離婚の財産分与に退職金は含まれる?計算方法や請求の流れを解説
財産分与退職金と年金分割離婚する際は、夫婦が婚姻中に築いた財産を公平に分配します。しかし、そこに退職金が含まれるのか、疑問を持つ方もいるでしょう。特に熟年離婚の場合、長年積み立てられた退職金は重要な資産であるため、その取り扱い方を正しく知っておく必要があります。
この記事では、離婚時の財産分与において、退職金が含まれるケースや計算方法について解説します。
目次
離婚の財産分与に退職金は含まれる?
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が築き上げた財産です。具体的には、家や土地などの不動産、預貯金、年金などを指し、その中には退職金も含まれます。ここでは、退職金が財産分与の対象になる理由、対象期間について解説します。
基本的には退職金も財産分与の対象
退職金は「給与の後払い」的な性質があると考えられており、基本的には財産分与の対象です。たとえ実際に受け取っていない将来の退職金であっても、財産分与の対象となる場合があります。
とはいえ、退職金は退職時に支払われるものであり、会社の経営状況や退職理由次第では、支払われない可能性もあるでしょう。
退職金が財産分与の対象になるかどうかの判断基準は「確実性」です。退職金が会社から支払われる見込みが低い場合は、財産分与の対象として認められない可能性があります。
財産分与の対象となる期間
財産分与の対象となる期間は、「働いていた期間」と「婚姻期間」の重なる部分です。例えば、夫が30年間勤務した中で15年間が婚姻期間だった場合、その15年間分が分与対象とされる可能性があります。つまり、婚姻期間が長いほど、退職金の分与割合も大きくなります。
【タイミング別】離婚の財産分与に退職金が含まれるケース
離婚の財産分与に「退職金」が含まれるかどうか、さらに詳しく見ていきましょう。ここでは、退職金がすでに会社から支払われているケースと、まだ支払われていないケースの2つのタイミングに分けて解説します。
退職金が支払われている場合
退職金がすでに会社から支払われている場合、手元に退職金が残っていれば、婚姻期間と勤続年数が重なる部分が財産分与の対象となり得ます。
一方、「何年も前に受け取った退職金を使い切ってしまった」といった、手元に退職金が残っていない場合は、財産分与の対象外です。
また、退職金を口座に入れて管理していた場合、「残高のうち、いくらが退職金なのか分からなくなった」というケースもあるでしょう。その場合、残高すべてが財産分与の対象となる可能性もゼロではありません。退職金のみ分ける場合は、通帳の取引履歴の内訳を明らかにする必要があります。
まだ退職金が支払われていない場合
退職金がまだ支払われていない場合は、将来支給される見込み額を基に分与対象額を計算するのが一般的です。とはいえ、将来、退職金が支払われる可能性が低い場合は、財産分与の対象とはなりません。
「退職金が支払われる可能性」は、会社の就業規則や将来性、これまでの勤務状況など、さまざまな面を考慮されます。また、「若年離婚」のように定年退職までの期間が長い場合、退職金の分与を早い段階で認めるのは不適切とされ、財産分与の対象外となる可能性があります。
離婚の財産分与|退職金の計算方法
財産分与の割合は原則2分の1です。しかし、個別具体的な事情によって計算方法は異なるため、詳細は専門家に計算してもらう必要があります。ここでは、一般的な退職金の計算方法を紹介しますので、あくまでも目安として参考にしてみてください。
財産分与の計算方法の解説については、次の記事を参考になさってください。
参考記事:離婚の財産分与の計算方法とポイント
なお、財産分与と税金に関することについては、次の記事を参考になさってください。
参考記事:離婚時の財産分与に税金がかかる3つのケース|節税の方法とは?
