ご相談者は、妻とお子様3人の5人で暮らす30代の男性会社員です。数年前に家族で住むためのマンションを購入した際、住宅ローンのほかに、頭金や引越しの費用、購入にともなう諸経費を消費者金融やクレジット会社からの借入れでまかないました。毎月の返済額が大きくなったぶん家計は圧迫され、足りない生活費をさらに借入れで補う状態が続きます。転機になったのは、勤務先で新しい職務に就くための実習期間に入ったことでした。残業がなくなって手取りの月収が約7万円下がったうえ、冬の賞与も前年から大きく減額されます。車検の費用やお子様の入院費といった予定外の出費も重なり、複数の会社への返済がほとんど止まってしまった段階で、当事務所の法律相談をご利用になりました。
ご相談内容と方針
ご相談者が最も強く望まれていたのは、家族が暮らすマンションを手放さないことでした。自己破産を選んだ場合、住宅は原則として処分の対象になります。これに対して個人再生は、民事再生法の住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローンについては返済を続けながら、それ以外の借入れを大幅に減らすことができる手続です。ご相談の時点で、住宅ローン以外の借入れは約440万円、住宅に関する借入れは3件に分かれて約3,080万円が残っていました。手取り月収25万円、年収約430万円という収入で5人家族の生活を維持しながら、3年間の分割払いに耐えられるかどうかを、家計収支表と財産目録を作りながら検討します。返済に充てられる金額が確保できると見通せたことから、小規模個人再生を選択する方針を固めました。
受任のご連絡を各社へ送って取立てを止め、住宅ローン以外の借入れについては、全社から届出を受けて債権額を確定させました。並行して、給与明細と源泉徴収票、家計の支出資料をそろえ、収入と支出のどこにどれだけ余裕があるのかを数字で示せる形に整えます。裁判所へ小規模個人再生の申立てを行い、開始決定を受けたうえで再生計画案を提出しました。
この事案で作業量を要したのは住宅ローンの部分です。住宅に関する借入れは、公的な融資機関、銀行、共済の3件に分かれ、返済も滞っていました。滞納がある場合、遅れているぶんをどのように解消していくかを条項として書き分ける必要があります。契約どおりの返済に戻す方法、返済期間を延ばす方法、元本の支払を一時猶予する方法などが法律上用意されており、これらと異なる内容を定めるときは債権者の同意が要ります。返済日も利率の取扱いも3件それぞれ異なっていたため、各債権者と個別に協議しました。うち2件については、遅れている分を一定期間で解消したうえで契約どおりの返済に戻す内容で、債権者の同意を得て条項を定めています。残る1件については、申立ての前に貸付契約そのものの条件を変更し、変更後の契約どおり支払う形に整えました。裁判所からの照会に対しては、申立ての段階で債権者一覧表や家計収支表の補正に応じ、再生計画案の提出後は、弁済に充てる原資の積立状況を通帳と給与明細でお示しして履行可能性を説明しています。申立てから約5か月後に認可決定が出され、その約1か月後に決定が確定しました。
解決の結果
住宅ローン以外の借入れ約440万円は、約77%の免除を受けて、支払うべき額が約100万円まで圧縮されました。返済方法は3か月ごとに8万3000円から8万5000円ずつ、通算3年・12回の分割とし、最終回で端数を調整しています。住宅ローンについては、住宅資金特別条項により、滞っていた分を一定期間で解消しながら従来の契約どおり返済を続けることとなり、家族が暮らすマンションはそのまま維持されました。住宅ローンを含めた債務の総額は約3,520万円でしたが、そのうち生活を圧迫していた部分だけを切り離して整理できたことになります。ご相談から認可決定の確定までに要した期間は約10か月でした。
理論上は、住宅ローンなど一部の債権を除いて計算した再生債権の総額が100万円以上500万円以下であれば、小規模個人再生で最低限支払うべき額は100万円とされています(民事再生法231条2項3号)。実務上は、この基準に届いているだけでは足りず、その額を3年間にわたって払い続けられることを家計の資料で裏づけられるかどうかが、認可されるかどうかの分かれ目になります。この事案でも、収入が下がった原因と、下がった後の収入で何をどれだけ支払えるのかを具体的に示せています。住宅ローン以外の借入れがいくらあるのかを早い段階で正確に把握することが、手続選びの出発点になります。
住宅を残したい方に注意していただきたいのが、動き出す時期です。住宅ローンの滞納が続くと、保証会社が金融機関へ代位弁済を行います。この場合、代位弁済の日から6か月を経過する日までに再生手続開始の申立てをしなければ、住宅資金特別条項を定めることができなくなります(民事再生法198条2項)。申立ての準備には資料集めと計画づくりの時間が必要ですので、督促や催告の書面が届いた段階でご相談いただければ、選べる手続の幅が残ります。ご相談前にそろえておくとよい書類や家計の整え方は債務整理の相談前チェックリストのコラム、督促を受けてから差押えを受けた後までの流れは借金問題で動くタイミングを解説したコラムもあわせてご覧ください。
弁護士からのご案内
債務整理のご相談は初回相談無料です。自宅を残したい、家族に知られずに進めたい、督促が止まらないといった段階からでも、どの手続が使えるのか、支払いはいくらになるのかを数字でお示しします。お電話(072-248-4848)またはお問い合わせフォームからご予約ください。取扱いの詳細は債務整理のご案内、ご依頼にかかる費用は費用のご案内にまとめています。
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