【堺 離婚 弁護士】離婚した年の税金と扶養の手続|いつ何を届け出るか
年金分割離婚への公的支援離婚後の生活離婚の話がまとまり、役所に離婚届を出した。ようやく終わったと息をついた数か月後、勤務先から扶養控除等申告書の提出を求められ、健康保険証の返却を告げられ、市役所から「児童扶養手当の申請はお済みですか」という案内が届く。
離婚の年は、手続が一度に押し寄せます。しかも、それぞれ窓口が違い、期限も違います。ひとつ落とすと、受けられたはずの控除が受けられなかったり、手当の支給開始が遅れたりします。
離婚条件の交渉に力を注いだ方ほど、この部分が手薄になりがちです。順序を先に把握しておけば、慌てずに済みます。
この記事のポイント
- 離婚した年に関わる手続は、税金、健康保険と年金、手当の三系統に分かれる。窓口も期限も別なので、系統ごとに押さえると迷いにくい。
- 子を扶養する場合はひとり親控除35万円、子以外の扶養親族がいる場合は寡婦控除27万円が問題になる。どちらに当たるかで金額が変わる。
- 財産分与を受けた側に贈与税は原則かからないが、不動産を渡した側には譲渡所得の課税が生じることがある。渡す側が見落としやすい。
- 年金分割の請求期限は、令和8年4月1日以降の離婚から5年に延びた。それ以前の離婚は2年のままなので、区別して確認する必要がある。ご相談の入口はお問い合わせ、費用の考え方は費用のページに置いています。
目次
- 1 離婚の年に手続が集中する理由
- 2 離婚が決まってから1年間の手続カレンダー
- 3 離婚が成立する前に確保しておきたい書類
- 4 税金|ひとり親控除と寡婦控除のどちらに当たるか
- 5 税金|扶養控除をどちらの親が取るか
- 6 財産分与に税金はかかるか
- 7 養育費と慰謝料に税金はかかるか
- 8 社会保険と年金の切り替え
- 9 見落とされやすい周辺の論点
- 10 手当と就学支援
- 11 別居期間中の税務の扱い
- 12 離婚協議書に入れておきたい税務関連の条項
- 13 期限のある手続を一覧で確認する
- 14 ご相談でよく出てくる誤解
- 15 相手方が非協力な場合にどう進めるか
- 16 当事務所でよくお引き受けするご相談事例
- 17 よくある質問(FAQ)
- 18 堺市で離婚後の手続にお悩みなら田渕総合法律事務所へご相談ください
離婚の年に手続が集中する理由
日本の制度は、税金も社会保険も手当も、原則として「その年の12月31日の状況」や「離婚した日の翌日」といった基準日を置いて判定します。離婚はこの基準を一度に動かすため、複数の制度が同時に切り替わります。
さらに、それぞれの制度は所管が異なります。所得税は税務署、住民税は市町村、健康保険は勤務先または市町村の国民健康保険課、年金は年金事務所、児童手当と児童扶養手当は市町村の子育て関係の窓口です。ひとつの窓口で全部が済む仕組みにはなっていません。
理論上は、離婚届を提出すれば身分関係の変動は公簿に反映され、必要な手続は追って案内されるということになります。実務では、案内が来る制度と来ない制度があり、来る場合でも数か月遅れることがあります。届出をしなければ元の状態のまま処理が進み、後から遡って直す手間が生じます。
離婚が決まってから1年間の手続カレンダー
順序で整理します。以下は一般的な流れで、勤務先の制度や自治体の運用によって前後します。
離婚届の提出と同時期に確認すること
離婚届を出す段階で、子の戸籍と氏をどうするかを決めておく必要があります。母が旧姓に戻り、子を母の戸籍に入れる場合、家庭裁判所へ子の氏の変更許可を申し立て、許可審判書を添えて入籍届を出します。この手続は自動では進みません。
同じ時期に、住民票の異動、印鑑登録、運転免許証や銀行口座の氏名変更が発生します。銀行口座の名義が旧姓に戻らないまま養育費の振込先に指定すると、後で振込エラーの原因になります。
離婚から5日以内から14日以内
会社員だった配偶者の扶養に入っていた方は、健康保険の資格を失います。扶養から外れる手続は相手方の勤務先が行いますが、こちらは新しい保険への加入を自分で進める必要があります。
勤務先で社会保険に加入する場合は勤務先へ、そうでない場合は市町村の国民健康保険へ、原則として資格喪失日から14日以内に届け出ます。国民年金についても、第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更の届出が要ります。
ここで実際によく起こるのが、相手方が資格喪失の手続をなかなか行わず、「健康保険資格喪失証明書」が手元に届かないという事態です。証明書がないと国民健康保険の加入手続が進みません。相手方の勤務先へ直接照会するか、市町村によっては別の書類で代替できる場合があるため、窓口に事情を伝えて相談してください。無保険の期間を作らないことが優先です。
