【ケース別】不当解雇の解決金相場|有利に進める方法とは?
不当解雇労働トラブル退職不当解雇された場合、退職する代わりに解決金によって解決を目指すことが可能です。しかし、不当解雇による解決金の適切な金額について悩む方も多いのではないでしょうか。適切な金額を受け取るためにも、解決金の相場を知っておきましょう。
この記事では、不当解雇における解決金の相場を紹介します。また、解決金を得る流れ・方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相場を知る前に|不当解雇の解決金についておさらい
不当解雇の解決金とは、解雇トラブルを解決するために使用者が労働者に支払う金銭のことです。「和解金」と呼ばれることもあります。
会社から不当な理由で一方的に解雇された場合、労働者は使用者に対して「雇用が継続していること」「解雇トラブルを争った期間に生じるはずだった賃金を支払うこと」を主張できます。とはいえ、「不当解雇された会社に戻りたくない」というのが、一般的な労働者の本音です。
使用者側としても、「労働者を辞めさせたい」という思惑で不当解雇に至っており、労使双方の方向性は一致しています。そこで、「解決金(和解金)」という形で両者折り合いをつけるのです。
なお、労働者が復職を希望する場合には、解決金で解決するのではなく、不当解雇の撤廃を求めて争い続ける必要があります。
【ケース別】不当解雇の解決金の相場
不当解雇による解決金の内訳で、大部分を占めるのは解雇後の賃金です。解決金の相場は、解雇の正当性によって大きく変わります。ここでは、不当解雇を争う解決金の相場について解説します。
なお、退職勧奨による慰謝料や解雇前のパワハラ、早期退職手当など、状況に応じて解決金は大きく変動するため、下記は一般的な相場である点にご留意ください。
解雇に正当性がある場合:賃金の1ヶ月〜2ヶ月程度
「会社が適切に指導しているにもかかわらず、遅刻や欠勤を繰り返している」「ほか従業員と協調せず、業務に多大な支障をきたしている」など、解雇理由が正当な場合は、争っても解雇は有効と判断される可能性が高いといえます。
とはいえ、使用者側も無用なトラブルを避けたいと考えることが多いため、賃金の1ヶ月〜2ヶ月程度の解決金を提示してくる場合があります。
解雇の正当性で争っている場合:賃金の3ヶ月〜6ヶ月程度
解雇に正当性があるか判断が難しい場合、争うことは労使双方にとって高いリスクがあります。とはいえ、法律は労働者を手厚く保護する傾向にあり、争うと使用者側が不利な立場に置かれやすいことから、賃金の3ヶ月〜6ヶ月程度と少し高めの解決金が提示される傾向にあります。
解雇に正当性がない場合:賃金の1年分以上
解雇に合理的な理由がない場合は不当解雇となり、裁判では多額の金銭支払いを命じられる可能性があります。争うことは会社側にとって大きなリスクがあるため、解決金は高額になることがほとんどです。
この場合の解決金の相場は、賃金の1年分以上です。
不当解雇の解決金相場が変化する5つの要素
不当解雇の解決金は、解雇の正当性以外にも、雇用形態や慰謝料の有無などで大きく変化します。自身の解決金を算定する目安として、下記の5つの要素も参考にしてみてください。
雇用形態
パート・アルバイトも法律上は「労働者」であるため、不当解雇されれば訴えることが可能です。そのため、解雇トラブルでは、パート・アルバイトに対しても解決金を提示される場合があります。
ただし、解決金の相場は、正社員よりも低くなる傾向にあります。なぜなら、一般的にパート・アルバイトは正社員よりも給料額が低く、責任範囲も狭いためです。
手続きの方法
解雇トラブルを争う際の法的手続きとして、主に「労働審判」「裁判」の2つがあります。労働審判は裁判所で行われますが、基本的には話し合い(調停)を中心とした手続きです。手続きにかかる費用が少なく、期間も短いことから解決金は低くなる傾向にあります。
一方で訴訟・裁判になると、かかる費用が大きく、期間も長くなりやすいことから、会社側としてもリスクは大きいと考えるのが一般的です。ゆえに、裁判で争う意思を示すと、高額な解決金を提示してくる可能性があります。
解決までに要する期間
和解までにかかる期間が長引くほど、解雇の解決金が大きくなる傾向にあります。交渉や労働審判など、短期での解決は労働者にとって負担が少なく済みます。会社側としても、長い期間争いたくないと考えるのが一般的です。
バックペイ(未払い給料)
不当解雇が認められた場合、解雇を争っていた期間も従業員としての雇用が継続していたことになります。ゆえに使用者は労働者に対して賃金を支払う義務が生じます。
不当解雇の争いが長期間になれば、使用者はその分の未払い給与をさかのぼって労働者に支払わなくてはなりません。このバックペイが大きくなるほど、解決金も高額になる傾向にあります。
慰謝料が生じるか
慰謝料とは、相手方の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。悪質な解雇の場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。すなわち、不当解雇によって慰謝料が生じる場合には、解決金に慰謝料分が含まれることとなります。
