いじめが認定されるとどうなる?加害者や学校が負う責任とは
いじめいじめ被害者側いじめが認知される件数は年々増加しています。文部科学省が公表する「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によると、2022年度のいじめの認知件数は681,948件(前年度615,351件)でした。
いじめ被害に遭うと、うつ病やPTSDなどの精神疾患を引き起こすリスクがあります。また、不登校や自殺願望、学業低下などにもつながりかねません。自分の子どもがいじめの被害に遭っている場合、一刻も早い対処が必要です。
この記事では、いじめが認定されるとどうなるのか、加害者にどのような法的責任を追及できるのか解説します。
参考:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)
目次
いじめとは|法律上の定義や具体例
いじめ問題への対応を進めるために、まずは法律上の定義や具体例を理解することが大事です。ここでは、「いじめ防止対策推進法」によるいじめの定義や具体例を紹介します。
法律上のいじめの定義
以下は、いじめ防止対策推進法第2条第1項による「いじめの定義」です。
“この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。“
なお、いじめ防止対策推進法第28条第1項では、学校における「いじめ」の中でも深刻なものを「重大事態」と定義し、学校や教育委員会、行政機関などに特別な調査などを義務づけています。
- いじめにより被害者の生命、心身、または財産に重大な被害が生じた疑いがある
- いじめにより被害者が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある
重大事態とは、具体例を挙げると「いじめを受けた児童が自殺を図った」「いじめによって転校を余儀なくされた」などです。いずれの場合も、事実関係が判明していなくても、「疑い」が生じた時点で「重大事態」として調査する必要があります。
いじめの種類や具体例
どのような行為が「いじめ」に該当するのか、主な種類と具体例を見てみましょう。
【物理的ないじめ】
殴る、蹴る、物を投げつける、押すなどの直接的な暴力行為を指します。身体的な傷を負うだけでなく、恐怖心から精神的にも大きな苦痛を感じるケースが多くみられます。
【言葉によるいじめ】
悪口、侮辱、陰口、からかいなどの言葉で相手を攻撃する行為を指します。言葉のいじめは証拠として残りにくく、加害者がそれを「冗談」などとして隠そうとすることもあるため、発見が遅れるケースが多々あります。
【無視や仲間外れ】
被害者を意図的に孤立させ、集団の中で独りぼっちにする行為を指します。友達関係が大きな影響を持つ学校生活においては、無視や仲間外れは被害者に大きな精神的負担を与えます。
【インターネット上のいじめ】
SNSや掲示板など、インターネット上の悪口、誹謗中傷を指します。インターネット上のいじめは犯人が分からないことが多く、被害者がどこにいても攻撃を受け続けます。そのため、不安や恐怖から逃れられない状態に陥りやすい点が特徴です。
いじめが認定されるとどうなる?
いじめは不法行為に該当するため、認定されれば加害者や学校側に責任追及が可能です。ここでは、民事責任と刑事責任について解説します。
いじめの被害者が加害者に講じることができる法的措置については、次の記事を参考になさってください。
参考記事:いじめの加害者を訴えることはできる?被害者が取れる対応などを解説
民事責任の追及:加害者側・学校側に対して損害賠償請求が可能
民事責任とは、他人の権利や利益を違法に侵害した者が、被害者に対して負う私法上の責任のことです。いじめは不法行為であり、加害者やその保護者、学校側(国立学校・公立学校であれば国や自治体、私立学校は学校法人や教師個人)に対して損害賠償を請求する権利があります。
具体的には、精神的な苦痛に対する慰謝料、通院や治療にかかった医療費、さらには通学や進学が困難になった場合の損害などが対象となります。
また、学校側が適切な対応を怠った場合(いじめを放置した、対応が遅れたなど)には、学校や教育委員会に対しても損害賠償請求が可能です。いじめ防止対策推進法に基づき、学校側はいじめを発見し、迅速かつ適切な対応をとる責任があります。この義務が果たされていないと判断された場合には、学校にも一定の責任が問われることになります。
