妊娠中に婚約破棄されたら?慰謝料や養育費について解説
婚約破棄妊娠中に婚約破棄された場合は、慰謝料や養育費を請求できる可能性があります。しかし、婚約破棄が認められるには条件があり、それを知らないまま慰謝料を請求すれば失敗してしまう可能性も少なくありません。
そこでこの記事では、妊娠中に婚約破棄された方に向け、損害賠償や養育費を請求する要件、慰謝料の相場について解説します。
目次
婚約破棄とは?損害賠償するための要件
婚約破棄とは、婚約後に当事者のどちらかが一方的な事情で婚約を取り消すことを指します。似た言葉に「婚約解消」がありますが、婚約解消は当事者同士の合意の上に、婚約を取りやめることです。
婚約は一種の契約であり、正当な理由がなく婚約を破棄された場合は「債務不履行」として損害賠償を請求できます。しかし、以下2つの要件を満たす必要があります。
- 婚約が成立していること
- 不当な理由で婚約を破棄していること
婚約が成立していること
婚約とは、簡単にいえば「結婚する約束」のことです。口約束であっても婚約にはなりますが、後々トラブルが起きた際に相手が「婚約していない」といえば、それを証明するのは難しいといえます。そのため、客観的に婚約が成立したことが分かる証拠を確保することが大切です。婚約成立を示す証拠として、以下が挙げられます。
- 結婚を前提とした両親への挨拶・顔合わせ
- 友人や親戚、職場などへの婚約の挨拶
- 結納式の領収書
- 新居の契約、ローンに関する資料
- 新婚旅行の予約
- 結婚式場の予約
- 婚約指輪や結婚指輪の現物、支払いの領収書
不当な理由で婚約を破棄していること
以下に該当する場合は、不当な婚約破棄といえます。
- 性格が合わない、相性が悪い
- 親が婚約者との結婚に反対している
- 婚約者以外の相手との不貞行為が発覚した
- 婚約者以外に好きな異性ができた
- 婚約者が外国籍であるから(婚約時にも知っていた)
これとは逆に、以下は、婚約破棄が認められる正当な理由です。
- 婚約破棄された側が婚約者以外と性行為をした
- 同居しているのにもかかわらず婚約破棄された側が生活費を渡さない
- 婚約破棄された側から暴力や虐待を受けている
- 婚約破棄された側が失踪した
- 婚約破棄された側が重度な精神疾患にかかり、回復の見込みがない
- 婚約破棄された側に多額の借金がある
養育費の請求は可能?
妊娠中に婚約破棄された場合でも、養育費の請求は可能です。仮に婚約破棄の理由に正当性があったとしても、父親には養育費の支払い義務が生じます。ただし、養育費を請求するには、父親に子どもを認知してもらわなくてはいけません。
認知の方法には、主に以下の3つがあります。
- 胎児認知
- 任意認知
- 裁判認知
ここでは、認知の種類と手続について解説します。
胎児認知
子どもが生まれる前の胎児の段階で認知することを「胎児認知」といいます。胎児認知をすると、子どもは出生時から父親の子になります。
胎児認知するには、以下2つの条件を満たさなくてはいけません。
- 胎児を懐胎する母親の同意
- 母親が婚姻していない
胎児認知は強制できない点に注意が必要です。父親が胎児認知を拒否しても認知調停は可能ですが、裁判では争えません。父親が認知を拒否する場合には、子が出生してから裁判で争う必要があります。
胎児認知の手続は、母親の本籍地がある役所に「認知届」「本人確認書類(免許証、マイナンバーカード)」「父親の戸籍謄本」「胎児の母親の承諾書」といった書類を提出することで完了します。
任意認知
父親である男性が子どもを認知し、自ら進んで手続することを「任意認知」といいます。子どもが成人するまでの間であれば、母親の承諾も不要です。また、遺言によって認知する方法もあります。遺言認知は、生前に何らかの事情で認知ができない場合に用いられます。
裁判認知
父親が任意認知をしてくれない場合に、裁判所の手続を通じて認知してもらう方法があります。裁判認知をするには、まず家庭裁判所に「認知調停の申立て」が必要です。調停で当事者の合意が得られず、不成立となった場合には訴訟を提起します。なお、妊娠中の場合(胎児の場合)には訴訟を提起できません。
調停や裁判では、父子関係を証明するために、DNA鑑定を用いることもあります。裁判や審判で認知が認められた場合には、10日以内に認知届を提出します。
婚約破棄の慰謝料の相場は?
