【堺 弁護士が解説】交通事故の過失割合|「8対2」「7対3」の提示に納得できない方へ |堺市の弁護士【田渕総合法律事務所】堺東駅5分

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【堺 弁護士が解説】交通事故の過失割合|「8対2」「7対3」の提示に納得できない方へ

目次

はじめに|「保険会社の言う8対2」に、すぐ署名しないでください

国道26号を直進していて、わき道から飛び出してきた車と衝突した。大阪中央環状線で渋滞中、停止していたところに後続車から追突された。信号機のある交差点を右折しようとして、対向直進車と接触した。堺市内では、こうした交差点事故や幹線道路での衝突が日常的に発生しています。

事故から数日して、加害者側の任意保険会社から電話が入ります。「過失割合は、こちらが8、お客様が2でいかがでしょうか」「7対3で示談させていただきたく」。この一本の電話で、本来受け取れるはずだった賠償金が、数十万円から数百万円単位で削られてしまうことがあります。

過失割合は、交通事故の損害賠償において、慰謝料の金額と並んで「賠償額を最大に動かす二大争点」です。にもかかわらず、多くの被害者は、保険会社の担当者が口頭で告げる数字を「専門家が言うのだから正しいのだろう」と受け止めて、そのまま示談書に署名してしまいます。

堺東駅エリアの当事務所には、「保険会社から提示された過失割合がどうしても納得できない」「相手の方が悪いはずなのに、なぜ自分にも2割の過失があるのか」というご相談が、月に何件も寄せられます。実際に詳しくお話を伺うと、保険会社の提示割合が客観的な基準と乖離していたり、考慮されるべき修正要素が反映されていなかったりすることが、珍しくありません。

この記事では、堺東駅の弁護士が、過失割合がどのように決まるのか、保険会社の提示への向き合い方、自賠責保険の被害者請求を組み合わせて賠償額を積み増していく方法まで、堺市内の幹線道路で実際に起きている事故類型に即してお話しします。読み終わったときには、保険会社が口頭で告げる数字について、ご自身で判断材料を持てる状態になっているはずです。

過失割合が「1割」違うだけで、賠償額は数百万円変わる

過失割合の話に入る前に、まず「なぜ過失割合がここまで重要なのか」を、具体的な数字で確認しておきます。

たとえば、堺市内で重傷事故に遭い、半年間の通院後に後遺障害12級が認定されたケースを想定します。損害項目を弁護士基準で積み上げると、治療費・通院交通費・休業損害・通院慰謝料・後遺障害慰謝料(290万円)・後遺障害逸失利益(年収500万円・労働能力喪失率14%・10年で約500万円)を合計して、損害総額が概ね1,200万円になるとします。

ここに保険会社が提示する過失割合を当てはめてみます。

過失割合(被害者対加害者) 過失相殺後の受領額 10対0との差額
0対10 1,200万円
1対9 1,080万円 △120万円
2対8 960万円 △240万円
3対7 840万円 △360万円

被害者側の過失が1割増えるごとに、120万円が消えていきます。3対7なら360万円、4対6なら480万円が、何もせずに失われる計算です。重傷事故や高次脳機能障害などで損害総額が3,000万円・5,000万円となれば、1割の差は数百万円どころか1,000万円を超えてきます。

保険会社の担当者は、このことを熟知しています。だからこそ、最初の電話で「8対2でお願いします」と被害者の過失を1〜2割上乗せして提示してくることがあるわけです。被害者が「相手が完全に悪いと思っていたけれど、専門家がそう言うなら……」と妥協した瞬間、保険会社は最小限の交渉コストで支払いを数十万から数百万円抑えることができてしまいます。

ここで強調したいのは、過失割合は「交渉の余地が大きい数字」だということです。確定した法律で「この事故は8対2」と決まっているわけではありません。後述する基本割合と修正要素を踏まえ、証拠を揃え、法的に説得力のある主張を組み立てれば、提示割合を1割・2割と動かせるケースは少なくありません。

なお、損害項目そのものの金額(慰謝料や逸失利益)を弁護士基準で積み増す論点については、当事務所の別記事「交通事故の入院慰謝料はいくら?相場(目安)や増額のポイント」と「人身事故で保険会社に請求できる慰謝料は?増額する方法も紹介」で詳しく解説しています。