損害賠償請求は示談交渉で行うのが一般的ですが、相手が応じない場合は民事訴訟を提起し、強制的に解決を図ることも可能です。
刑事責任の追及:傷害罪や恐喝罪などで刑事告訴が可能
いじめの内容が犯罪行為に該当する場合、加害者に刑事責任を追及できます。例えば、殴る、蹴るなどの物理的ないじめで身体的な被害が生じた場合は「傷害罪」、恐喝や脅迫があった場合は「恐喝罪」や「脅迫罪」、金品を奪われた場合には「窃盗罪」が該当します。
こういった犯罪被害を受けた場合、警察に告訴状を提出することで、加害者に対する刑事処分を求めることが可能です。
いじめ被害に遭ったときは弁護士への相談が賢明
いじめの被害に遭った場合、自力での解決は困難です。なぜなら、学校側がいじめを認めないケースがあるうえに、責任の追及には法律の知識が必要であるためです。また、下手に行動すると事件の解決が困難になる可能性もあります。
いじめ被害に遭ったときは、行動を起こす前に弁護士に相談するのが賢明です。下記で、いじめ問題を自力で解決するのが難しい理由について解説します。
いじめ問題に弁護士が介入するメリットについては、次の記事を参考になさってください。
参考記事:いじめ被害は弁護士が介入すると解決する?依頼するメリットや注意点を紹介
加害者や学校側がいじめを認めない(隠す)可能性がある
一般的に、いじめは人目のつかない場所で秘密裏に行われます。そのため、いじめの証拠を確保するのは困難です。加えて、加害者や学校側がいじめの調査に消極的であったり、事実を認めなかったりするケースも多くあります。
弁護士に依頼することで、いじめの調査を強く要請してもらえるうえに、証拠の収集もサポートしてくれます。また、いじめの証拠を残せなくても、学校にいじめの調査を依頼し、その「調査結果報告書」を証拠にすることも可能です。
いじめ問題の証拠については、次の記事を参考になさってください。
内部リンク:いじめ被害は証拠がなければ泣き寝入り?証拠になり得るものや対応法を解説
交渉・話し合いは大きなストレスとなる
加害者側や学校側との交渉・話し合いは、精神的な負担が多くかかります。感情的になってしまえば話し合いが進まず、かえって状況を悪くしてしまう可能性もあります。弁護士に依頼することで、法的観点に沿って冷静に話し合いを進めることが可能です。加害者と直接顔を合わせたくない場合も、弁護士にやり取りを代行してもらえます。
また、弁護士に交渉を任せることで、こちらの本気度も示せます。「裁判を起こされるのではないか」など、相手に心理的プレッシャーを与えることが可能です。
適切な損害賠償金を算定するのは難しい
いじめによる精神的苦痛や通院費用、さらには進学や学業に支障が出た場合など、損害賠償の範囲は広範囲にわたります。個別のケースに応じて適切な損害賠償額を算定するためには、法律の知識や過去の判例に精通している必要があります。
弁護士に依頼すれば、いじめの状況や被害に応じた正当な賠償金を請求することが可能です。また、損害賠償請求の交渉や裁判手続きも任せられ、自身の負担を大幅に軽減できます。
いじめ問題は解決実績が豊富な「田渕総合法律事務所」が解決いたします
いじめ被害に遭ったときは、ぜひ「田渕総合法律事務所」へご相談ください。当事務所の代表弁護士「田渕 大介」は、弁護士になる前後を通じて自治体職員として10年以上勤務していました。学校でのいじめ問題、不登校、自殺に関する裁判にも、自治体側の弁護士として関わっていたため、学校側・自治体側の出方を熟知しています。
法的観点に沿ったいじめの調査を求め、加害者側・学校側への慰謝料請求、加害児童に対する厳正な措置・処分、再発防止策の要請など、被害児童が安心して過ごせる学校生活を取り戻せるよう全力でサポートします。
また当事務所は、いじめ被害で悩まされる方が気軽に弁護士に相談できるよう、事前にご予約いただければ土日・夜間の面談も可能です。事務所は大阪府堺市の堺東駅から徒歩5分の場所にありますが、Webでの面談も実施しているので、遠方の方もお気軽にお問い合わせください。
まとめ
いじめが認定されると、加害者や学校側には民事・刑事の両面で責任追及が可能です。しかし、学校側はいじめの調査に非協力的であったり、事実を隠したりするケースも少なくありません。自力で解決を目指すのではなく、行動を起こす前に一度弁護士に相談してみてください。