【堺 弁護士が解説】問題社員への対応|注意指導から退職勧奨までの手順 |堺市の弁護士【田渕総合法律事務所】堺東駅5分

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【堺 弁護士が解説】問題社員への対応|注意指導から退職勧奨までの手順

朝礼が終わるころに出社してくる。同じミスを繰り返すのに、指摘すると「それはパワハラではないですか」と返してくる。周囲の社員から不満の声が上がりはじめ、気がつけば、辞めてほしくなかった中堅社員のほうが先に退職届を出していた。

中小企業の経営者からお受けするご相談には、この構図がよく現れます。困っているのは事実で、周囲への悪影響も現実に生じている。それでも、感情のままに「明日から来なくていい」と告げてしまうと、数か月後に「不当解雇である」という通知書が届き、会社が数百万円の支払いを迫られる立場に回ります。

会社の側にも取れる手段はあります。ただし順序があり、その順序を踏んだ記録が残っているかどうかで結論が変わります。

この記事のポイント

  • 労働契約法16条により、解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠けば無効になる。問題行動があること自体は、直ちに解雇を正当化しない。
  • 会社が踏むべき順序は、書面による注意指導、就業規則に基づく懲戒処分、そのうえでの退職勧奨という三段階が基本になる。
  • 退職勧奨そのものは違法ではないが、退職しない意思を示した相手に長時間・長期間繰り返すと不法行為責任が生じうる(最判昭和55年7月10日)。
  • 分かれ目は証拠の残し方にある。日時、事実、指導内容、本人の反応を書面化していれば、多くの紛争は入口で防げる。当事務所の費用の目安は費用のご案内、個別の事情はお問い合わせからご確認いただけます。

「辞めさせたい」と考える前に確認したいこと

ご相談で最初に伺うのは、その社員の何が問題なのかという点です。この整理を飛ばすと、後の手続がすべて空回りします。

問題行動は、性質によって取るべき対応が変わります。遅刻や欠勤、業務命令の無視といった規律違反であれば、就業規則違反として懲戒の対象になりえます。他方、本人なりに真面目に取り組んでいるものの成果が上がらないという能力不足の場合、懲戒はなじみません。制裁を科す場面ではなく、教育と配置の問題だからです。ここを取り違えて能力不足の社員に懲戒処分を重ねると、処分自体が無効と判断されるうえ、その後の解雇の有効性まで疑われます。

もう一点、確認していただきたいのが就業規則の有無と内容です。常時10人以上の労働者を使用する事業場には作成と届出の義務がありますが、それ以前の問題として、懲戒処分は就業規則に定めがなければ行えないと解されています。普通解雇の根拠は民法627条・628条に求められるものの、労働基準法89条3号により就業規則にも根拠が必要とされます(浅井隆編著『解雇・退職勧奨・雇止めの法律相談Ⅰ』青林書院、2025年)。

理論上は、就業規則の懲戒事由に該当すれば処分が可能ということになります。実務では、いざ処分の場面になって就業規則を開いてみると、懲戒事由が抽象的な一文しか置かれておらず、当該行為を読み込めないという事態がしばしば起こります。この場合、先に就業規則を整備し、整備後の行為から適用していくほかありません。過去の行為に新しい規定を遡って適用することはできないからです。

会社が取れる対応の全体像

労務の実務書では、会社が用いる手段として、書面による注意指導、懲戒処分、退職勧奨の三つを軸に整理するのが一般的です(上野俊夫『職場の問題社員に困ったら読む本』自由国民社、2025年)。この順序には意味があります。

裁判所は、解雇や重い処分の有効性を判断するとき、会社がそれまでにどれだけ改善の機会を与えたかを見ます。いきなり最も重い手段を選んだ会社と、注意指導を重ね、軽い処分を経てもなお改善しなかったことを記録で示せる会社とでは、同じ問題行動であっても結論が変わります。

段階を踏むことは、遠回りに見えて実は近道です。譴責や戒告といった軽い処分から始め、改善が見られなければ次の段階に進むという形でステップを重ねる進め方が、実務上は定着しています(森島大吾監修『図解 労務管理の基本と実務がわかる事典』三修社、2021年)。