保険会社の過失割合はどう決まっているのか|判例タイムズ38号と赤い本

保険会社の担当者は、何を根拠に過失割合を提示してくるのでしょうか。

示談交渉から訴訟まで、保険会社・弁護士・裁判所がほぼ共通して参照しているのが、判例タイムズ社が発行する「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」、通称「別冊判例タイムズ38号(判タ38号)」です。東京地裁の民事交通訴訟研究会が編集しており、過去の膨大な裁判例を分析して、事故類型ごとに基本となる過失割合と修正要素を一覧化した、過失割合判定の基本書として広く使われています。

これと並んで参照されるのが、日弁連交通事故相談センター東京支部が編集する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」、通称「赤い本」です。赤い本にも過失割合の章があり、判タ38号と同様の類型を採用しています。大阪では「青本」やいわゆる「緑のしおり」が参照されることもあります。

保険会社の担当者が「8対2です」と言うとき、その根拠は、ほぼ間違いなくこのいずれかの書籍に記載された数値です。逆に言えば、被害者側も同じ書籍を参照すれば、保険会社が示してきた過失割合が妥当かどうかを検証できます。

ところが、判タ38号は400ページ近い専門書で、現場の道路状況や信号サイクル、車両の進入経路を踏まえて「事故が判タのどの類型に当てはまるか」を見極める作業には、相当の経験が必要です。同じ右直事故でも、信号サイクル・右折車の進入時期・直進車の速度違反の有無によって、基本割合と修正幅は大きく変わります。

こうした構造があるため、保険会社の担当者は、自分たちに都合の良い類型を選び、被害者に不利な修正要素は意識的に外して提示してくる傾向があります。被害者本人が書籍を読み込んで反論するのは現実的に困難で、ここに弁護士が介入する余地が大きく生まれます。

過失割合は「3段階」で決まる|基本割合・修正要素・個別事情

判タ38号方式で過失割合を組み立てるとき、現場では次の3段階の作業を行います。

ひとつめは、事故を判タの類型に当てはめて、基本となる過失割合を確定する作業です。たとえば「信号機のある交差点での直進車同士の出合い頭事故・一方が黄信号で他方が赤信号」であれば、判タの該当ページを開けば、基本割合が「黄信号車20:赤信号車80」と記載されています。

ふたつめは、修正要素を加減算する作業です。判タには各類型ごとに「修正要素」の一覧が用意されており、たとえば「赤信号直前進入:+10」「衝突時相手の信号が青:+20」「著しい過失:+10」「重過失:+15」といった補正値が記載されています。これらを基本割合に加減して、当該事故の過失割合を組み立てます。

著しい過失と重過失の区別は、修正幅に直結する重要な論点です。現場の解釈では、著しい過失は「事故態様ごとに通常想定される程度を超える過失」を指し、わき見運転・時速15キロメートル以上30キロメートル未満の速度違反・酒気帯び運転に至らない程度の飲酒運転などが該当します。重過失は「故意に近いほど重大な過失」を指し、居眠り運転・無免許運転・酒酔い運転・時速30キロメートル以上の速度違反などが該当します。

みっつめは、個別事情を踏まえた最終調整です。判タの類型に完全に当てはまらない事故、たとえば変則的な五叉路交差点や、駐車場内の事故、夜間で見通しが極端に悪い場合などは、類似類型を参考にしつつ、個別の判決例も踏まえて結論を導きます。

保険会社の担当者がここまで丁寧に組み立てているかというと、現場ではそうではありません。担当者は数百件の事案を並行処理しており、修正要素を主張するのは被害者側です。被害者が何も言わなければ、基本割合のまま、あるいは保険会社に都合の良い修正だけを反映した数字が提示されます。

堺市内で多い事故類型別|基本割合と押さえておきたい修正要素

ここからは、堺東駅エリアでご相談が多い事故類型ごとに、基本割合の見方と、修正要素として狙うべき論点をまとめます。

追突事故|原則10対0だが「ゼロ回答」を諦めない

国道26号・大阪中央環状線・堺泉北環状線など、信号待ちや渋滞で停車中に追突されるパターンは、堺市内でも頻発します。

追突事故の基本割合は、追突した側が100、追突された側が0です。前方車両が予測できない急ブレーキを踏んだなどの特殊事情がない限り、被害者の過失はゼロが原則となります。