離婚後できるだけ早く
児童手当の受給者変更を行います。それまで父が受給者だった場合、母が受給者になる手続をしなければ、母が監護していても父の口座に振り込まれ続けます。この切替えは自動ではありません。
児童扶養手当は、ひとり親家庭に支給される制度で、申請した月の翌月分から支給されます。遡っての支給は原則としてないため、申請が遅れた分は取り戻せません。所得制限があり、養育費を受け取っている場合はその一部が所得に算入されます。
その年の11月から12月
勤務先で年末調整が行われます。扶養控除等申告書に、ひとり親控除または寡婦控除の該当欄と、扶養親族の記載を反映させます。年の途中で離婚した場合でも、判定は12月31日時点の状況によります。
翌年2月から3月
確定申告の時期です。年末調整で処理しきれなかった控除がある場合、不動産の譲渡があった場合、医療費控除を受ける場合などは確定申告を行います。年末調整で控除の適用を受け忘れたときも、確定申告で是正できます。
翌年6月
住民税の税額が決まり、通知が届きます。住民税は前年の所得に対して課税されるため、離婚した年の所得に基づく住民税は翌年に請求されます。離婚後に収入が下がった方にとって、この時間差が家計を圧迫することがあります。前年の高い所得を基準にした住民税が、収入の減った翌年に来るという構造です。あらかじめ見込んでおいてください。
この時間差は、婚姻費用や養育費の額を検討するときにも影響します。手取りで生活設計を立てる場合、翌年6月以降に住民税の負担が乗ってくることを織り込まないと、初年度の見込みと2年目の実態がずれます。パートで働き始めた方が、2年目になって初めて住民税と社会保険料の負担に直面するという相談は珍しくありません。
離婚が成立する前に確保しておきたい書類
離婚が成立してしまうと、相手方の資料を取り寄せることが難しくなります。まだ同居している、あるいは連絡が取れる段階で手元に置いておきたいものがあります。
相手方の収入資料は、養育費や婚姻費用の算定の基礎になります。源泉徴収票、確定申告書の控え、直近の給与明細が典型です。年金分割の按分割合を決めるには、年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得します。これは離婚前でも請求できます。
不動産については、登記事項証明書、固定資産評価証明書、購入時の売買契約書が要ります。購入時の契約書は、将来その不動産を売却するときの取得費を証明する資料になります。これを失うと、取得費が概算(譲渡収入金額の5パーセント)でしか計算できず、譲渡所得税が大きく膨らむことがあります。財産分与で自宅を受け取る方は、この一点だけでも確保しておく意味があります。
生命保険や学資保険の証券、預貯金の通帳、住宅ローンの残高証明書も、財産分与の対象を確定するために必要です。
理論上は、離婚後であっても弁護士会照会や調停手続の中で資料を取り寄せる方法があります。実務では、任意に開示されなければ手続に数か月を要し、その間に相手方が資産を動かしてしまう例もあります。手元にあるうちに写しを取っておくことの価値は、そこにあります。
税金|ひとり親控除と寡婦控除のどちらに当たるか
離婚後の所得税で最初に確認するのが、この二つの控除です。
ひとり親控除(35万円)
ひとり親控除の額は35万円です。原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと、または配偶者の生死が明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件をすべて満たす方が対象になります(国税庁タックスアンサーNo.1171)。
- 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
- 生計を一にする子がいること(その子の総所得金額等が一定額以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと)
- 合計所得金額が500万円以下であること
この控除は男女を問わず適用されます。父子家庭でも同じ扱いです。
子の所得要件については注意が必要です。従来は総所得金額等48万円以下とされていましたが、令和7年12月1日に施行され令和7年分から適用される金額は58万円以下に引き上げられました。アルバイトをしている高校生や大学生の子がいる場合、この差で結論が変わることがあります。詳しい適用関係は国税庁のひとり親控除のページでご確認ください。