第一段階|注意指導を口頭で終わらせない

もっとも多くの会社が取りこぼしているのが、この段階です。上司は繰り返し注意しているのに、記録が何も残っていない。紛争になったとき、会社側は「何度も注意した」と主張し、労働者側は「一度も具体的な指導を受けていない」と反論します。書面がなければ、裁判所は後者に傾きやすくなります。

注意指導書に書く要素

注意指導を書面にするといっても、長文の始末書を求める必要はありません。次の要素が入っていれば足ります。

  • いつ、どこで、何があったかという事実(「先月しばしば」ではなく「9月1日、9月4日、9月8日の3日間、始業時刻の9時を各20分以上過ぎて出社した」と特定する)
  • その行為が就業規則のどの条項に触れるか
  • 会社が求める改善の内容と期限(「態度を改めること」ではなく「今後3か月間、始業時刻までに出社すること」と行動で書く)
  • 改善されない場合には懲戒処分を検討する旨
  • 本人の受領署名または、受領を拒んだ場合はその事実を記録した担当者の記名

本人が署名を拒むことはよくあります。その場合でも、拒否した事実と日時を記録し、同じ書面を配達証明付き郵便で自宅へ送っておけば、交付の事実は立証できます。

パワハラと言われないための線引き

注意指導を強めると、今度は本人からパワーハラスメントの主張が出てくることがあります。この線引きで手が止まる経営者は少なくありません。

判断の軸は、業務上の必要性と、手段の相当性です。業務に必要な範囲で、事実に基づいて、改善のために行う指導であれば、相手が不快に感じたとしても違法にはなりません。危ないのは、人格や属性を否定する言葉を使うこと、他の社員の前で見せしめのように叱責すること、そして業務上の必要がない課題を科すことです。

最後の点は、退職勧奨をめぐる裁判例でも違法性を基礎づける事情として挙げられています。下関商業高校事件の第一審は、業務上の必要性のないレポートや研究物の提出命令がなされたことを、違法性を基礎づける事情として指摘しました(前掲『解雇・退職勧奨・雇止めの法律相談Ⅱ』)。追い出すための仕事を与えるという発想は、結果として会社の立場を弱くします。

指導の記録は、パワーハラスメントの主張が出たときにも会社を守ります。何を、なぜ、どのように伝えたかが書面で残っていれば、業務上の必要性と相当性を説明できるからです。指導の場に第三者を同席させ、記録者を置く運用も有効です。ハラスメントの相談を受けたときの社内対応については、パワハラの相談先と解決方法でも触れています。

第二段階|懲戒処分は就業規則の定めが出発点

注意指導を重ねても改善がない場合、懲戒処分の検討に移ります。

懲戒処分の種類と重さの順序

一般的な就業規則では、軽いものから、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇という順序で定められています。減給には労働基準法91条の制限があり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはなりません。

処分を選ぶときは、同じ会社の過去の同種事案とのバランスも見られます。以前は口頭注意で済ませた行為について、今回だけ出勤停止にすると、処分の公平性を欠くと評価されかねません。

懲戒が無効になりやすい典型パターン

労働契約法15条は、懲戒が労働者の行為の性質や態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になると定めています。

実務で無効と判断されやすいのは、次のような場面です。

就業規則に該当する懲戒事由がないまま処分したケース。同じ行為について既に処分したのに、後から重ねて処分したケース。本人に弁明の機会を与えなかったケース。懲戒処分については、刑事法に類似した原則、すなわち罪刑法定主義や二重処罰の禁止に相当する考え方が妥当すると解されており(高井・岡芹法律事務所編著『判例解説 解雇・懲戒の勝敗分析』日本加除出版、2020年)、手続の適正が軽視できません。

条文の建前では、懲戒事由に該当し相当性があれば処分は有効ということになります。裁判所の運用では、事実調査の過程と弁明の機会の付与という手続面が、実体面と並んで丁寧に検討されます。調査の段階で本人の言い分を聞き、その内容を記録に残しておくことが、処分の安定性を高めます。