ところが現場では、保険会社が「停車位置が悪かった」「ブレーキランプが切れていた可能性がある」「ハザードランプを点けていなかった」などの理由をつけて、5%から10%の過失を被害者に乗せてくることがあります。これは判タの基本割合からの逸脱であり、明確な根拠がない限り、被害者は受け入れる必要がありません。

逆に、被害者側に不当な過失を乗せられた事案では、堂々と「10対0でなければ示談しません」と回答する余地があります。なお、被害者の過失がゼロだと、被害者側の任意保険会社は示談代行ができないため、弁護士に依頼するか、被害者自身で交渉する必要があります(弁護士費用特約の活用がほぼ必須の場面です)。

詳しくは「交通事故における弁護士特約の使い方|3つの手順を簡単に解説」をご参照ください。

右直事故|信号サイクルと進入時期が勝負どころ

右折車と直進車の事故、いわゆる右直事故は、堺東駅周辺の主要交差点をはじめ、堺市内で頻発する典型類型です。

信号機のある交差点で双方青信号の場合、基本割合は右折車85:直進車15。直進車に「過失なし」とはなりません。直進車の側に「先入してきた右折車を発見しながらブレーキをかけずに衝突した」などの事情があれば、直進車の過失は重くなります。

ここで重要な修正要素は、信号サイクルです。

直進車が黄信号で交差点に進入し、右折車が黄信号から赤信号に変わるタイミングで右折した場合、基本割合は変わってきます。判タには信号サイクル別の細かい類型が用意されており、「直進車黄信号進入・右折車黄信号進入」「直進車赤信号進入・右折車黄信号進入」など、組み合わせで基本割合が異なります。

実況見分調書に「直進車は黄信号で進入」と記載されていれば、被害者側にとって有利にも不利にも働きます。誰がどの信号で進入したかは、後述する刑事記録(実況見分調書)で確認しておきたい事項です。

出会い頭事故|「優先道路」と「一時停止規制」を見落とすな

信号機のない交差点での出会い頭事故では、道路の優先関係が決定的に重要になります。

同程度の幅員の交差点での出会い頭事故(双方規制なし)の基本割合は40:60が原則ですが、これに「優先道路の表示」「一時停止規制」「明らかに広い道路」「徐行義務違反」などの修正要素が大きく影響します。

たとえば、被害者が走行していた道路が優先道路(「優先道路」標識または中央線が交差点内まで継続している道路)であれば、加害者側の過失は20〜30ポイント加算されます。一時停止規制がある側を加害者が一時停止せずに進入した場合も、同様の加算があります。

注意すべきは、堺市内の旧市街地(堺区内の細街路、堺東駅西側の住宅街など)では、現地に標識がない交差点も多く、地図と現地確認の両方で優先関係を立証する必要が出てくる点です。実況見分調書の見分図に標識や中央線の記載があるか、信号や標識の写真が添付されているかは、確認しておきたいところです。

歩行者対自動車|横断歩道・信号・幼児高齢者

横断歩道上の歩行者と自動車の事故は、原則として歩行者の過失はゼロ、自動車の過失が100です。横断歩道のない場所での横断中の事故でも、歩行者の保護の観点から、基本割合は歩行者20〜30:自動車70〜80程度に設定されています。

修正要素として、歩行者が幼児(6歳未満)または高齢者(おおむね65歳以上)であれば、歩行者側の過失が5〜10ポイント減算されます。逆に、歩行者が酩酊・夜間・暗い色の服装・横断禁止場所などの場合は、過失が5〜10ポイント加算されます。

堺市内では、高齢化の進展とともに、高齢者が幹線道路を横断中に重傷を負う事故が増えています。高齢の被害者ご家族から「歩行者にも過失があると言われて困っている」というご相談を受けたとき、まず確認するのは、横断歩道の有無・信号の有無・夜間の有無・歩行者の年齢です。これらを総合して、保険会社の提示割合が判タの基準と整合的かを検証します。

自転車対自動車|「車両」としての扱いと修正要素

堺市は自転車利用が盛んで、堺東駅周辺でも自転車が車道を走るシーンが多く、自転車対自動車の事故も頻発します。

自転車は道路交通法上「軽車両」であり、歩行者よりは保護の度合いが弱く、自動車との事故では一定の過失が認められる類型が多くあります。たとえば信号機のない交差点での自転車対自動車の出会い頭事故では、基本割合は自転車20:自動車80程度です。

