離婚後に親権者の変更は可能?条件や方法を解説
親権と監護権離婚後のトラブル離婚後であっても、親権者は変更できます。ただし、父母間の話し合いだけで変更できるものではなく、裁判所での手続が必要になります。
「親権を取り戻したい」「相手から親権の変更を要求されている」など困っている方は、この記事で紹介する、離婚後に親権者を変更する手続や流れを参考にしてみてください。
離婚後に親権者を変更するには、家庭裁判所での手続が必要
協議離婚では、夫婦で話し合ってどちらか一方を子どもの親権者に指定できます。しかし、離婚後に親権を変更する際は、父母の話合いだけで決めることはできず、家庭裁判所での手続が必要です。親権の変更は子どもの生活環境や人生に大きな影響を及ぼすため、話し合いだけで安易に決めることは許されていません。
家庭裁判所で親権を変更する手続には、「親権者変更調停」「親権者変更審判」の2つがあります。
親権者変更調停
親権者変更調停は、裁判官と調停委員を交えて、親権者の変更について話し合う制度のことです。親権者変更調停で親権者を変更するには、父母双方の合意が必要です。加えて家庭裁判所調査官による調査も実施され、親権者を変更しても問題がないと判断された場合に調停が成立となり、親権が変更となります。
父母双方の話し合いがまとまらず、親権者変更に合意できない場合には調停不成立となり、次項で解説する審判に自動的に移行します。
親権者変更審判
親権者変更審判では、裁判官が子どもの生活環境や利益など、あらゆる事情を考慮して親権者を変更すべきか判断します。裁判官が判断する上で重要視しているのは、調査官の調査結果です。
調停・審判が不要なケースもある
離婚後に生まれた子どもについて、認知した父親を親権者に指定する場合は、調停や審判を行わずとも、父母が合意して届け出れば変更可能です。
親権者変更が裁判所に認められる ケースとは?
親権の変更は裁判所の判断に委ねられます。その判断の大きな基準となるのは、「父母のどちらを親権者とするほうが子の福祉にかなうか」です。ここでは、具体的に親権者の変更が認められるケースについて解説します。
虐待、ネグレクト(育児放棄)
「暴力をふるう」「食事を与えない」など、子どもへの虐待・ネグレクトは、健やかな成長を妨げる行為です。現在の親権者が子どもに虐待・ネグレクトをしている場合は、親権者変更が認められる可能性は高いといえます。虐待・ネグレクトに気づいた場合には、子どもを守るためにも一刻も早く親権者の変更を進めることが重要です。
親権者の死亡、重大な病気、行方不明
親権者が重大な病気にかかったり行方不明になったりした場合など、子どもを育てるのが困難な状況になった場合は、親権者の変更が認められやすくなります。重大な病気とは、精神的な病気や長期的な入院が必要な病気のことを指します。子どもを育てるには、親の心身の健康も欠かせません。
また、親権者が亡くなった場合も親権の変更が認められやすくなります。「親権者が亡くなったら自動的に変更されるのでは」と、中には疑問を抱く人もいますが、親権者が自動で変更されることはなく、手続が必要な点に注意が必要です。
具体的には、親権者が亡くなると「未成年後見」という手続が開始されます。そして、亡くなった親権者が指定した人や裁判所が選任した人が「未成年後見人」として、子どもの世話をしていくこととなります。
他方の親が親権者になることも可能です。その際には、家庭裁判所に「親権者変更審判」を申し立て、裁判所に認めてもらう必要があります。
子どもが親権者変更を望んでいる
子ども自身が親権者の変更を望んでいる場合は、親権者変更が認められやすくなります。
ただし、子どもの年齢によって裁判所の判断も変わってくる点に注意が必要です。
幼い子どもの場合、福祉の観点を含めて自分にとって適切な親権者を選ぶことは難しいといえます。たとえ子どもが「父(母)と暮らしたい」と強く希望しても、裁判所が子の利益を踏まえて「親権者を変更すべきではない」と判断すれば、変更は認められません。
裁判所が子どもの意思を尊重する具体的な年齢は、「15歳以上」とされています。ただ、裁判所が15歳未満の子どもの願望を全く聞かないわけではなく、親権の変更が認められるケースもあります。
監護状況の大きな変化
親権者の監護状況が大きく変化し、子どもの健全な成長が妨げられる可能性がある場合には、親権者変更が認められるケースがあります。以下は、その具体例です。
- 親権者が海外転勤になったが、赴任先の国の治安が悪い
- 親権者が再婚したが、再婚相手と子どもの相性が悪い
- 転職して多忙になってしまい、子どもの世話が難しくなった
親権者変更調停・審判の流れ
親権者の変更には家庭裁判所での手続が必要ですが、実際、どのような流れで進めればよいのかイメージできない方も多いのではないでしょうか。スムーズに親権者を変更するためにも、ここで紹介する親権者変更調停・審判の流れと、裁判所でチェックされるポイントを押さえておきましょう。
家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てる
