変わります。

発信者情報開示の手続に進む場合は、サイト運営者に対する請求と、その先の通信事業者に対する請求で、段階が分かれます。各段階で裁判所に納める費用と、こちらの報酬が発生します。最終的に加害者から回収できる見込み額と、手続に要する費用の見通しを、最初の段階でお示しします。

初回のご相談は有料です。30分5,500円(税込)で、その時間内に、進め方の全体像と費用の見通しまでご説明します。詳しい料金は費用についてのページをご覧ください。インターネット関係のご相談の全体像は、インターネットトラブルのご相談のページにまとめています。

よくある質問(FAQ)

アカウントを乗っ取られただけで、警察は動いてくれますか

受理はされます。不正アクセス禁止法3条違反として被害届を出すことができ、同法11条に罰則が定められているためです。ただし、被害額が小さく、加害者の手がかりがなく、既に復旧しているという事情が揃っている事案では、受理されても捜査が進まないことがあります。届出の控えは、民事の請求や、勤務先への説明で使える材料になりますので、出しておく意味はあります。

パスワードを変えたのに、またログインできなくなりました

登録メールアドレスか電話番号が書き換えられたままになっている可能性が高いです。この状態では、パスワードを変えた直後に相手側が再設定の手続を行えるため、何度変えても取り返せません。設定画面で登録情報を確認し、書き換えられていればそこを先に戻してください。すでにログインできない状態であれば、自力での操作をやめて、サービス側の復旧窓口に入ってください。あわせて、二段階認証の登録先と連携している外部アプリの一覧も確認が必要です。

偽のログイン画面を作った人も罪になりますか

なります。不正アクセス禁止法7条が、アクセス管理者になりすまして、またはアクセス管理者だと誤認させて、利用者に識別符号の入力を求める情報をウェブサイトに置く行為や、電子メールで送る行為を禁じています。同法12条により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。ログイン行為そのものとは別に罰条が立つ構造です。

乗っ取った相手を特定して、慰謝料を請求できますか

発信者情報開示命令という裁判手続を使って契約者を特定し、民法709条に基づいて請求する道があります。もっとも、通信記録の保存期間は事業者によって異なり、短いものでは3か月程度で消えます。気づいてから時間が経っている事案では、技術的にたどれなくなっていることがあります。また、慰謝料の水準と手続費用の釣り合いが問題になる事案も少なくありません。ご相談の段階で、回収の見込みと費用の見通しをあわせてご説明します。

自分の名前で出た投稿について、第三者から責任を問われています

乗っ取られていた事実を示す材料を揃えることが先になります。ログイン履歴、サービス側への復旧申請の記録、警察への届出の控えが揃っていれば、自分が発信者でないことを積極的に主張できます。何も残っていない状態で「自分ではない」と述べても、相手方を説得する材料がありません。請求を受けている場合は、期限内に反論を出す必要があるため、放置したまま時間を置くことは避けてください。

堺市で弁護士をお探しなら田渕総合法律事務所へご相談ください

アカウントの乗っ取りは、取り返す作業と、責任を追う作業が同時に走ります。先に登録情報の書き換えを戻し、ログイン履歴とスクリーンショットを押さえる。そのうえで、不正アクセス禁止法と刑法のどの罰条に乗るかを整理して警察に持ち込み、加害者の特定に進むかどうかを費用との釣り合いで判断する。この順番さえ決まれば、やることは一つずつ片付きます。

当事務所は、ネットトラブルの分野で、削除請求、発信者情報開示、損害賠償請求のほか、請求を受けた側の対応までお引き受けしています。乗っ取り被害では、サービス事業者との交渉、警察への届出書面の作成、開示手続の申立てを一つの流れで進められるため、ご本人が窓口ごとに説明を繰り返す負担を減らせます。法人のアカウントについては、公表文の作成と権限管理の見直しまで、顧問の枠内でご相談をお受けしています。

記録が残っているうちにご相談いただくほど、取れる選択肢は多くなります。お電話は072-248-4848、お問い合わせフォームは24時間お受けしています。事務所は堺東駅から徒歩5分の場所にあります。

弁護士監修:田渕総合法律事務所

この記事の監修者

田渕 大介弁護士 (大阪弁護士会所属)

TABUCHI DAISUKE

◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)

<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター

<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)

<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)

<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)

◆ ホームページ
━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ココナラ法律相談】
https://legal.coconala.com/lawyers/4738