ただし、自転車側にヘルメット未着用・無灯火・逆走・スマートフォン操作・ふらつき運転などの著しい過失または重過失が認められれば、過失割合は大きく自転車側に振れます。逆に、自動車側に脇見・速度違反・酒気帯びがあれば、自動車側の過失が加算されます。

このあたりも、実況見分調書とドラレコ映像で立証していく作業が中心になります。

当事務所でよくお引き受けするご相談事例|4つの典型パターン

ここまで類型別の基本割合と修正要素をお話ししてきました。ただ、これだけお伝えしても「で、実際に弁護士が入るとどうなるのか」というイメージは持ちにくいかと思います。当事務所が堺東駅エリアでよくお引き受けする過失割合争いのご相談を、4つの典型パターンに整理してご紹介します。守秘義務の関係で、いずれも複数の事案を一般化したものですが、堺市内の被害者の方が抱える悩みのリアリティをお伝えできればと思います。

事例1|追突事故で「停車位置」を理由に1割の過失を持ち出されたケース

国道26号で信号待ち停車中、後続車に追突されたご相談。頸椎捻挫と腰椎捻挫で約6か月通院し、後遺障害は非該当でしたが、入通院慰謝料を含めて争点になりました。

加害者側の任意保険会社からの第一報は「停車位置が左に寄り過ぎていた可能性がある」「ブレーキを踏み込んだタイミングが急だった」として、9対1の過失割合提示でした。慰謝料も自賠責基準で60万円台でした。

ご依頼後、加害者車両のドラレコ映像保全要請と、警察への実況見分調書取り寄せ(不起訴記録閲覧謄写申請)を並行して進めました。映像では、ご相談者の車は車線中央に停車しており、ブレーキランプも正常に点灯していました。停車位置に問題がないこと、急ブレーキも見当たらないことを書面で指摘し、過失割合を10対0に修正のうえ、慰謝料も弁護士基準(赤い本基準)まで引き上げました。過失1割分の取り戻しと慰謝料の引き上げをあわせて、最終的な受領額は当初提示からおよそ120万円増えました。

ご相談現場で何度も感じるのは、追突事故で被害者に過失が乗ることに対する違和感を、ご相談者ご自身が言語化できないままにされていることです。「相手に追突されたのに、なぜ自分に1割の過失なのか」と感じながらも、「保険会社が言うのだから」と納得しかけて当事務所にいらっしゃる方が大半です。追突事故で被害者過失が出ることは、判タの基本ルールからすると極めて例外的で、明確な根拠の提示がない限り、受け入れる必要はありません。

事例2|右直事故で直進車側に3割の過失を主張されたケース

堺東駅エリアの幹線道路の交差点で、直進していたご相談者の車と、対向右折車との衝突。ご相談者は左大腿骨骨折で約4か月の入通院、後遺障害12級が認定された事案でした。

加害者側保険会社は「直進車に速度違反の疑い」「右折車が先に交差点に進入していた」として、ご相談者側に30%の過失を主張してきました。後遺障害逸失利益を含めた損害総額が1,800万円規模になるため、30%の過失差は540万円に直結する争点でした。

ご依頼を受けて即座にやったのは、現場周辺のコンビニとマンションの防犯カメラ映像の保全依頼を文書で送付することでした。ご相談時点で事故から10日が経過していたため、ぎりぎりの保全になりました。あわせて加害者側車両のドラレコ映像、警察からの実況見分調書を取得しました。

これらの証拠から、直進車の速度は制限速度内であったこと、右折車が黄信号末期に強引に右折を開始したことを立証し、過失割合9対1(ご相談者側1割)に修正しました。過失が3割から1割に下がったことで、賠償金は当初提示からおよそ360万円増えました。

私自身がご相談を受けて強く感じたのは、防犯カメラ映像の保全のタイミングが、実際に1〜2週間で勝負がついてしまうということです。コンビニのカメラは早ければ1週間、マンションでも2週間程度で上書きされていきます。ご相談が事故から2週間以上経過していたら、おそらく決定的な映像は失われていました。重大な過失争いを覚悟しなければならない事案ほど、初動の早さが結果を分けます。

事例3|歩行者横断中の事故で「夜間・横断歩道外」を理由に過失を主張されたケース

70代のご相談者(女性)が、堺市内の幹線道路を横断中、自動車と衝突。大腿骨頸部骨折を中心とした重傷で、後遺障害9級が認定された事案でした。ご相談は被害者ご本人ではなく、ご家族からでした。