「事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいないこと」という要件も見落とされがちです。離婚後に交際相手と同居している場合、住民票の記載などから該当すると判断される可能性があります。
寡婦控除(27万円)
寡婦控除の額は27万円です。離婚の場合は、「ひとり親」に該当しないことを前提に、夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいて、合計所得金額が500万円以下であることが要件になります(同No.1170)。
ここでの扶養親族は子に限りません。同居して扶養している親などがいる場合も含まれます。生計を一にする子がいればひとり親控除が優先され、子はいないが扶養している親がいるという場合に寡婦控除が問題になる、という関係で整理すると分かりやすいと思います。
なお、死別の場合は扶養親族がいなくても寡婦控除の対象になりますが、離婚の場合は扶養親族が必要です。この違いも混同されやすい部分です。
控除の適用を受け忘れたとき
年末調整で申告し忘れた場合でも、確定申告をすれば適用を受けられます。既に確定申告を済ませている場合は、更正の請求という手続があります。数年前の分について気づいたというご相談も、実際にお受けすることがあります。
給与所得者の場合、年末調整でひとり親控除の欄に記入していなかったというケースが典型です。申告書の様式は毎年少しずつ変わり、該当欄が目立たないこともあります。離婚した年の年末調整では、記入もれがないか一度確認してください。
住民税と非課税限度額への影響
所得控除は所得税だけの話ではありません。住民税にも同様の控除があり、控除額は所得税と異なります。総務省の資料によれば、個人住民税におけるひとり親控除の額は30万円、寡婦控除の額は26万円です(総務省「未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し等」)。
同じ資料には、ひとり親控除と寡婦控除のいずれについても、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある方は対象外になると明記されています。事実上の婚姻関係があるとみられる記載が住民票に残っていないか、確認しておいてください。
さらに、ひとり親に該当する方には住民税の非課税限度額に関する取扱いがあり、一定の所得以下であれば住民税が課されません。住民税が非課税になると、保育料や公営住宅の家賃、医療費の負担上限など、他の制度の判定にも連鎖して影響します。所得税の控除額そのものより、この波及のほうが家計への影響が大きいことがあります。
税金|扶養控除をどちらの親が取るか
子を扶養控除の対象にできるのは、父母のどちらか一方だけです。双方が同じ子について控除を申告することはできません。
判断の基準は「生計を一にしているか」です。同居していれば通常は満たしますが、離れて暮らしていても、生活費や学費を継続的に送っていれば生計を一にすると扱われる余地があります。養育費を継続的に支払っている非監護親が扶養控除を申告できるかは、この点の判断によります。
実務上は、離婚条件を取り決める段階で、扶養控除をどちらが取るかを話し合っておくことをお勧めしています。取り決めがないまま双方が申告し、後から税務署の指摘で一方が修正申告を求められるという事態が起こりうるためです。所得の多い側が控除を受けたほうが世帯全体の手取りは大きくなるので、その分を養育費の額に反映させるという調整も考えられます。
条文の建前では、要件を満たす親が申告できるということになります。現場では、どちらが取るかを書面で決めておかなければ、毎年その都度もめる材料になります。離婚協議書や公正証書に一行入れておくだけで、後の紛争を減らせます。
離婚に伴うお金の全体像については、離婚後の税金・社会保険の見落としがちな落とし穴もあわせてご覧ください。
【弁護士からひとこと】離婚の相談をお受けしていると、慰謝料や財産分与の額には熱心に交渉された方が、扶養控除や年金分割の期限を知らないまま離婚届を出しておられることがあります。手取りで考えると、控除や手当の取りこぼしが年間で数十万円に及ぶこともあります。条件を決める前の段階でご相談いただければ、そこまで含めて設計できます。初回のご相談は30分無料です。お電話は072-248-4848、お問い合わせフォームからもご予約いただけます。
財産分与に税金はかかるか
ご相談で誤解が多いのがこの点です。受け取る側と渡す側で、答えが逆になります。
受け取る側|原則として贈与税はかからない