【弁護士からひとこと】問題社員への対応でご相談をいただくのは、多くの場合、既に解雇を通告した後です。その段階からでも打てる手はありますが、選択肢は確実に狭まります。注意指導書の文面をどう書くか迷った時点でご相談いただければ、費用も時間も大きく変わります。お電話は072-248-4848、お問い合わせフォームからもご予約いただけます(初回のご相談は30分5,500円です)。

第三段階|退職勧奨はどこまで許されるか

退職勧奨は、会社が労働者に退職を勧め、合意による労働契約の終了を目指す働きかけです。解雇と違って一方的な意思表示ではないため、本人が応じなければ雇用関係は続きます。

違法とされた事案から見る限界

退職勧奨を行うこと自体は違法ではありません。問題は方法と程度です。

最高裁は、労働者が退職しない旨を表明しているにもかかわらず、長時間・長期間にわたって勧奨を繰り返した事案について、不法行為責任を肯定しました(最判昭和55年7月10日、下関商業高校事件、労判345号20頁)。ここから読み取れる限界は、はっきりしています。本人が明確に断った後も面談を重ねること、1回あたりの面談を長時間に及ばせること、多人数で取り囲むこと、これらはいずれも危険な兆候です。

面談は、1回30分から1時間程度、担当者は2名までとし、回数を重ねる場合も間隔を空ける。この程度に自制しておくのが安全な運用です。本人が退職の意思がないと明言した場合、いったん打ち切り、指導と評価の局面に戻します。

現場では、断られたその日に「では次はいつ話しましょうか」と畳みかけてしまう例を見かけます。善意の説得のつもりでも、記録に残れば執拗な勧奨と評価される材料になります。

合意退職に至ったときの書面

退職の合意ができた場合、必ず書面を交わします。退職日、退職事由(合意解約であること)、退職金や解決金の額と支払期日、私物と貸与物の返還、秘密保持、そして清算条項を入れます。清算条項がないと、退職後に未払い残業代の請求が出てくることがあります。賃金請求権の消滅時効は当分の間3年とされており、過去分をさかのぼって請求される余地が残るためです。

離職票の離職理由をどう記載するかも、その場で確認しておきます。会社都合か自己都合かで失業給付の扱いが変わるため、後日の紛争になりやすい部分です。

解雇に踏み切る場合の整理

退職勧奨に応じない場合、最終的に解雇を検討することになります。ここでの判断は慎重を要します。

普通解雇と懲戒解雇の違い

普通解雇は、労働契約を将来に向けて解消する通常の解雇です。懲戒解雇は制裁として行うもので、退職金の不支給や減額を伴うことが多く、本人の再就職にも大きな影響を与えます。

実務では、懲戒解雇に相当する事由があっても、あえて普通解雇や諭旨解雇を選ぶ、あるいは退職勧奨を重ねて合意退職に導くという判断がしばしば取られます。紛争リスクを抑えるためです。懲戒解雇は有効性のハードルが最も高く、無効と判断されたときの影響も最も大きくなります。

解雇予告と予告手当

解雇するには、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。予告日数は、支払った平均賃金の日数分だけ短縮できます。

労働基準監督署長の除外認定を受ければ即時解雇が可能ですが、その要件である「労働者の責めに帰すべき事由」は厳格に解されています。労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮して総合的に判断し、30日前の予告をさせることが当該事由と比較して均衡を失するほど重大または悪質なものに限って認定すべきものとされています(石嵜信憲編著『懲戒処分の基本と実務』中央経済社、2019年)。通常の勤務不良では、まず認められません。

解雇予告の日数計算については、解雇予告は何日前?30日ルールと即日解雇の違法性・予告手当で詳しく整理しています。試用期間中の社員については扱いが一部異なるため、試用期間中の社員を能力不足で解雇したいもあわせてご覧ください。

解雇の前に検討できる手段

解雇と退職勧奨のあいだには、いくつかの選択肢があります。これらを検討した記録があること自体が、後に解雇の相当性を支える材料にもなります。

配置転換と職種の変更

能力不足が問題である場合、別の部署や職種であれば力を発揮できることがあります。就業規則に配置転換の定めがあり、職種を限定した合意がなければ、会社は業務命令として配置転換を命じられるのが原則です。