加害者側保険会社は「夜間横断」「横断歩道のない場所での横断」「暗色の服装」を理由に、歩行者側に30%の過失を主張してきました。逸失利益と慰謝料を含む損害総額が約3,200万円規模だったため、30%差は960万円に相当する争点になりました。

ご依頼後、実況見分調書から最寄り横断歩道までの距離を計測したところ、約25メートルでした。判タでは横断歩道に近接した横断は修正要素として歩行者側に有利に作用します。また、現場が幹線道路で街灯設置間隔が短く、視認性が悪いとはいえない状況だったこと、加害者車両が制限速度を約10km/h超過していたこと(実況見分調書のブレーキ痕からの推定)を立証しました。さらに高齢者修正としてマイナス5%も主張しました。

最終的に歩行者過失を10%まで引き下げ、過失が3割から1割に下がったことで、賠償額は当初提示からおよそ640万円増えました。

このご相談のとき、ご家族から「年寄りだし、夜に横断歩道外を歩いていた本人にも非があるので、ある程度は仕方ない」というお話がありました。ご相談現場でこの種の諦めをお聞きすることは少なくありません。ただ、判タの修正要素表を一つひとつ当てはめていけば、見落とされている事情が出てきます。高齢の被害者の事案こそ、ご家族の諦めで賠償が大きく目減りしやすい類型ですので、まずは諦めずにご相談いただきたいと考えています。

事例4|自賠責保険の被害者請求で重過失減額を回避できたケース

国道26号沿いのわき道から本線に進入してきた自動車と、本線を走行中の原付バイクの出合い頭衝突。ご相談者(原付運転者)は右下腿骨開放骨折で、後遺障害10級が認定されました。

加害者側保険会社は「原付の前方不注視」「制限速度超過の疑い」を理由に、ご相談者側に70%の過失を主張してきました。重過失減額(後遺障害分は被害者過失7割で2割減額)の境界に乗せられた事案です。

ご依頼後、任意保険交渉と並行して、自賠責保険への被害者請求を独自に進めました。実況見分調書、加害者の刑事処分結果(略式命令で罰金)、現場写真をまとめて、ご相談者側の過失は5割未満であるとする意見書を、自賠責調査事務所宛てに提出しました。

自賠責調査事務所は提出資料を踏まえて過失5対5と認定し、後遺障害10級にあたる自賠責保険金461万円が、重過失減額を受けずに満額支払われました。その後の任意保険交渉でも、自賠責認定を前提に5対5まで過失を見直させ、最終的な受領額は当初提示からおよそ500万円増えました。

このタイプの事案で、私が現場で繰り返しお伝えしているのは、任意保険会社と自賠責調査事務所は別々の判断主体であり、両方を並行して進める価値がある、ということです。任意保険会社の交渉に消耗して諦めかけている被害者の方でも、自賠責で別の結論が出ることで、結果的に賠償の出口が見えてくる場合があります。重過失減額の境界(被害者過失7割)に近い事案では、検討に値する選択肢のひとつです。

なお、ここでご紹介した4つの事例は、過失割合をめぐる典型的なパターンを複数の事案から一般化したものです。同じ追突事故・右直事故でも、信号の状況や証拠の有無によって結論は一件ごとに変わります。ご自身のケースがどう評価されるのかは、個別に事情をお伺いしたうえでなければ正確には申し上げられません。気になる点があれば、まずはお気軽にお問い合わせください。

修正要素を立証する|実況見分調書・ドラレコ・防犯カメラ

過失割合を争う際、最も力を発揮するのが客観的証拠です。当事者双方の言い分が食い違う事故でも、客観証拠が決定的な決め手となることがあります。

実況見分調書|刑事記録の入手

人身事故が発生すると、警察が現場で実況見分を行い、実況見分調書(甲号証)を作成します。実況見分調書には、事故現場の見分図、車両の進行経路、衝突地点、ブレーキ痕の有無、信号サイクル、双方の供述要旨などが詳細に記載されています。

実況見分調書は、過失割合争いにおいて最重要の客観証拠です。基本割合の類型当てはめも、修正要素の主張も、実況見分調書の記載なくしては成り立たないと言っても過言ではありません。