離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税はかかりません。相手方から贈与を受けたのではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づいて給付を受けたものと考えられるからです(国税庁タックスアンサーNo.4414、相続税基本通達9-8)。
実務書でも、財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であって贈与ではないと説明されています(勝木萌ほか『ケーススタディ 財産分与の実務』日本加除出版、2021年)。
例外は二つです。分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他一切の事情を考慮してもなお多過ぎる場合、その多過ぎる部分に贈与税がかかります。もうひとつは、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合で、この場合はもらった財産すべてに贈与税がかかります。
渡す側|不動産を分与すると譲渡所得の課税がありうる
見落とされやすいのはこちらです。財産分与が土地や建物などで行われたとき、分与した人に譲渡所得の課税が行われます。分与した時の時価が譲渡所得の収入金額となります(同No.3114、所得税基本通達33-1の4ほか)。
金銭を渡したのではなく、自宅を相手に渡しただけなのに税金がかかるという結論に、驚かれる方が多い部分です。理屈としては、財産分与義務という債務を、不動産を渡すことで消滅させたので、その時価で売却したのと同じ扱いになる、ということになります。
購入時より値上がりしている不動産では、実際に課税が生じます。逆に値下がりしていれば譲渡所得は生じません。マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除が使えることもありますが、親族間の譲渡には適用除外があるため、離婚成立の前後どちらで名義を移すかによって扱いが変わります。この判断は税額に直結するので、実行前に確認が必要です。
なお、分与を受けた側は、分与を受けた日にその時の時価で取得したことになります。将来その不動産を売却するときの取得費と、長期譲渡か短期譲渡かの判定は、この日を基準にします。詳細は国税庁の該当ページに整理されています。
住宅ローンが残っている場合の処理は、税金だけでなく金融機関との関係も絡みます。離婚時の不動産・住宅ローン対策、財産分与に税金がかかる3つのケースもご参照ください。
なお、個別の税額計算や申告書の作成は税理士の業務です。当事務所では、財産分与の設計にあたって課税リスクの所在をご説明したうえで、必要に応じて税理士と連携して進めています。実際の申告は税務署または税理士にご確認ください。
養育費と慰謝料に税金はかかるか
養育費は、扶養義務者相互間で生活費や教育費に充てるために給付される金銭であり、通常必要と認められる範囲であれば贈与税の課税対象になりません。受け取った側の所得税の対象にもなりません。
ただし、注意点があります。養育費を一括で受け取り、その金額が通常必要と認められる範囲を超えると評価される場合や、受け取った金銭を預金したり不動産の購入資金に充てたりした場合には、贈与税の対象となりうると説明されています。分割払いが原則である理由のひとつがここにあります。
慰謝料についても、精神的損害に対する賠償として社会通念上相当な範囲であれば、原則として課税されません。過大と評価される場合には、超える部分について贈与税の問題が生じます。
養育費の取り決めと変更については、養育費増額調停とはで手続の流れを整理しています。
社会保険と年金の切り替え
健康保険
相手方の被扶養者だった場合、離婚により資格を失います。勤務先の社会保険に入るか、国民健康保険に加入するかのいずれかです。子の健康保険をどちらの親の側に置くかも決める必要があります。監護している親の側に移すのが通常ですが、相手方の健康保険に子を残したまま、保険料の負担だけ相手方が続けるという取り決めをする例もあります。
国民年金
第3号被保険者だった方は、第1号被保険者への種別変更が必要です。この届出をしないと、未納期間として記録され、将来の年金額に影響します。保険料の納付が困難な場合は、免除や納付猶予の申請ができます。申請をせずに放置するのと、免除を受けるのとでは、受給資格期間の扱いが変わります。
年金分割の請求期限が5年に延びた
婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける手続が年金分割です。ここで、期限の取扱いが最近変わりました。