必要書類を用意し、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に親権者変更調停を申し立てます。相手方の同意があれば、別の家庭裁判所に申し立てることも可能です。必要となる書類は以下のとおりです。
- 親権者変更調停申立書の原本とその写し各1通
- 当事者目録1通
- 送達場所の届出書1通
- 事情説明書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 申立人と相手方、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)各1通
- 非開示の希望に関する申出書(相手方に開示されたくない情報がある場合は提出)
上記の戸籍謄本以外の書類は、裁判所のホームページからダウンロードできます。また、相手方と子どもが同じ戸籍に入っている場合など、同じ戸籍謄本は1通で問題ありません。
申し立てにかかる費用は以下のとおりです。
- 収入印紙1,200円(子ども1人につき)
- 連絡用の郵便切手代1,000円程度
(参考:親権者変更の申立て|裁判所:https://www.courts.go.jp/saitama/saiban/tetuzuki/sinkensya_henkou/index.html)
第一回調停期日
申し立てが受理されると、家庭裁判所から当事者双方に第一回調停期日についての案内が届きます。調停期日に出頭すると、調停委員との面談が行われ、親権を変更すべき事情についてヒアリングされます。なお、面談は当事者同士が同席することは基本的にありません。
それぞれの主張を聞いた調停委員は、当事者同士で合意が成立するよう助言や調整をします。話し合いがまとまらなければ、二回目以降の調停期日が開かれることもあります。
調停成立or不成立
当事者双方の意見や調査官による調査結果を踏まえて、調停委員から調停案が提示されます。その調停案に当事者双方が納得した場合は調停成立となり、納得しない場合には「親権者変更審判」に移行します。
親権者変更審判
親権者変更審判では、裁判官が当事者の主張や調査結果などのさまざまな事情を考慮し、親権者変更を認めるかどうかの最終的な判断を下します。親権を争う場合には、手続をとおして自身が親権者として相応しいことを説得することが大事です。
調停・審判が終了した後の手続
調停・審判が終わり、親権者の変更が決まった場合には、市区町村役場へ届出を提出します。調停成立日または審判確定日から10日以内に、子どもの本籍地または届出人の所在地の市区町村役場にて、「調停調書謄本」または「審判書謄本・確定証明書」を提出します。
なお、父母それぞれの戸籍謄本の提出が求められるケースもあるため、早めに用意しておくとよいでしょう。
裁判所でチェックされるポイント
親権者変更の調停・審判では、以下のポイントをチェックされます。
- 親権者変更を希望する理由、事情
- 現在の親権者の考え
- 現在の養育環境に問題がないか
- 当事者双方の経済力、家庭環境、健康状態
- 子どもに十分な愛情を注いでいるか
- 子どもの生活環境や就学の有無など
- 子ども年齢や意思
離婚後に親権を取り戻したい場合には、監護できる状況が整っていることや監護意欲、子どもへの愛情などを調停委員に理解してもらう必要があります。
親権者変更を弁護士に相談すべき理由
親権者変更は、父母同士で合意が得られていればスムーズに進むでしょう。しかし、親権の変更について意見が分かれている場合には、調停や審判で争うこととなり、自身の理想が実現しない可能性があります。
弁護士に依頼したからといって、確実に自分の希望が叶うわけではありません。とはいえ、弁護士に依頼することで法的観点から自身の主張を整理してもらい、親権者として相応しいことを陳述してもらえるため、親権を得られる可能性が高まります。また、煩雑な手続や書面作成も任せられ、自身の負担を大幅に軽減できます。
まとめ
離婚後に親権を変更することは可能ですが、父母の話し合いで決めることはできず、家庭裁判所での手続が必要です。
手続は「親権者変更調停」「親権者変更審判」の2つがありますが、父母間で親権変更に同意していても、裁判官の判断によって親権者変更が認められないケースもあります。そのため、離婚後の親権で争っている場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
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◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)
<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター
<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)
<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)
<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)
◆ ホームページ
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