もっとも、転勤を伴う場合は、育児や介護の事情への配慮が求められます。労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与える場合、権利の濫用とされる余地があります。単身赴任が困難な家庭事情を把握していながら遠隔地への転勤を命じ、拒否を理由に解雇するという流れは、追い出し目的と評価されかねません。

降格と賃金の引下げ

役職を解く形の降格は、人事権の行使として比較的広く認められます。他方、職能資格そのものを引き下げて基本給を下げる場合は、就業規則の根拠と相当性がより厳格に問われます。

賃金の引下げは労働条件の不利益変更にあたるため、本人の同意を得るか、就業規則の変更による場合は変更の合理性が要ります。同意を得る場合も、口頭ではなく書面で、引下げ後の金額を明示して取得してください。後になって「言われるままに署名したが内容を理解していなかった」と争われる例があります。

私傷病が背景にある場合

勤務態度の問題に見えていたものが、体調不良や精神的な不調に起因していることがあります。この場合、懲戒や退職勧奨を進めると、安全配慮義務の観点から会社の責任が問われる方向に転じます。

産業医面談や主治医の意見書を経て、休職制度の適用を検討するのが順序です。就業規則に休職の定めがあれば、その期間と復職の要件を確認します。復職の可否をめぐる判断は難しく、主治医が復職可能とし、産業医が慎重な意見を述べるという食い違いも起こります。この局面では、医学的判断と法的判断を切り分け、記録を残しながら進める必要があります。

理論上は、休職期間が満了しても復職できなければ、就業規則の定めに従って退職または解雇の扱いになります。実務では、復職の可否判断を尽くさないまま期間満了で終了させると、後の紛争で会社側が不利な立場に置かれます。試し出勤や短時間勤務からの段階的復帰を検討した記録があるかどうかが、しばしば分かれ目となりました。

有期契約社員の場合

契約期間の定めがある社員については、期間途中の解雇は、やむを得ない事由がなければ認められません(労働契約法17条)。無期契約の解雇よりハードルが高いという点は、見落とされがちです。

期間満了による雇止めについても、反復更新の実態があり、雇用継続への合理的期待が認められる場合には、解雇と同様の規制が及びます。契約更新の手続を形骸化させず、更新のたびに面談し、書面を交わしておくことが、この場面での備えになります。

争いになったときに効く証拠の残し方

紛争になったとき、会社側が苦しくなるのは、主張を裏づける記録がない場合です。逆に、記録が揃っていれば、交渉段階で早期に解決できることが少なくありません。

残しておきたいのは、次のような資料です。

  • 注意指導書と、本人の受領記録または送付記録
  • 面談の記録(日時、場所、出席者、やり取りの要旨。録音がある場合はその保存)
  • 業務日報、勤怠記録、メールやチャットのログ
  • 顧客や取引先からの苦情の記録(受付日時と内容)
  • 他の社員から寄せられた申告(申告者の保護に配慮したうえで記録)
  • 人事評価の記録と、評価者からのフィードバックの内容

作成のタイミングも見られます。紛争になってからまとめて作成した書面は、証拠としての力が弱くなります。その都度作り、日付を入れておくことに意味があります。

不当解雇と主張された場合の解決金の水準については、不当解雇の解決金相場で類型ごとに整理しています。

周囲の社員を守るという視点

問題社員への対応を考えるとき、本人をどうするかに意識が向きがちです。実際にご相談を受けていて深刻だと感じるのは、周囲への影響のほうです。

同じ仕事量を分担しているのに一方だけが手を抜いている状態が続くと、まじめに働いている社員の不満が蓄積します。会社が何も対応していないように見えると、不満の矛先は会社に向きます。辞めてほしくない人材から先に去っていくのは、この構造によります。

対応を進めるにあたっては、周囲の社員への説明も考えておく必要があります。処分の内容や個別の事情を詳しく共有することは、本人の名誉やプライバシーの問題を生みます。他方、何も伝えないと放置していると受け取られます。実務では、個別の内容には触れず、会社として事実を把握し必要な対応を進めている旨だけを伝える、という形を取ることが多くあります。

