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離婚時の財産分与における退職金の扱い|堺市の弁護士が計算方法と請求のポイントを徹底解説

離婚時に退職金は財産分与の対象になるのか?

大阪府堺市にお住まいの方で、離婚を考えた際、相手またはご自身の勤務先から将来受け取る予定の退職金、あるいは既に受け取った退職金が財産分与の対象になるのかどうか疑問に感じる方は非常に多いです。結論から申し上げると、退職金は原則として財産分与の対象になります。

しかし、「給料」とは異なり、退職金は将来の不確実な要素が多く、また夫婦が協力して築いた財産としての性質と、個人の功労による報酬としての性質が混在しているため、その計算方法や判断基準は複雑です。特に、まだ退職金を受け取っていない「将来の退職金」について、どのように分与対象とするかが大きな争点になりがちです。

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が共同で形成・維持してきた財産を清算する手続きです。退職金は、長年の勤労の対価として支給されるものであり、その勤労が婚姻生活を支える経済的基盤となっていたと評価できるため、財産分与の対象財産と見なされます。

ただし、どのような場合でも全額が対象となるわけではありません。その全額が対象となるのは、既に退職金として受け取り済みで、明確な財産として現存している場合です。まだ受け取っていない「将来の退職金」については、裁判所はいくつかの要素を考慮して分与の対象とするか、またその割合を決定します。この判断基準や具体的な計算方法こそが、弁護士の専門性が問われる部分となります。

退職金を財産分与する際の法的判断基準

退職金を財産分与の対象と認めるかどうかは、その退職金が「いつ」「どのような状況」で発生するかに大きく左右されます。裁判所が主に考慮する判断基準は以下の3つのパターンに分類できます。

既に退職金を受け取っている場合

離婚時に既に退職金を受け取り、そのお金が預金として残っている、または不動産や株式などに形を変えて残っている場合は、明確な現存財産として全額が財産分与の対象となります。

ただし、その全額が婚姻期間中に貯蓄されたものとは限りません。例えば、退職金のうちの一部を浪費してしまっている場合や、夫婦共有財産とは別の目的で使われていることが明確な場合など、その現存額が争点になることがあります。原則として、離婚時の残額が対象となりますが、その財産の形成過程を丹念に追跡調査することが重要となります。

既に退職しているが、退職金を受け取っていない場合(最も分与が認められやすいケース)

例えば、離婚成立時に相手が既に退職しているが、会社の規定により退職金の支払いが数年後になるというケースです。この場合、退職金を受け取る権利(退職金請求権)は既に確定しています。

したがって、退職金の額は確定しており、将来的に確実に入手できる財産として、離婚時の基準額に基づいて財産分与の対象とされます。このケースでは、未払いであっても財産分与が認められる可能性が最も高いです。

将来退職予定で、まだ在職中の場合(最も複雑なケース)

これが最も多く、かつ争いになりやすいケースです。相手がまだ勤務中で、退職金の支給が将来の不確実な事柄である場合です。

この場合、裁判所は以下の要素を総合的に判断し、財産分与の対象とするか、そしてどの程度の割合を対象とするかを決定します。

  • 退職金の受給の確実性: 勤務先が公務員や大企業など、退職金規定が確立しており、倒産のリスクが極めて低い場合、受給の確実性が高いと判断されます。

  • 離婚時までの勤続年数: 婚姻期間中に勤務していた期間が長いほど、退職金が夫婦の協力によって形成された財産であるという評価が強くなります。

  • 退職までの残りの期間: 離婚から定年退職までの期間が短い(概ね10年以内)ほど、将来の退職金が現実味を帯びていると判断され、財産分与の対象とされやすくなります。逆に、勤続年数が浅く、退職まで数十年ある場合は、不確実性が高いとして分与が認められないか、認められても非常に少ない額にとどまることがあります。

特に、堺市のように製造業や歴史ある企業が多く、長年の勤続が一般的な地域では、この退職金の取り扱いは大きな争点になりえます。

退職金の財産分与の計算方法

将来退職予定の退職金を財産分与の対象とする場合、その計算方法には特殊なルールがあります。

基本的な計算の枠組みは、「①対象とする退職金総額」を算出し、「②寄与割合(貢献度)を考慮し」、「③その半分(2分の1)を分与する」という流れです。

① 分与対象とする退職金総額の算出方法

将来の退職金について分与を認める場合、実務上は主に以下の2つの方法で「分与対象額」を算定します。

A. 離婚時基準の仮定額(自己都合退職金基準)

最も一般的な方法は、「もし相手が離婚時に自己都合で退職した場合、いくらの退職金を受け取れるか」を計算の基準とすることです。

  • メリット: 離婚時に額が確定するため、公平性が保たれます。

  • デメリット: 定年退職金よりも大幅に少ない額になることが通常です。

B. 定年時退職金の按分割合(全期間に対する婚姻期間の割合)

勤務先が公務員や、受給の確実性が高い大企業の場合で、かつ定年が近い(概ね10年以内)場合に採用されることがある方法です。将来の定年時退職金を基準とし、婚姻期間中に該当する部分のみを分与の対象とします。

この方法は、特に離婚後も相手が長期間勤務を継続し、その後に高額な退職金を受け取る予定である場合に、公平性を保つために採用されることがあります。

② 婚姻期間の寄与割合(貢献度)を考慮

上記で算出した「分与対象とする退職金総額」は、あくまで退職金の全体における分与対象となる「元本」です。この元本に対して、婚姻期間中の寄与割合をかけます。

  • 基本的な考え方: 夫婦が共同で形成した財産であるため、原則は2分の1(50%)です。

  • 例外的な調整: 非常に稀ですが、退職金が相手の特段の功労や努力、あるいは相続した財産などを原資とした自己投資によって形成された場合など、特殊な事情がある場合にのみ、寄与割合が調整される可能性があります。しかし、実務上、退職金についてこの割合が変更されるケースは多くありません。