日本年金機構の案内によれば、令和8年4月に、民法における離婚時の財産分与請求権の除斥期間が2年から5年に変更されたことを踏まえ、令和8年4月から、離婚時の年金分割の請求期限についても、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき2年から5年に変更されました。変更後の請求期限は令和8年4月1日以降に離婚等をした場合に適用され、同日前に離婚等をした場合は従前どおり2年以内に請求する必要があります(日本年金機構「離婚時の年金分割の請求期限が改正されました」)。
つまり、いつ離婚したかで期限が変わります。令和8年3月31日以前に離婚された方は2年のままなので、既に期限が迫っている、あるいは過ぎている可能性があります。心当たりのある方は、日付を確認してください。
期限を過ぎると請求できなくなる点は変わりません。合意分割の場合、按分割合について合意ができなければ家庭裁判所の手続を経る必要があり、その時間も見込んでおく必要があります。条文上は按分割合の上限が0.5と定められているにとどまりますが、裁判所の運用では0.5とする例が大半です。年金分割の仕組みについては、専業主婦は夫の年金を受け取れるかで条件と手続を説明しています。
合意分割と3号分割の違い
年金分割には二つの制度があり、混同されることがあります。
合意分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録全体を対象に、当事者の合意または裁判所の手続で按分割合を決める制度です。相手方の同意か、裁判所の判断が要ります。
3号分割は、国民年金の第3号被保険者であった期間のうち平成20年4月1日以後の分について、相手方の同意なしに2分の1の分割を請求できる制度です。同意が不要という点で使いやすい反面、対象となる期間が限られます。婚姻期間が平成20年より前から続いている場合、その前の期間は3号分割の対象外です。
婚姻期間が長い方ほど、3号分割だけでは対象期間の一部しかカバーできません。教科書的には両制度を組み合わせて請求することになりますが、実務では、まず情報通知書で対象期間と分割後の見込み額を確認し、合意分割の交渉に労力を割く価値があるかを判断します。分割後に増える年金額が月額で数千円という試算になる場合もあり、交渉のコストと見合うかを冷静に見る必要があります。
見落とされやすい周辺の論点
税金と社会保険の本体からは外れますが、離婚の年に問題になりやすい点をいくつか挙げます。
生命保険と学資保険の契約者変更
契約者、被保険者、受取人がそれぞれ誰かによって、扱いが変わります。契約者を変更しただけでは、その時点で課税は生じません。課税が問題になるのは、保険金や解約返戻金を受け取る時点です。
学資保険を財産分与の対象とする場合、解約して返戻金を分けるのか、契約者を変更して子の進学時まで継続するのかで、結論が変わります。継続する場合は、保険料を今後どちらが負担するかまで取り決めておかないと、支払いが滞って失効するという事態が起こります。
受取人の変更も忘れられがちです。離婚後も元配偶者が受取人のままになっている保険は、実際に少なくありません。
医療費控除
離婚した年に高額な医療費を支払った場合、医療費控除の対象になります。生計を一にしていた期間に支払った家族分の医療費も、支払った人が控除を受けられます。年の途中で離婚した場合、同居していた期間に支払った子の医療費をどちらが控除するかが問題になりえます。領収書を保管しておいてください。
婚姻費用の清算
別居期間中の婚姻費用に未払いがある場合、離婚時に清算します。婚姻費用は扶養義務に基づく給付であるため、受け取っても課税されないのが原則です。もっとも、離婚時に過去の未払分をまとめて受け取る形にすると、財産分与との区別が曖昧になり、後で性質が争われることがあります。合意書のなかで、どの部分が未払婚姻費用の清算で、どの部分が財産分与かを書き分けておくのが安全です。
手当と就学支援
児童手当
中学校卒業前などの一定の年齢までの子を養育する方に支給される制度です。離婚に伴って必要になるのは、受給者の変更手続です。父が受給者として登録されたままだと、母が子を監護していても父の口座に振り込まれ続けます。別居の段階でも、生計を同じくしていないことを示す資料があれば、監護している側へ受給者を変更できる場合があります。
児童扶養手当
ひとり親家庭に支給される制度で、児童手当とは別のものです。名前が似ているため混同されますが、要件も金額も窓口の扱いも異なります。
注意すべき点が二つあります。申請した月の翌月分からの支給で、遡及支給は原則としてないこと。そして、所得制限があり、養育費を受け取っている場合はその一定割合が所得に算入されることです。