ハラスメントの申告があった場合は、申告者の保護も必要です。申告したことを理由とする不利益な取扱いは許されませんし、調査の過程で申告者が特定されて職場に居づらくなるという事態も避けなければなりません。調査の方法と範囲を最初に設計しておくことが、ここでも効いてきます。

顧問契約という選択肢

問題社員への対応でご相談をいただくとき、多くは既に事態が進行しています。注意指導の記録がない、就業規則が実態に合っていない、解雇を通告してしまった。この段階からでも打てる手はありますが、選べる範囲は狭まります。

日常的に相談できる関係があると、この分野は結果が変わります。注意指導書を出す前に文面を確認する、面談の進め方を事前に打ち合わせる、就業規則の懲戒事由を実態に合わせて手直ししておく。いずれも短時間で済む相談ですが、紛争になってからの対応と比べると、費やす時間も費用も大きく違います。

会社の規模や相談の頻度に応じた形をご用意していますので、必要であればお問い合わせの際にお申し付けください。

労働審判になった場合の堺の実情

労働者側から労働審判を申し立てられた場合、手続の進行は非常に速く進みます。原則として3回以内の期日で審理を終えるとされており、第1回期日までに会社側の主張と証拠をほぼ出し切る必要があります。第1回が実質的な山場になります。

ここで、堺市内の会社にとって実務上重要な点があります。労働審判は大阪地方裁判所本庁の取扱いで、堺支部では取り扱われていません。堺市内の事業所で生じた紛争であっても、期日には大阪市内の裁判所へ出向くことになります。移動時間と、担当者が半日単位で拘束される負担を、あらかじめ見込んでおく必要があります。

申立書が届いてから第1回期日までの期間は限られています。答弁書の作成、証拠の収集、出席者の選定を並行して進めることになるため、通知を受け取った段階でご相談いただくのが安全です。

労働契約法の条文そのものは、e-Gov法令検索の労働契約法のページで確認できます。

当事務所でよくお引き受けするご相談事例

以下でご紹介するのは、これまでにお受けした複数のご相談から共通する要素を抜き出し、会社や個人が特定されない形にまとめた例です。事情が違えば結論も変わりますので、同じ結果をお約束するものではありません。

無断欠勤が続く社員への対応でご相談をいただくことがあります。堺市内の運送業の会社で、月に3日から5日の無断欠勤を繰り返す社員がおり、社長が電話で叱責したものの改善しなかったという状況でした。会社には就業規則があったものの、懲戒事由の記載が「会社の秩序を乱したとき」という一文のみでした。まず規定を具体化する改定を行い、改定後に生じた欠勤について注意指導書を交付、その後に譴責処分を経て、最終的に本人が退職を申し出るに至りました。着手から解決まで約5か月です。

営業成績が上がらない社員をめぐるご相談も少なくありません。中途採用時に前職の実績を評価して採用したものの、入社後2年間、目標の半分にも届かなかったという事案でした。会社は解雇を希望されましたが、教育や配置転換の記録がまったく残っていませんでした。そこで、達成すべき目標と支援内容を明示した改善計画を6か月間実施し、面談記録を毎月残す方針をお勧めしました。結果として本人の成績が改善し、解雇を回避しています。会社にとっても、採用コストをかけた人材を維持できたという意味がありました。

他の社員へのハラスメントが問題となった事案では、対応の速度が結論を左右しました。管理職による部下への言動について複数の申告があり、会社が事実調査を実施したところ、一部は事実と認められました。調査の過程で本人に弁明の機会を与え、その内容を記録に残したうえで出勤停止と降格の処分を行っています。処分後に本人から不服を申し立てられましたが、調査記録と弁明の機会の記録が揃っていたため、交渉段階で解決しました。

退職勧奨の進め方についてご相談を受けることもあります。既に3回の面談を重ね、いずれも1回2時間を超えていたという段階でのご相談でした。本人は退職を拒否しており、このまま続ければ違法な勧奨と評価される危険がありました。いったん勧奨を停止し、業務指導と評価の局面に戻したうえで、半年後に条件を提示して合意退職に至っています。急がば回れという判断が、結果として紛争を避けました。

