残業代請求の時効を中断させる4つの方法|スムーズに請求するには?
労働トラブル未払残業代未払賃金未払いの残業代がある場合は、時効が成立する前に請求する必要があります。とはいえ、「残業代請求の消滅時効は何年なのか」「延長できないのか」など心配な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、残業代請求の時効が何年なのか解説しつつ、時効を中断させる方法や請求の手順について紹介します。
目次
残業代請求の時効は2年?3年?
労働基準法の改正によって残業代請求の消滅時効が変わっており、ややこしいと感じている方もいるでしょう。ここでは、残業代請求の時効が何年なのか解説します。
2020年4月以降は3年
労働基準法の改正によって、2020年4月1日以降の残業代請求の消滅時効期間は2年→5年に変更されました。(労基法115条)ただし、暫定処置として当面は消滅時効期間が「3年」に定められています(※2024年7月時点の情報です。)。
残業代請求の起算点は「給料日の翌日」
残業代を請求できるのは、給料日の翌日からです。例えば、2023年3月31日が給料日の場合は、2023年4月1日に残業代を請求する権利が生じます。そして3年後の2026年4月1日になると時効が完成します。
残業代請求の時効が延長されるケース
時効は3年と定められていますが、特定のケースに該当する場合は時効が延びます。ここでは、残業代請求の時効が延長されるケースを2つ紹介します。
会社側に不法行為があった場合
会社側の未払い残業代が不法行為であると認められた場合、損害賠償請求権が適用される可能性があります。例えば、「会社側が意図的に賃金請求のための制度を整えない」「未払い残業代請求を妨害する」などが不法行為に該当する場合があります。
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、損害および加害者を知ったときから3年、不法行為のときから20年です。悪質な不法行為があった場合は、残業代請求の消滅時効ではなく、損害賠償請求権の消滅時効が適用される可能性があります。
つまり、正確には残業代請求の消滅時効が延長されるわけではありませんが、不法行為に基づく損害賠償請求権が適用されることによって、賃金を請求できる期間が延びる場合があります。
使用者が時効の援用をしなかった場合
残業代請求の権利は、自動で消滅するわけではありません。相手方が時効の援用をした場合に消滅します。時効の援用とは、「消滅時効期間を経過しているため支払いません」と主張することです。
言い換えれば、消滅時効期間を過ぎても、使用者が時効の援用をしなければ、時効は完成しません。
残業代請求の時効を中断させる4つの方法
残業代請求の準備を進めている間にも、時効の完成が近づいていきます。そのため、時効を中断させる方法について知っておきましょう。ここでは、残業代請求の時効を中断させる方法を4つ紹介します。
内容証明郵便を送付する
時効の完成を先延ばしにすることを、「時効の完成猶予」といいます。残業代請求の旨を記載した内容証明郵便を送付することで、届いてから6ヶ月間は時効の消滅を防げます。
内容証明郵便とは、郵便文書の内容を証明するサービスのことです。「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の文書を」送付したかを、郵便局が証明してくれます。
法的トラブルで何かしらの主張をする際は、「言った・言わない」のトラブルを防ぐために、内容証明郵便を利用するのが一般的です。内容証明郵便には書き方やルール、注意事項が存在するため、不安な方は弁護士や司法書士などの専門家に作成をお願いするとよいでしょう。
対面や電話で残業代を催告する
内容証明郵便ではなく対面や電話で残業代を請求しても、6ヶ月間は時効の消滅を防げます。ただし、対面や電話の場合は「言った・言わない」のトラブルが生じる場合があるため、録画やボイスメモなどで証拠を作ることが大事です。
会社に交渉して承認を得る
会社側に交渉して未払い残業代があることを承認してもらえれば「時効の更新」となり、消滅時効がリセットされます。つまり2024年4月1日に時効が更新されれば、2027年3月31日まで残業代請求権が残ることとなります。
裁判を起こす
裁判を起こすことで、時効の完成が猶予されます。訴訟を提起した後、訴訟を取り下げた場合や裁判所に却下された場合でも、6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。さらに、裁判で勝訴すれば時効の更新が可能です。