制度の建前では、養育費は子のために支払われるものですから、これを所得に算入すると手当が減るのは筋が通らないようにも見えます。制度の設計としては、養育費と手当の合計で生活を支える前提が取られており、実際の窓口でも算入した金額で判定されます。養育費の額を決めるときに、手当への影響まで視野に入れて設計しておくと、手取りの総額が変わります。
そのほかの支援制度
自治体によって、ひとり親家庭等医療費助成、就学援助、保育料の減免、公営住宅の優先入居、JR通勤定期券の割引などの制度があります。内容と要件は自治体ごとに異なるため、堺市内であれば市の窓口で確認してください。国民年金保険料の免除や、住民税の非課税判定にも関わります。
制度が多いので、離婚の直後にまとめて窓口へ行き、対象になりそうなものを一度に確認しておくのが効率的です。市役所の子育て関係の窓口で「離婚したので使える制度を一通り知りたい」と伝えれば、該当しそうなものを案内してもらえます。
別居期間中の税務の扱い
離婚が成立する前の別居期間についても、確認しておきたい点があります。
配偶者控除や配偶者特別控除は、法律上の婚姻関係があることが前提です。別居していても離婚が成立していなければ、生計を一にしていると認められる限り、控除の対象になりえます。婚姻費用を継続して送金している場合、生計を一にしていると評価される方向に働きます。
離婚が年内に成立するかどうかで、その年の扱いが変わります。12月31日時点で婚姻関係が続いていれば配偶者控除の問題として、離婚が成立していればひとり親控除や寡婦控除の問題として整理されます。年末が近い時期に離婚の話が進んでいる場合、成立日が年内か年明けかで一年分の控除の組み合わせが変わることがあります。
理論上は、税負担の有利不利を考えて離婚の時期を選ぶことも可能です。実務では、離婚を急ぐ事情や、相手方の同意が得られる時機のほうが優先されることがほとんどで、税だけを理由に時期を動かせる場面は多くありません。時期が選べる状況であれば検討する価値がある、という程度に受け止めていただくのが現実的です。
離婚協議書に入れておきたい税務関連の条項
後の紛争を防ぐという観点から、協議書や公正証書に入れておくとよい事項を挙げます。
扶養控除をどちらの親が受けるかは、必ず書いてください。年ごとに交代する取り決めも可能です。
不動産を財産分与する場合は、名義変更の時期、登記費用の負担、譲渡所得税が生じたときの負担者を明記します。渡す側に課税が生じうることを双方が理解したうえで合意しているか、という点が後の争いを分けます。
養育費については、金額と支払期間に加えて、支払方法を分割とすることを明記します。一括で受け取る形にすると贈与税の問題が生じうるためです。
未払いの婚姻費用を清算する場合は、財産分与とは別の項目として金額を分けて記載します。性質が異なるものを一つの金額にまとめると、後から課税の扱いや清算条項の及ぶ範囲が争われます。
年金分割については、按分割合と、標準報酬改定請求を行う旨を記載します。協議離婚で公正証書を作成する場合、年金分割の合意を公正証書に記載しておけば、年金事務所での手続を一方が単独で行えます。この一手間を惜しむと、後日相手方の協力を得られず、家庭裁判所の手続が必要になることがあります。
期限のある手続を一覧で確認する
期限のあるものだけを抜き出します。
- 健康保険の切替え|資格喪失日から原則14日以内(国民健康保険の場合)
- 国民年金の種別変更|資格喪失後速やかに
- 児童扶養手当|申請月の翌月分から支給。遡及なし
- 年金分割|令和8年4月1日以降の離婚は5年以内、同日前の離婚は2年以内
- 財産分与|民法上の除斥期間が2年から5年に変更(令和8年4月の改正)
- 確定申告|原則として翌年3月15日まで
- 子の氏の変更許可|期限の定めはないが、就学など生活の節目に合わせて早めに
財産分与や年金分割は、離婚時に取り決めていなくても後から請求できますが、期間の制限があります。離婚を急いだために条件を決めきれなかったという場合、この期間内に動く必要があります。離婚後の財産分与請求については、離婚後に財産分与は請求できるかで手続を整理しています。
ご相談でよく出てくる誤解
同じ思い違いを、繰り返し伺います。先に挙げておきます。
「財産分与でもらう側に税金がかかる」という誤解は、最も多いものです。実際は逆で、原則として受け取る側に贈与税はかからず、不動産を渡した側に譲渡所得の課税が生じることがあります。渡す側が想定していなかった負担に直面し、合意が覆るという展開が起こります。
「離婚したら自動的に手続が進む」という思い込みも根強くあります。離婚届の提出で身分関係は変わりますが、健康保険の切替え、児童手当の受給者変更、年金の種別変更、扶養控除の申告は、いずれも別々に届け出る必要があります。届け出なければ、元の状態のまま処理が続きます。