実況見分調書を取得する方法は、不起訴事件と起訴事件で異なります。

不起訴になった事件(多くの人身事故が該当します)では、検察庁に対して「不起訴記録の閲覧・謄写申請」を行います。実況見分調書については原則として閲覧・謄写が認められる運用となっています。

起訴された事件では、刑事裁判が確定するまでは謄写が制限される場面もありますが、確定後または公判中に弁護人を通じて入手することが可能です。被害者参加制度を利用すれば、刑事裁判中であっても証拠の閲覧・謄写ができる場合があります。

被害者本人が単独で謄写申請を行うことも理論上は可能ですが、検察庁の運用や請求書類の作成には専門知識が必要で、弁護士を介して請求するほうがスムーズに進みます。

ドライブレコーダー・防犯カメラ

近年、ドライブレコーダーが普及し、過失割合争いの様相が大きく変わりました。映像があれば、信号サイクル・進入時期・速度・ブレーキ操作のタイミングが客観的に明らかになります。

事故発生直後にやるべきことは、自車のドラレコ映像のSDカードを取り出して、上書きされる前にコピーすること、相手車両のドラレコ映像の保全を相手保険会社・警察に依頼すること、現場周辺の防犯カメラ(コンビニ・銀行・マンション)の映像保全を早期に依頼することです。

防犯カメラの映像は、店舗側で1〜2週間程度で上書き消去されることが多く、時間との勝負になります。事故直後に弁護士に相談していただければ、当事務所から店舗・マンション管理会社に対して、映像保全の協力依頼を文書で発出します。

LINEや通話録音、目撃者の確保

加害者本人とのLINEのやり取り、保険会社担当者との通話を録音した音声(自己のための録音は適法とされる場面が多いです)、現場に居合わせた目撃者の連絡先。こうした情報も、過失割合争いで意外な決定打になることがあります。

なお、事故直後の対応については、「堺市・堺東で交通事故に遭ったら|初動対応から弁護士依頼までの完全ガイド」と「交通事故で「物損」のままにしない|後遺症が残りそうな人身傷害の初動対応と後遺障害等級の取りこぼし防止ガイド」で、より詳しく解説しています。

自賠責保険の重過失減額を回避する|「過失7割の境界」を意識した被害者請求

過失割合争いで、多くの被害者・弁護士が見落としがちなのが、自賠責保険の重過失減額制度です。これを正しく理解し、被害者請求を戦略的に活用することで、任意保険会社の提示金額を超える賠償を確保できる場合があります。

重過失減額の仕組み|「7割未満なら減額なし」

自賠責保険は、被害者保護を目的とした強制保険です。任意保険のような厳格な過失相殺はせず、被害者の過失が7割未満であれば、過失減額を一切行いません。

被害者の過失が7割以上の場合に、初めて減額が始まります。

被害者の過失割合 傷害分の減額 後遺障害・死亡分の減額
7割未満 0 0
7割以上8割未満 2割減 2割減
8割以上9割未満 2割減 3割減
9割以上10割未満 2割減 5割減
10割 免責(支払なし) 免責(支払なし)

表が示すとおり、被害者の過失が6割でも7割未満であれば、自賠責からは満額が支払われます。任意保険会社の交渉では「6対4」「7対3」と言われていても、自賠責の被害者請求を別途行えば、自賠責からは過失相殺なしで支払いを受けられる構造になっているわけです。

戦略例|任意保険の提示前に自賠責で確保する

当事務所がよくお勧めする方法のひとつは、後遺障害等級認定の段階で、加害者側の任意保険会社に「事前認定」を任せるのではなく、被害者請求方式で被害者自ら自賠責保険に直接請求することです。

事前認定だと、認定後に任意保険会社が一括して賠償交渉をしてきますが、過失割合分は最初から差し引かれた金額しか提示されません。

被害者請求にしておけば、過失7割未満であれば、自賠責から後遺障害慰謝料と逸失利益相当額(後遺障害等級14級なら75万円、12級なら224万円、9級なら616万円など、上限額の範囲内)が、過失相殺なしで一括で振り込まれます。その後の任意保険との交渉では、自賠責支払額を差し引いた残額についてのみ過失相殺がされる構造になり、結果的に被害者の手取額が増えることがあります。

事前認定と被害者請求の使い分けは、後遺障害等級認定の戦略にも関わる重要論点で、いずれも一長一短があります。重傷・後遺障害事案では、ご相談時に個別の判断材料をご説明します。