③ 最終的な分与額の計算

最終的に分与される額は、以下の計算式で求められます。

請求できる分与額 = 分与対象とする退職金総額×婚姻期間の寄与割合×1/2

(※ここで、多くの場合「婚姻期間の寄与割合」が100%と見なされ、計算式が簡略化されることがあります。)

財産分与で退職金を確保するための実務上の重要ポイント(堺市地域特性も考慮)

退職金の財産分与を有利に進めるためには、以下の実務的なポイントを押さえることが不可欠です。特に、堺市のように規模の大きな企業や公的機関が多数存在する地域では、会社の規模や退職金規定の確認が重要となります。

証拠資料の確保(最重要)

退職金請求の第一歩は、その金額と規定を証明することです。相手の勤務先から以下の資料を入手することが必須です。

  • 退職金規定: 勤務先の就業規則や退職金規程の写し。これにより、支給要件、計算式、定年退職金と自己都合退職金の差などが分かります。

  • 退職金の試算額証明書: 勤務先に対し、「現在自己都合で退職した場合の退職金見込額」または「定年まで勤めた場合の退職金見込額」を証明してもらう資料です。相手が協力的でない場合、弁護士会を通じて照会手続き(23条照会)を行う必要があり、この手続きには専門知識が欠かせません。

  • 給与明細、源泉徴収票: 勤続年数や昇給の状況を把握し、退職金規定と照らし合わせるために利用します。

これらの資料がなければ、裁判所は退職金が存在するか、いくらになるのかを判断できず、請求が認められなくなってしまうリスクがあります。

弁護士による情報収集能力と交渉力

退職金に関する情報は、プライベートなものであり、相手が任意で開示を拒否することが非常に多いです。

  • 弁護士会照会(23条照会): 相手が勤務先に退職金の試算額を問い合わせることを拒否した場合、弁護士は弁護士法23条に基づき、勤務先に対して直接退職金規定や試算額の回答を求めることができます。この手続きは、一般の方が自力で行うことはできません。

  • 裁判所の手続き: 訴訟になった場合、裁判所を通じて「文書提出命令」や「調査嘱託」などの手続きを利用して、強制的に資料を提出させる必要があります。

  • 交渉によるメリット提示: 例えば、退職金請求を主張する代わりに、その他の財産(不動産や預貯金)の分与割合を優遇することで合意を促すなど、全体最適を見据えた交渉戦術が必要です。

将来の支給時に受け取る方法の検討

特に相手の退職が遠い将来(例えば5年後や10年後)である場合、財産分与の請求権を**「現在」**にどのように実現するかが問題になります。

  • 即時清算方式:

    • 方法: 離婚時に退職金の仮定額を算出し、その額を現金で今すぐ支払ってもらう方法です。

    • メリット: 確実に今、財産分与を完了できます。

    • 課題: 相手に退職金相当額を支払えるだけの十分な現預金がない場合、利用できません。

  • 支給時清算方式:

    • 方法: 「将来、相手が実際に退職金を受け取った時に、その時の額に基づいて計算した分与額を支払う」という取り決めを公正証書や調停調書に残しておく方法です。

    • メリット: 相手の現預金が少なくても成立します。

    • 課題: 10年後などに確実に支払われるかという不確実性が残ります。相手の連絡先が変わったり、相手が取り決めを忘れたり、拒否したりするリスクを伴います。

離婚後の紛争を避けるためにも、できる限り「即時清算方式」で、退職金を他の財産と合わせて清算することを目指すべきです。当事務所では、依頼者様の生活再建を最優先に考え、退職金の取り扱いについて最も確実性の高い解決方法を提案いたします。

過去の事例と専門サイトコラムのご紹介

当事務所では、これまで堺市および近隣地域にお住まいの多くのご依頼者様の財産分与問題を取り扱ってまいりました。退職金の財産分与は、ただ計算式に当てはめるだけでなく、相手の勤務状況、婚姻期間、その他の財産の有無など、総合的な事情を考慮して、依頼者様にとって最大限有利な結果を導き出すことが重要です。

例えば、相手が公務員で退職金が確定的な場合と、中小企業の役員で退職金が不確実な場合では、交渉の進め方や裁判での主張の組み立て方を大きく変える必要があります。

退職金以外の不動産や保険の財産分与についても疑問をお持ちの方は、ぜひ以下のコラムもご参照ください。財産分与の全体像を把握することで、退職金の交渉をより有利に進めることができます。

離婚問題は、その後の人生設計に大きく影響を与える重要な決断です。特に財産分与は、将来の生活基盤を築くための清算手続きであり、適正な権利行使が不可欠です。感情的な対立だけでなく、冷静な法的・経済的な分析に基づいた解決を目指しましょう。

堺市での離婚相談はお気軽にお問い合わせください

当事務所は、大阪府堺市を中心に、地域に密着した法律サービスを提供しております。退職金の財産分与は、専門的な知識と豊富な実務経験が結果を大きく左右します。

相手方が退職金に関する情報の開示を拒否している、計算方法について合意ができない、将来の不確実な権利をどのように確保すれば良いか分からないなど、ご不安な点があれば、お一人で悩まずにぜひ一度ご相談ください。

弁護士があなたの状況を丁寧にヒアリングし、証拠収集から交渉、裁判手続きまで、依頼者様にとって最善の解決策を提案し、その実現に向けて最後まで尽力いたします。

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この記事の監修者

田渕 大介弁護士 (大阪弁護士会所属)

TABUCHI DAISUKE

◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)

<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター

<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)

<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)

<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)

◆ ホームページ
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