知人に渡した事業資金の返還を求め訴訟で全面勝訴した解決事例 |堺市の弁護士【田渕総合法律事務所】堺東駅5分

田渕総合法律事務所
072-248-4848

平日9時〜19時(土日は要予約で相談可能)

24時間相談予約受付中

知人に渡した事業資金の返還を求め訴訟で全面勝訴した解決事例

50代 / 男性/男性

相談前

ご相談者は、個人で事業を営む50代の男性です。SNSを通じて知り合った30代の知人と親しくなり、半年ほど経ったころ、新しく事業を始めるので出資してほしいと頼まれました。何度か話を聞き、事務所として借りる予定だという物件にも案内されたことから、ご相談者は知人を信用し、事業をやめたときは全額を返すという約束のもとで400万円を現金で渡しました。

事業はまもなく閉じられ、その後、二人の間で金銭消費貸借契約書が作られています。400万円を借り受けたこと、毎月末日に24万円ずつ返すこと、2回分以上返済を怠ったときは残額を一括で支払うことが書かれ、知人の署名と実印の押印、印鑑証明書も添えられていました。返済は最初の2回、合計48万円で止まり、それ以降は電話にも出なくなりました。

ご相談者が手元に残していたのは、この契約書と、事業計画を説明する資料、知人が作成した領収書でした。どう回収すればよいのか見当がつかない状態で当事務所に来られました。

ご相談内容と方針

ご希望は、残りの352万円を返してもらうことでした。相手は連絡を絶っており、話合いで分割払いをまとめられる見込みは薄いと考えられました。

理論上は、契約書と署名押印がそろっていれば、貸したお金の返還請求は認められやすい類型です。もっとも実務上は、相手が裁判所からの書類を受け取らない、期日に出てきて契約書の効力を争う、といった事情で手続が長引くことが珍しくありません。勝訴しても、そのままでは自動的にお金が戻ってくるわけでもありません。

そこで、内容証明郵便で請求の意思を明らかにしたうえで、応答がなければ訴訟を起こし、判決という強制執行の手段を手に入れることを目標に据えました。期限の利益を失った日の翌日からの遅延損害金も、あわせて請求する方針です。

相談後

請求書面は、住民票上の住所と、知人が代表を務める会社の所在地の2か所へ送りました。住所あての郵便は宛先不明で戻り、会社あては不在のまま保管期間が過ぎて返送されています。そこで、同じ内容を特定記録郵便で改めて送り、こちらは配達されました。不在のまま保管期間が過ぎた郵便でも、受取人が内容を推知でき、受け取ろうと思えば受け取れた状況であれば、意思表示は到達したと認められ得ます(最高裁平成10年6月11日判決)。請求を受けたことを知らないという言い分は通りにくくなりました。当事務所の弁護士が会社を訪ね、ふだんは人の出入りがあることも近隣で確かめています。

訴状を出した後も、訴状がなかなか相手に届きませんでした。住所あての送達ができなかったため、勤務先での送達を求める上申をしたほか、相手と連絡を取って確実に受け取れる住所を確かめ、そこへの再送達を求める上申も重ねています。裁判所から相手に書類が届かなければ、裁判は始まりません。第1回の期日は、当初の予定より後になりました。

第1回の口頭弁論には相手本人が出頭し、お金を受け取ったことは認めました。そのうえで、受け取ったのは貸付金ではなく事業への出資金であること、事業は始めてまもなく閉じてしまったこと、契約書には無理やり署名押印させられたことを述べています。

この言い分を受けて、請求の組み立てを見直しました。当初の出資の約束には、事業をやめたときは出資金の全額を返すという定めがありました。そうであれば、事業をやめた時点で相手には出資金を返す義務が生じており、後から作られた契約書は、その返還義務を借金に切り替える合意だったと説明できます。民法588条の準消費貸借という考え方です。訴えを変更して、準消費貸借に基づく請求を主位的に、出資の約束に基づく返還請求を予備的に掲げ、どちらの見方をとっても結論が同じになるようにしました。

無理やり署名させられたという点については、期日の場で、脅すような言葉をかけられたのか、手を取って書かされたのかを相手に確認し、いずれもなかったという答えを得ています。調書の記載がこの答えと食い違っていたため、その記載の削除を求める異議も申し立てました。強迫による取消し(民法96条1項)を主張しているのかどうかが曖昧なまま判決に進むことを避けるためです。

解決の結果

5回目の期日で弁論が終わり、裁判所は請求の全部を認める判決を言い渡しました。相手に対し、残額352万円と、期限の利益を失った日の翌日から支払済みまで当時の法定利率である年3%の割合による遅延損害金を支払うよう命じ、訴訟費用も相手の負担としています。仮執行の宣言も付きました。

判決は、相手が事業をやめたことで出資金の返還義務を負い、その義務を目的として準消費貸借が成立したと認めました。無理やり署名させられたという主張は、具体的な態様が明らかでなく、証拠上も認められないとして退けています。ご依頼から判決まで、1年足らずでした。

弁護士からのコメント

知人どうしのお金の貸し借りでは、渡したときの名目と、後から作った書面の名目が食い違うことがよくあります。本件でも、相手は出資だったと主張しました。名目の争いに正面から付き合うと、どちらの言い分が正しいかの立証に時間を取られます。出資であれ貸付であれ返す義務があるという筋道を先に用意しておけば、相手の言い分を取り込んだまま請求を維持しやすくなります。

契約書に署名押印があることの意味も大きいところです。本人の署名や押印がある私文書は、真正に成立したもの、つまり本人の意思に基づいて作られたものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。この推定を崩すには、相手のほうで具体的な事情を示す必要があります。お金を渡すときは、金額、返済の方法、返済が滞ったときの扱いを書面にし、本人の署名押印を受けておくことをお勧めします。

相手が連絡を絶った場合、訴状が届くまでに時間がかかることがあります。住所が分からない、受け取らないといった事情があっても、勤務先での送達(民事訴訟法103条2項)や、要件を満たせば公示送達(同法110条)という方法があります。早めに相談いただければ、請求の書面を送る段階から、後の送達まで見越した準備ができます。

判決を得た後の回収も、別の手続になります。相手の預金や給与を差し押さえるには、どこに財産があるかを特定する必要があります。財産開示手続(民事執行法196条以下)や、金融機関などの第三者から情報を得る手続(同法204条以下)は、そのための有力な手段です。お金の貸し借りの請求権は、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかるのが原則ですから(民法166条1項1号)、返済が止まったら早めに動くことが大切です。

弁護士からのご案内

知人や取引先に貸したお金が返ってこない、出資したお金の扱いでもめているといったご相談は、初回30分5,500円でお受けしています。契約書やメッセージのやり取りなど、お手元の資料を拝見しながら、請求の組み立てと回収までの見通しをご説明します。お電話(072-248-4848)またはお問い合わせフォームからご予約ください。当事務所で扱う個人のご相談の分野は個人のご相談に、ご依頼にかかる費用は費用についてにまとめています。

事案により結果は異なり、同種の結果をお約束するものではありません。守秘義務のため、ご本人が特定されないよう、金額・期間などの数値を含めて事案の細部は変更しています。