退職金が支払われている場合
退職金がすでに支給されている場合、以下の計算式に基づいて財産分与の対象額を算出します。
・財産分与の対象額 = 支払われた退職金 × 婚姻期間 ÷ 在職期間
以下は、支払われた退職金が1,000万円、在職期間が20年、婚姻期間が10年の場合の計算例です。
・1,000万円(支払われた退職金) × 10年(婚姻期間) ÷ 20年(在職期間) = 500万円(財産分与の対象額)
財産分与は原則2分の1です。つまり、財産分与の対象額である500万円を分割した250万円が請求できる金額です。
まだ退職金が支払われていない場合
退職金がまだ会社から支払われていない場合、支給額が不確定であるため、見込み額を基にした計算が必要です。計算方法や考え方はいくつかありますが、ここでは、代表的な2つの計算方法を紹介します。
【計算方法1.定年退職時に受け取る予定の退職金で計算する方法】
・財産分与の対象額 = 定年退職時に受取予定の退職金 – 結婚前に働いた分と離婚後に働く予定分の退職金 – 中間利息
上記の「中間利息」とは、将来受け取るお金を前払いしてもらう場合に、将来にわたって発生するはずの利息分のことです。上記の計算方法では、将来受け取る退職金を早く受け取ることとなるため、中間利息を差し引く必要があります。
【計算方法2.現時点で退職したと仮定して計算する方法】
・財産分与の対象額 = 現時点で退職した場合に受け取る退職金 × 婚姻期間 ÷ 在職期間
上記の「現時点」とは、基本的に「離婚した時点」のことを指します。しかし、離婚前に別居している場合は「別居した時点」となります。
離婚の財産分与|退職金を請求する流れ
離婚の財産分与をどのように進めればよいのか分からない方も多くいるでしょう。ここでは、離婚時の退職金を請求する流れについて解説します。
協議離婚
協議離婚は、夫婦間で話し合って離婚条件を決める方法です。夫婦双方が離婚条件に合意すれば、役所に離婚届を提出することで離婚が成立します。
まずは退職金の分与額について夫婦で話し合ってみてください。話し合いであれば、分与の割合も自由に決められ、法的手続きも不要です。話がまとまったら、後々のトラブルを防ぐために離婚協議書を作成し、その旨を記載しましょう。
調停離婚
協議離婚で合意に至らない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。離婚調停では、調停委員を介して離婚条件の話し合いをします。相手と直接顔を合わせずに済むため、冷静に話し合いを進めやすい点がメリットです。
協議離婚と調停離婚のどちらを選択すべきかについては、次の記事を参考になさってください。
裁判離婚
調停でも合意できない場合、最終的に裁判による離婚手続きとなります。裁判では、裁判所が証拠に基づき退職金の分与額を判断します。裁判になれば決着までに時間がかかりやすく、費用も高額になる点に注意が必要です。
離婚の財産分与|退職金の使い込みを防ぐために「仮差押え」も検討しよう
離婚の財産分与の話し合いを進める際には、相手が退職金を使い込んでしまうリスクを防ぐため、仮差押えを検討しましょう。仮差押えとは、一時的に相手の財産を動かせないようにする法的な手続きのことです。特に退職金が高額な場合や、相手が財産を隠蔽しそうな場合は仮差押えをし、分与対象の資産を保護したほうがよいでしょう。
離婚の財産分与は弁護士に相談したほうが確実
離婚の財産分与は当事者同士でも進められますが、弁護士に相談したほうが確実です。ここでは、離婚の財産分与を弁護士に依頼するメリットについて解説します。
退職金の計算〜請求までトータルで任せられる
退職金を含めた財産分与をどのように行うかは、ケースバイケースです。それに財産分与の計算は複雑になりやすく、法律の知識も必要です。弁護士に依頼することで、退職金の計算から請求までトータルで任せられ、公平な財産分与が実現できます。また、分与対象に評価が難しい資産がある場合でも、評価方法を教えてくれるため安心です。
煩雑な法的手続きを任せられる
弁護士に依頼することで裁判になった際の法的手続きを任せられ、スムーズです。また、離婚協議書を含む複雑な書面の作成もサポートしてもらえるため、自身の負担を大幅に軽減できます。
相手と直接顔を合わせなくて済む
弁護士に依頼することで交渉を代行してもらえます。相手と直接顔を合わせたくない場合や、当事者同士の話し合いだと感情的になりやすい場合など、弁護士が間に入って離婚協議を進めたほうがスムーズです。交渉を代行してもらうことは、精神的な負担を軽減することにもつながります。
離婚の財産分与は「田渕総合法律事務所」にお任せください
「どのように財産分与を進めたらよいか分からない」「交渉から法的手続きまですべて任せたい」といった場合は、「田渕総合法律事務所」にご相談ください。田渕総合法律事務所は大阪府堺市の堺東駅から徒歩5分の場所にあります。Webでのオンライン面談も実施しているので、遠方にお住まいの方もお気軽にお問い合わせください。
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田渕総合法律事務所は、離婚問題の解決実績が豊富にあります。「不貞行為の慰謝料を請求したい」「別居期間中の生活費を請求したい」「親権を確保したい」など、あらゆるケースに対応可能です。解決の難しい事案であっても全力でサポートいたしますので、諦めずに一度ご相談ください。
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当事務所は、離婚問題でお悩みの方が気軽に弁護士に相談できるよう、初回相談を30分無料で実施しています。初回相談では、相談者さまのお話を丁寧にヒアリングし、解決の見込みや弁護士費用などを分かりやすくお伝えします。
まとめ
一般的に退職金は、離婚における財産分与の対象です。ただし、会社から支払われた退職金をすべて使ってしまった場合や、将来的に退職金をもらえる見込みがない場合などは、財産分与の対象外となります。退職金を含む財産分与の計算方法は複雑ですので、詳細については専門家への相談をご検討ください。
◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)
<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター
<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)
<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)
<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)
◆ ホームページ
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