自賠責調査事務所での重過失減額争い

被害者の過失が7割を超えそうなケースでは、自賠責保険の調査事務所(損害保険料率算出機構)が独自に重過失減額を判断します。

ここで押さえておきたいのは、調査事務所は加害者側保険会社の主張を細かく聴取するわけではなく、提出された資料に基づいて判断する点です。被害者側が実況見分調書・ドラレコ映像・刑事処分結果(不起訴・略式命令・正式起訴)などを添えて、被害者の過失が7割未満であると主張する意見書を提出すれば、調査事務所はそれを重視して判断する傾向があります。

任意保険会社との交渉では「7対3」と言われていても、自賠責の被害者請求で「6対4」または「5対5」と認定されれば、重過失減額の適用を回避できます。これは弁護士が介入することで初めて活用できる戦略のひとつです。

訴訟での自賠責の取扱い

仮に訴訟になっても、最高裁判所平成18年3月30日判決(民集60巻3号1242頁)は、裁判所は自賠責の支払基準に拘束されず、独自に過失割合を判断できると示しています。任意保険会社の交渉が決裂しても、訴訟で過失割合を争い直すルートが残っています。

過失割合を争う4つの場面|どこで、どう争うか

過失割合は、事故発生から賠償金支払いまでのプロセスのうち、次の4つの場面で争うことになります。

ひとつめは、示談交渉に入る前の「初動」の段階です。事故直後、警察への届出を「物損」のままにせず人身事故扱いに切り替える、実況見分に立ち会って自己に有利な事実を漏れなく調書に記載してもらう、ドラレコ・防犯カメラの映像を保全する。この段階の動きが、後の過失割合争いの土台になります。

ふたつめは、保険会社との示談交渉の段階です。保険会社が過失割合の提示をしてきたら、すぐに「分かりました」と返答せず、判タ38号の類型と修正要素を踏まえた書面で反論します。弁護士が代理人として入ると、保険会社の担当者は判タに基づいた議論をせざるを得なくなり、根拠の薄い数字は引っ込めざるを得なくなります。

みっつめは、自賠責保険の被害者請求の段階です。先ほど解説したとおり、過失7割の境界を意識して、自賠責に対して独自に過失割合の意見書を提出します。任意保険交渉と並行して進めることで、賠償の総額を最大化できます。

よっつめは、訴訟の段階です。示談交渉で折り合いがつかなければ、訴訟または交通事故紛争処理センター(東京・大阪等にあり、無料の和解斡旋を行う準司法機関)への申立てで決着をつけます。訴訟では、裁判官が判タ38号と判例に基づいて中立的に判断するため、保険会社の不当な提示が修正される可能性が高まります。

弁護士費用特約があれば、過失割合を争う費用負担はほぼゼロ

「弁護士に依頼すると、費用倒れになるのではないか」。過失割合を争うご相談で、最も多く頂く心配がこれです。

ご自身またはご家族の自動車保険・火災保険に弁護士費用特約が付帯されていれば、原則として上限300万円までの弁護士費用が保険会社から直接支払われます。被害者の自己負担はゼロ、または最小限に抑えられます。

弁護士費用特約は、加入者本人だけでなく、同居の親族・別居の未婚の子・配偶者・自動車保険の場合は車両に搭乗していた家族なども対象となるケースが多く、ご自身が加入していなくても、ご家族の保険を通じて使える可能性があります。

特約があれば、過失割合を1割でも動かすために、判タ38号を読み込み、実況見分調書を取得し、判例を検索し、保険会社と交渉する。この一連の作業を弁護士に依頼しても、被害者の手取額が減ることはありません。

詳しい使い方は「交通事故における弁護士特約の使い方|3つの手順を簡単に解説」をご参照ください。

なお、特約がなくとも、当事務所では交通事故被害者の方には完全成功報酬制(着手金無料、増額分から所定の報酬を頂戴する方式)でのご依頼を承る場合もありますので、まずはご相談いただければと思います。

よくあるご相談|FAQ

「保険会社から提示された過失割合を、すでに口頭で承諾してしまったのですが、覆せますか」

口頭での承諾は、示談書に署名捺印するまでは、原則として法的拘束力を持たない場面が多いです。示談書(免責証書)に署名する前であれば、別の過失割合での再交渉が可能です。ただし、保険会社は「すでに合意したはず」と主張してくる可能性があるため、できるだけ早く弁護士に相談し、書面で過失割合の見直しを申し入れる必要があります。