時効が成立する前に|残業代請求の手順
残業代請求は証拠集めや請求額の計算など、やるべきことが多くあり時間がかかります。スムーズに未払い残業代を請求できるよう、ここで紹介する手順を押さえておきましょう。
証拠を集める
未払い残業代があることを証明するための「証拠」を集めましょう。証拠は、残業代請求の交渉や裁判で必要となります。以下は、未払い残業代の証拠となる例です。
- 労働条件を示す証拠:就業規則、雇用契約書、労働契約書
- 残業時間を示す証拠:タイムカード、日報、勤怠管理システムの記録、業務用メールの送受信履歴など
- 残業時間中の労働内容を示す証拠:残業指示書、残業承諾書、残業時間中に業務指示を受けたメールなど
- 未払い残業代を示す証拠:給与明細
上記のほかにも、状況によって証拠となり得るものがあるため、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
未払い残業代を計算する
会社に請求する金額を計算します。以下は、基本的な残業代の計算式です。
- 残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率
変形労働時間制やフレックスタイム制など、勤めていた会社によって計算が複雑になる場合もあるため、専門家に計算してもらうことを推奨します。
会社に残業代を請求する
残業代請求の方法として、まずは「未払い残業代を支払ってほしい」という意思表示のために内容証明郵便を送付するのが一般的です。内容証明郵便によって時効の進行を一時的にストップできます。
その後、会社側と残業代の支払いについて交渉します。会社がスムーズに交渉に応じる場合もあれば、交渉を拒否する場合もあるでしょう。交渉で解決できない場合は、労働審判または訴訟へと移行します。
残業代請求は実績豊富な「田渕総合法律事務所」にお任せください
会社という大きな組織を相手に、個人が立ち向かうのは賢明ではありません。納得のいく結果を得るためにも、弁護士への相談がおすすめです。
大阪府堺市の堺東駅から徒歩5分の場所にある「田渕総合法律事務所」は、残業代請求を含めた労働トラブルの解決実績が豊富にあります。Web面談も実施しているので、遠方にお住まいの方もお気軽にご相談ください。
証拠集めからアドバイス|証拠がない場合も一度ご相談を
法律の知識がないと、具体的にどのような証拠が有効なのか判断が難しいものです。当事務所にご相談いただければ、どういった証拠が必要なのか、その集め方についてもアドバイスできます。
また、退職してしまい、手元に証拠がない場合でも、弁護士から会社に対して就業規則やタイムカードなどの開示請求が可能です。未払い残業代の計算も弁護士が正確に行いますので、安心してお任せください。
交渉や裁判など会社とのやり取りを代行
不当な扱いを受けた会社と、自身が直接交渉するのは大きなストレスとなります。ご相談いただければ、弁護士が代わりに会社側とやり取りするので、依頼者さまは精神的な負担を軽減できます。
弁護士として交渉業務に数多く携わっており、未払残業代請求で争いになる点を見越して交渉を進めることが可能です。また、内容証明郵便の作成や労働審判・訴訟などの法的手続きも弁護士が代行しますので、事件をスムーズに進められます。
不当解雇やハラスメントなどの問題もトータルでサポート
残業代請求のほかに、不当解雇やハラスメントなどの被害に遭った場合も、弁護士がトータルで対処いたします。私は弁護士になる前後を通じて、自治体の職員として10年以上勤務していました。自治体の職員時代は、ハラスメント調査、組合・ユニオンの団体交渉の対応など経験しており、あらゆる労働トラブルに精通しています。
お気軽にご相談ください
当事務所は労働トラブルに遭った方が気軽に弁護士に相談できるよう、詳細かつ丁寧な法律相談をここと崖ています。
初回相談では、解決の見込みや弁護士費用などを丁寧にお伝えします。弁護士に相談したからといって必ず契約しなければならないわけではありません。
弁護士に依頼するメリットや費用面を踏まえ、十分に検討していただけたらと思います。また、事前にご予約いただければ、平日夜間や土日の法律相談も可能です。Webからの問合せは24時間受け付けております。
まとめ
2024年の7月時点で、残業代請求の消滅時効期間は「3年」と定められています。時効の進行を一時的に止めたい場合は、内容証明郵便を送付するか訴訟を提起する必要があります。
労働トラブルで会社を相手に争うには、法律の知識が必要です。納得のいく結果を得たい場合は、弁護士への依頼を検討してみてください。