解雇前に「パワハラ・セクハラを受けた」「執拗な退職勧奨を受けた」といった場合も、慰謝料を請求できるため、解決金が高額になるでしょう。
不当解雇で解決金を得る方法
不当解雇による解決金を「どのように得たらよいのか」分からない方も多くいるでしょう。ここでは、不当解雇による解決金を得るための一般的な流れ・方法を3つのステップに分けて解説します。
交渉
解雇トラブルを争う際、労働審判や裁判ではなく、まずは交渉からスタートするのが一般的です。交渉では、不当解雇に対して異議があることを使用者に意思表示する必要があります。ただ、その意思表示は電話やメールではなく、内容証明郵便を使用するのがセオリーです。
内容証明郵便は、郵便文書の内容を郵便局が証明してくれるサービスです。「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の文書を」送付したかが記録として残せます。これにより、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことが可能です。
内容証明郵便を送付し、会社が交渉に応じる場合には、直接話し合いで解決金を決めます。合意が成立した場合には、後のトラブルを防ぐためにも、交渉が成立した日時や解決金の金額、支払い期限などを明記した書面を作成しましょう。
労働審判
交渉がまとまらなかった場合には、労働審判を利用するのが一般的です。労働審判は、労使間トラブルを解決するための制度で、労働審判官1名と労働審判員2名の計3名で構成された労働審判委員会が関与します。
原則として3回以内の期日で審理が終了することから、通常の訴訟よりも早期解決しやすい点が特徴です。基本的には話し合い(調停)で解決を試みますが、話し合いがまとまらなかった場合には、労働審判委員会が最終的な判断を下します。
訴訟
労働審判の決定事項に対し、労使どちらかが異議申立てをすれば、通常の訴訟・裁判へと移行します。また、労働者がはじめから復職を目指すのであれば、労働審判を経ずに最初から裁判で争う場合があります。
裁判になれば話し合いの余地は少なくなり、不当解雇に対して金銭で解決する可能性は低くなるでしょう。とはいえ、裁判官が和解交渉を促す場合もあり、訴訟手続き中でも解決金によって和解するケースもあります。
不当解雇を争う場合には弁護士に相談するのが確実
会社という大きな組織に対して、個人が立ち向かうのは賢明ではありません。不当解雇を争う場合は、弁護士に相談したほうが納得のいく結果を得やすくなります。ここでは、弁護士に依頼するメリットを3つ紹介します。
解決の見通しが分かり、リスクを避けられる
法律の知識がないと、解雇が「不当」なのか判断は難しいものです。勝ち筋の見えないまま争っても敗訴するリスクが高いといえます。弁護士に相談することで解雇が不当なのか判断してもらい、最善の解決方法についてアドバイスがもらえます。
会社との交渉を任せられる
不当解雇された会社とやり取りするのは、大きなストレスとなります。それに自身が交渉すると、感情的になって話し合いが進まない可能性もあります。
弁護士に依頼することで、会社との交渉をすべて任せられるのがメリットです。弁護士が窓口となって対応してくれるため、直接相手と顔を合わせる必要もなくなり、精神的な負担が軽減できます。また、弁護士は日々交渉に慣れているため、こちらが有利になるよう粘り強く交渉を進めてくれるでしょう。
複雑な法的手続きを任せられる
内容証明郵便の作成、労働審判・訴訟の手続きなどを任せられる点もメリットです。慣れない人が法的手続きをすると時間がかかってしまいます。弁護士に任せることで、スムーズに手続きを進められ、事件の早期解決に期待できます。
不当解雇でお悩みの方は「田渕総合法律事務所」へご相談ください
大阪府堺市の堺東駅から徒歩5分の場所にある「田渕総合法律事務所」は、労働事件の解決実績が豊富にあります。Web面談も実施しているので、遠方にお住まいの方もお気軽にご相談ください。
労働問題の解決実績が豊富
代表者弁護士の田渕には、自治体の職員として10年以上勤務していた間、ハラスメントの調査、組合・ユニオンの団体交渉の対応など、多くの労働問題に携わった経験があります。
使用者側の立場や考え方を熟知しているので、解決の見通しを正確に立て、迅速に対応できます。
詳細で丁寧な法律相談を心がけています
当事務所は労働問題でお困りの方が気軽に弁護士を頼れるよう、初回相談では、解決の見込みや弁護士費用などを丁寧にお伝えいたします。
弁護士に相談したからといって、契約しなければならないわけではありません。
持ち帰っていただき、十分に検討していただけたらと思います。また、事前にご予約いただければ、平日夜間や土日の法律相談も可能です。Webからの問合せは24時間受け付けております。
まとめ
不当解雇による解決金の相場は、解雇の正当性や雇用形態、バックペイなど、さまざまな状況によって変化します。ただ、解雇に正当性がある場合、争っても解決金を得られないどころか、不利な結果で終わってしまう可能性があります。
解雇トラブルについて納得のいく結果を目指すのであれば、弁護士への相談を検討してみてください。