「養育費をもらうと手当が減るから受け取らないほうがよい」と考える方もおられます。児童扶養手当の判定で養育費の一定割合が所得に算入されるのは事実ですが、養育費の全額が手当から差し引かれるわけではありません。受け取らない選択をすると、手取りの総額はかえって減ります。
「年金分割をすれば夫の年金の半分がもらえる」という理解も、正確ではありません。分割の対象は婚姻期間中の厚生年金の記録に限られ、基礎年金部分や婚姻前の期間は対象外です。分割後に実際に増える額は、事前に情報通知書で確認できます。
「相手が手続に協力しないから何もできない」と諦めておられる方もあります。年金分割は家庭裁判所の手続で按分割合を定められますし、健康保険についても市町村の窓口で代替の方法を相談できます。相手方の協力が得られない場合の道筋は、制度上用意されています。
相手方が非協力な場合にどう進めるか
離婚後の手続でつまずくのは、多くの場合、相手方の協力が要る場面です。
健康保険の資格喪失証明書が届かないという相談は頻繁にあります。相手方の勤務先に直接連絡して発行を依頼する方法のほか、市町村によっては、離婚が記載された戸籍謄本や、扶養から外れた事実を示す資料で加入手続を進められることがあります。窓口で事情を説明してください。無保険の期間を作らないことが最優先で、書類が後から届いた時点で整えれば足ります。
年金分割で按分割合の合意ができない場合は、家庭裁判所へ按分割合を定める処分を申し立てます。期限内に申立てをしておけば、手続中に期限が到来しても救済されます。期限が迫っている場合、合意の交渉より先に申立てを検討することがあります。
養育費が支払われない場合は、取り決めの形式によって取れる手段が変わります。公正証書に執行認諾文言があれば、あらためて裁判をせずに給与などの差押えを申し立てられます。調停調書や審判書がある場合も同様です。口約束しかない場合は、まず調停で取り決めを作るところから始めます。取り決めの有無が、後の回収可能性を大きく分けます。
不動産の名義変更に相手方が応じない場合、財産分与を命じる審判や判決を得たうえで、単独で登記を申請する方法があります。時間はかかりますが、手段はあります。
当事務所でよくお引き受けするご相談事例
ここで挙げるのは、これまでにお受けした複数のご相談に共通する要素をまとめ、個人が特定されない形に一般化したものです。事情が異なれば結論も変わりますので、同じ結果をお約束するものではありません。
自宅の名義変更と課税をめぐるご相談は毎年お受けします。堺市内にお住まいの50代の方で、夫名義の自宅を財産分与で受け取る内容の協議が進んでいました。ご本人は「もらう側だから税金はかからない」と理解しておられましたが、渡す側である夫に譲渡所得の課税が生じる可能性があり、夫がその負担を知った段階で協議が振り出しに戻る危険がありました。名義を移すタイミングと、税負担をどちらがどう分担するかを条件に組み込んだうえで合意に至っています。
扶養控除の取り決めが抜けていた事案もあります。協議離婚が成立して2年が経ち、父母の双方が同じ子について扶養控除を申告していたことが判明したというご相談でした。税務署からの照会をきっかけに、どちらが控除を受けるかを改めて協議することになりました。離婚協議書に一行入れておけば避けられた紛争です。以後、協議書の作成をお手伝いする際は、扶養控除の帰属を条項に入れるようにしています。
年金分割の期限が問題になった事案では、日付の確認が出発点でした。離婚から1年半が経過した段階でご相談を受け、当時の制度では2年の期限が適用される時期の離婚でした。按分割合について相手方の同意が得られなかったため、家庭裁判所の手続を選択し、期限内に申立てを行っています。期限が5年に延びた現在も、離婚の日がいつかによって適用される期限が異なるため、最初に確認するようにしています。
健康保険の空白期間が生じた事案もありました。相手方が資格喪失の手続を行わず、証明書が届かないまま2か月が経過し、その間にお子さんが受診したという状況でした。市町村の窓口に事情を説明し、代替書類で加入手続を進めたうえで、遡って適用を受けています。医療費の自己負担分は後日還付されました。手続の遅れは、相手方の非協力によって生じることがあります。
児童扶養手当の申請が遅れたご相談では、取り戻せない部分がありました。離婚から8か月後に制度の存在を知り、申請されたという経緯です。遡っての支給は原則としてないため、その8か月分は受けられませんでした。ご相談の際は、養育費の増額交渉とあわせて家計の再設計をお手伝いしましたが、早く知っていれば防げた損失です。離婚の直後に一度窓口を回っていただきたいと申し上げているのは、こうした事案があるからです。