「警察の実況見分のとき、動揺していて自分に不利な供述をしてしまいました。修正できますか」

実況見分調書の供述部分は、後日訂正を求めることは原則として困難ですが、それと矛盾する客観証拠(ドラレコ映像、目撃証言、衝突箇所の損傷状況など)を別途主張・立証することで、結果的に過失割合の認定を被害者有利に動かすことは可能です。供述の信用性そのものを争うアプローチですね。

「相手がドラレコをつけていなくて、自分もつけていません。証拠は何もありません」

それでも諦める必要はありません。現場周辺の防犯カメラ、コンビニやマンションの監視カメラ、通行人の目撃証言、衝突箇所の損傷状況からの衝突角度の推定(必要に応じて自動車工学鑑定)、車両の停止位置の写真など、補強できる証拠は多数あります。事故から時間が経つほど証拠は散逸しますので、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

「自転車で車にぶつけられました。歩行者に近い扱いになりますか」

自転車は法律上「軽車両」で、歩行者ほどの保護は受けられません。ただし、自動車との事故では基本的に自動車側の過失が大きくなる類型が多く、自転車側に著しい過失や重過失がない限り、自転車側の過失は20〜30%程度に収まる事案が多い印象です。具体的な事故態様(信号の有無、横断歩道の有無、自転車の進路)によって変わりますので、個別にご相談ください。

「子どもが横断中に車に跳ねられました。子どもの過失はどうなりますか」

幼児(6歳未満)には事理弁識能力がないとされ、過失相殺の対象とならない場合があります。児童(6歳以上13歳未満)は、過失相殺の対象とはなりますが、判タの修正要素で5〜10ポイントの減算が認められる類型が多くあります。重要なのは「監督者過失」(親の監督が不十分だったとして加害者が主張するもの)を安易に認めないことで、これも弁護士介入により反論可能です。

「物損事故扱いのままで処理されています。過失割合は争えますか」

物損事故のままだと、実況見分調書が作成されないか、簡易な物件事故報告書のみで終わってしまうため、後日の過失割合争いで証拠が不足するリスクが高まります。ケガをしている、または後から症状が出ている場合は、人身事故への切替えを警察に申請すべきです。詳しくは「交通事故で「物損」のままにしない|人身傷害の初動対応と後遺障害等級の取りこぼし防止ガイド」をご覧ください。

「重傷で入院中、家族が代わりに保険会社と話しています。今のうちにできることは」

入院中・治療中のご家族には、過失割合に関する書面に絶対に署名しないこと、保険会社からの示談提案は弁護士相談まで保留することをお伝えしたいと思います。重傷事故での家族対応については「堺市の交通事故(重傷・入院・後遺障害)で「後悔しない」ためのチェックリスト|ご家族がやるべきこと」も参考になります。

まとめ|過失割合は「動く数字」|堺東駅の弁護士に相談を

過失割合は、保険会社が一方的に決める数字ではありません。判タ38号の基本割合と修正要素、実況見分調書とドラレコ映像、自賠責保険の被害者請求戦略を組み合わせれば、1割・2割と動かしていける、交渉と立証の余地が大きな数字です。

そして、過失割合が1割動けば、賠償金は数十万円から数百万円単位で変わります。重傷・後遺障害事案では、1割の差が1,000万円を超えることもあります。弁護士費用特約があれば自己負担なしで対応できるのに、口頭での提示にそのまま署名して数百万円を取りこぼしてしまうご相談者を、これまで何度も見てきました。

堺東駅エリアで交通事故の過失割合についてお悩みの方、保険会社から提示された数字に少しでも違和感がある方は、示談書に署名する前に、ぜひ一度ご相談ください。当事務所では、事故直後の方から、すでに保険会社と何度かやり取りを進めている方まで、それぞれの段階に応じた最適な戦略をご提案します。

人身事故被害者の方が弁護士に相談するメリットは「人身事故の被害者が弁護士に相談すべき4つの理由|費用や依頼する際の注意点」でも整理しています。

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田渕総合法律事務所は、南海高野線堺東駅西出口から徒歩5分。堺市内の交通事故被害者の方の伴走者として、過失割合争いから等級認定・賠償交渉・訴訟まで、一貫してサポートいたします。