体調不良が背景にあった事案では、途中で方針を切り替えました。遅刻と早退が増え、業務上のミスも重なったため懲戒を検討したいというご相談でしたが、経緯を伺ううちに、半年ほど前から睡眠障害の症状が出ていた可能性が浮かびました。懲戒の手続を止め、産業医面談を経て休職制度を適用しています。復職後は時短勤務から段階的に戻し、現在も在職中です。懲戒を先行させていれば、安全配慮義務違反を問われる側に会社が回っていた可能性がありました。

労働審判を申し立てられた後にご相談いただいた事案もあります。解雇を通告した3か月後に申立書が届き、第1回期日まで3週間という状況でした。会社には注意指導の記録がほとんど残っておらず、主張を裏づける資料が乏しい状態です。過去のメールや業務日報から使える資料を集めて答弁書を作成し、第1回期日での調停成立を目指す方針を取りました。結果として解決金を支払う内容で成立しています。記録が揃っていれば違う結論もありえた事案でした。

よくある質問(FAQ)

問題社員をすぐに解雇できますか

原則としてできません。労働契約法16条により、解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合は無効となります。問題行動があること自体は解雇を正当化せず、会社が改善の機会をどれだけ与えたかが問われます。注意指導と懲戒処分の記録を積み重ねたうえで判断するのが安全です。

注意指導は口頭でも構いませんか

日常の指導は口頭で差し支えありませんが、繰り返し改善が見られない段階では書面にしてください。紛争になったとき、口頭のみでは指導の事実を立証できません。日時、具体的事実、就業規則の該当条項、求める改善内容と期限を記載し、本人の受領署名を得ます。署名を拒まれた場合は、その事実を記録し、同じ書面を郵送しておきます。

退職勧奨を何回まで行えますか

回数そのものに法律上の上限はありません。ただし、本人が退職しない意思を表明した後に長時間・長期間にわたって勧奨を繰り返すと、不法行為責任が生じうるとした最高裁判例があります(最判昭和55年7月10日)。1回の面談は30分から1時間程度、担当者は2名までとし、明確に断られた場合はいったん打ち切る運用をお勧めします。

就業規則がない場合はどうなりますか

懲戒処分は就業規則に定めがなければ行えないと解されているため、まず作成が必要です。常時10人以上の労働者を使用する事業場には作成と労働基準監督署への届出の義務があります。なお、新しく定めた懲戒規定を過去の行為に遡って適用することはできません。整備した後に生じた行為から適用していくことになります。

会社側の相談でも対応してもらえますか

対応しています。当事務所では、労働者側と会社側の双方からご相談をお受けしています。就業規則の点検、注意指導書の文面の検討、面談への同席、労働審判や訴訟への対応まで、段階に応じてお手伝いできます。顧問契約をご利用いただくと、日常的な労務の判断についても随時ご相談いただけます。

堺市で弁護士をお探しなら田渕総合法律事務所へご相談ください

問題社員への対応は、手順と記録がすべてと言ってよい分野です。書面による注意指導、就業規則に基づく懲戒処分、そのうえでの退職勧奨という順序を踏み、各段階を記録に残しておけば、多くの紛争は入口で止まります。逆に、順序を飛ばした対応は、後から取り返すことが難しくなります。

当事務所は、堺東駅から徒歩5分の場所で、労働問題について会社側と労働者側の双方のご相談をお受けしてきました。会社側のご依頼では、就業規則の点検と改定、注意指導書や退職合意書の文面作成、面談への同席、労働審判や訴訟への対応まで、局面に応じて関与しています。双方の立場を扱っているからこそ、相手方が次にどう出るかを見通したうえで方針を立てられます。

いま対応に迷っている社員がいる、注意指導書をどう書けばよいか分からない、労働審判の申立書が届いた。どの段階であっても、早い時点でご相談いただくほど選択肢が多く残ります。お電話は072-248-4848、ご予約はお問い合わせフォームから承ります。費用の目安は費用のご案内をご覧ください(初回のご相談は30分5,500円です)。

弁護士監修:田渕総合法律事務所

この記事の監修者

田渕 大介弁護士 (大阪弁護士会所属)

TABUCHI DAISUKE

◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)

<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター

<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)

<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)

<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)

◆ ホームページ
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https://legal.coconala.com/lawyers/4738