学資保険の扱いを決めていなかった事案も印象に残っています。契約者が父、被保険者が子、保険料の引落口座も父名義のまま離婚が成立し、その後に支払いが止まって失効寸前になっていました。財産分与の合意書に保険の記載がなく、誰が払い続けるのかが決まっていなかったことが原因です。契約者を母へ変更し、以後の保険料負担を養育費とは別に取り決める形で整理しました。合意書の一行が抜けると、数年後に子の進学資金が消えることがあります。
よくある質問(FAQ)
離婚した年の税金の手続は年末調整と確定申告のどちらですか
給与所得のみで、ひとり親控除や扶養控除の適用を勤務先に申告できる場合は、年末調整で完結します。年末調整で申告し忘れた場合、不動産の譲渡があった場合、医療費控除を受ける場合などは確定申告が必要です。判定は12月31日時点の状況によるため、年の途中で離婚した場合もその年から適用されます。
財産分与でお金を受け取ると税金がかかりますか
原則としてかかりません。財産分与請求権に基づく給付であり、贈与ではないと考えられているためです。ただし、分与額が夫婦の協力で得た財産の額などに照らして多過ぎる場合はその超過部分に、租税を免れるための離婚と認められる場合は全額に、贈与税がかかります。なお不動産で分与を受けた場合、渡した側に譲渡所得の課税が生じることがあります。
ひとり親控除と寡婦控除はどちらが適用されますか
生計を一にする子がいて所得等の要件を満たす場合はひとり親控除(35万円)が適用され、寡婦控除には該当しません。子はいないが扶養している親族がいて合計所得金額500万円以下という場合に寡婦控除(27万円)が問題になります。いずれも、事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいる場合は対象外です。
年金分割はいつまでに請求すればよいですか
令和8年4月1日以降に離婚等をした場合は5年以内、同日前に離婚等をした場合は従前どおり2年以内です。令和8年4月からの改正で2年から5年に変更されましたが、変更後の期限が適用されるのは同日以降の離婚に限られます。ご自身の離婚日がいつかで結論が変わるため、まず日付を確認してください。
養育費を受け取ると所得税や贈与税がかかりますか
扶養義務者相互間で生活費や教育費に充てるために給付され、通常必要と認められる範囲であれば課税されません。ただし一括で受け取った場合や、受け取った金銭を預金や不動産購入に充てた場合には、贈与税の対象となりうると説明されています。分割払いを原則とする理由のひとつです。
堺市で離婚後の手続にお悩みなら田渕総合法律事務所へご相談ください
離婚の年は、税金、健康保険と年金、手当という三つの系統で手続が重なります。窓口も期限も別々で、案内が来ない制度もあります。ひとり親控除と寡婦控除のどちらに当たるか、扶養控除をどちらの親が取るか、不動産を分与したときに誰に課税が生じるか、年金分割の期限は2年か5年か。ここを離婚条件の交渉と切り離して考えると、手取りで損をします。
当事務所は、堺東駅から徒歩5分の場所で離婚のご相談をお受けしています。協議、調停、訴訟のいずれの段階にも対応し、財産分与や年金分割の設計では、課税の所在を確認したうえで条件を組み立てます。必要に応じて税理士と連携し、名義を移す時期まで含めてご提案します。離婚後に手続の抜けが判明した場合も、取り戻せるものが残っていることがあります。
離婚の条件を決める前でも、離婚が成立した後でも、気づいた時点でご相談ください。初回のご相談は30分無料です。お電話は072-248-4848、ご予約はお問い合わせフォームから承ります。費用の考え方は費用のご案内にまとめています。
弁護士監修:田渕総合法律事務所

◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)
<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター
<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)
<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)
<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)
◆ ホームページ
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【ココナラ法律相談】
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