不当な婚約破棄による慰謝料の相場は、50万~300万円です。慰謝料の金額は、婚約破棄された側の精神的な苦痛を金銭的に評価して算定されます。具体的には、以下のような要素を考慮されます。
- 婚約破棄の理由、経緯
- 婚前交渉の有無(妊娠、堕胎、出産の有無)
- 交際期間の長さ
- 退職の有無
妊娠中の婚約は女性にとって精神的な苦痛が大きいものと判断され、慰謝料が高額になるケースがほとんどです。
また慰謝料とは別に、不当な婚約破棄により中絶を余儀なくされた場合は、相手に中絶費用を全額請求できます。他にも、「結婚式場のキャンセル費用」「退職に伴う収入減少」など、婚約破棄によって生じる経済的損害も請求できます。
婚約破棄を弁護士に相談すべき理由
自身で慰謝料や損害賠償の請求、および認知手続をすることは可能です。しかし、弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
- 慰謝料を請求できるケースか判断してもらえる
- 示談交渉や裁判手続を任せられる
- 認知手続を任せられる
慰謝料を請求できるケースか判断してもらえる
婚約破棄された場合、それが不当な婚約破棄でなければ慰謝料を請求できません。また、婚約が成立しているかどうかも重要なポイントです。そういった判断には、法律や過去の判例の知識が必要であり、自身で「婚約破棄だ」と決めるのはおすすめしません。
弁護士に相談することで、「婚約が成立しているのか」「慰謝料をどのくらい請求できるのか」など、解決水準や見通しを教えてもらえます。
示談交渉や裁判手続を任せられる
妊娠中に婚約破棄された場合、相手と話し合って子どもを認知してもらったり、慰謝料の金額を交渉したりする必要があります。しかし、婚約破棄されたときの精神的なショックは大きく、相手と直接話すことがストレスとなることもあるでしょう。
弁護士に依頼することで交渉を任せられるため、直接相手と顔を合わせることがなくなり、精神的な負担を軽減できます。交渉力の高い弁護士であれば、慰謝料の増額にも期待できるでしょう。また、複雑な裁判手続も弁護士に全て任せられます。
認知手続を任せられる
子どもを出産して養育費を請求するには、認知手続が必要です。胎児認知や任意認知によってスムーズに手続が進めば問題ありませんが、不当な婚約破棄の場合、相手が認知を拒否する可能性も少なくありません。その際には、裁判による強制認知が必要ですが、弁護士に依頼することで認知手続から養育費の請求までトータルで任せられます。
まとめ
不当な理由で婚約破棄された場合は、慰謝料や損害賠償の請求が可能です。婚約破棄による慰謝料の相場は、50万〜300万円と幅は広めですが、妊娠中の場合は高額になる可能性があります。
また、父親に子どもを認知してもらえば、養育費の請求も可能です。しかし、慰謝料や養育費の請求を自身で行うのは難しいため、弁護士に相談するのがおすすめです。
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◆ 略歴
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2004年 防衛大学校 中退
2009年 大阪市立大学法学部 卒業
2014年 司法試験予備試験合格
2016年 大阪弁護士会登録(69期)
<所属>
大阪市立大学(現在の大阪公立大学)法学部 非常勤講師
大阪市立大学ロースクール アカデミックアドバイザー
大阪市立大学 有恒法曹会
大阪弁護士会 行政問題委員会、行政連携センター
<資格>
弁護士
行政書士
教員免許(中学社会・高校地歴公民)
<著書>
「生徒の自殺に関する学校側の安全配慮義務違反・調査報告義務を理由とする損害賠償請求事件」(判例地方自治469号掲載)
「行政財産(植木団地)明渡請求控訴事件」(判例地方自治456号掲載)
<学会発表>
「改正地域公共交通活性化再生法についての一考察-地域公共交通網形成計画に着目して-」(公益事業学会第67回大会)
◆ ホームページ
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