誹謗中傷/名誉毀損/風評被害
令和4年7月から、インターネット上での誹謗中傷の対策強化として侮辱罪の厳罰化が実施されました。
しかし、匿名性が高いネット上において、悪質な情報を流した発信者に対し訴訟や慰謝料請求はできるのでしょうか。
そこで、本記事ではインターネット上での誹謗中傷や風評被害の概要、対応策についても紹介します。
インターネットの誹謗中傷とは?
「誹謗中傷」とは、根拠のない悪口や嘘を言って他人を傷つける行為を指します。
近年ではインターネットの普及で被害件数も増加しており、個人だけでなく企業に対する誹謗中傷行為も出てきています。
こうした問題から、国ではネットによる中傷行為の対策を強化する動きも出始めました。
しかし、インターネットやSNSは匿名性が高いため、誹謗中傷した人物を裁判で訴えようとしても難しい傾向があります。
では、インターネットによる誹謗中傷の対策は可能なのでしょうか。
誹謗中傷がどのような罪に該当するのかを含めて、具体的に確認していきましょう。
ネット上でも名誉棄損や侮辱罪の適用が可能
インターネット上での書き込みや投稿による誹謗中傷を受けた場合、下記のような罪に問える可能性があります。
① 名誉棄損罪
多数の人が集まる場や不特定多数の人物が閲覧できるネット上などにおいて、特定の相手の評判を失墜させるような行為が該当します。
なお、投稿内容が例え事実であっても、相手が通常知られたくないことを暴露すると名誉棄損の対象になります。
ただし、公共性や公益性があり、なおかつ内容が真実であれば名誉棄損にならない可能性もあります。
② 侮辱罪
事実を示すことなく、悪口などで相手を傷つける行為は侮辱罪に該当します。
名誉棄損罪では事実を示して相手を中傷しますが、侮辱罪では事実の適示は不要となります。
なお、社会通念上許容される程度の個人的な評価や批評の場合は対象外です。
インターネットやSNS上の投稿においても、こうした誹謗中傷に該当すれば損害賠償請求や刑事告訴ができます。
しかしながら、匿名性の高いネットやSNSでは相手の特定が難しいため、発信者を見つける負担が大きい点にも注意が必要です。
企業や店舗では風評被害に遭うリスクも
企業も誹謗中傷を受けた場合、思わぬ風評被害が出てしまう可能性があります。
よくある事例としては、下記のようなケースがあります。
- ・サービスに対する悪い噂、食品や商品に異物が混入しているなどの投稿を流される
- ・従業員の不祥事や経営者の不貞行為などの情報をSNSなどで拡散される
- ・労働環境が劣悪で休憩時間もないブラック企業である、といった誹謗中傷を受ける
こうした風評被害を放置すると、企業経営に深刻なダメージが出てしまいます。
具体的な影響としては、企業イメージの低下・売上や販売数の減少・社員の離職・求人応募者の減少などが発生してしまうでしょう。
なお、企業が誹謗中傷を受けた場合、下記のような罪に問える可能性があります。
① 名誉棄損罪
個人の場合と同様に、会社の評判を傷つけるような行為は名誉棄損となる場合があります。
② 信用棄損罪
虚偽の事実を挙げての誹謗中傷などが該当します。
仮に情報が真実であった場合には、信用棄損罪は成立しないため注意が必要です。
③ 業務妨害罪
人の業務を妨害する行為が該当します。
虚偽の事実を流し業務を妨害する「偽計業務妨害罪」と、脅迫や暴力で業務を妨害する「威力業務妨害罪」の2種類があります。
誹謗中傷や風評被害を受けた場合の対策について
誹謗中傷や風評被害を受けた場合は、下記のような対策を行うことで被害拡大の防止・慰謝料請求ができる可能性があります。
① 早急に流れている情報が事実か確認する
まずは誹謗中傷の内容が事実か早急に確認しましょう。
経営者や管理職などが虚偽の情報だと思っていても、現場では実際に発生した事実である可能性があります。
最初は否定していたにも関わらず事実であったと判明すれば、より非難を浴びてしまいますので注意しましょう。
② 証拠の保存や情報開示請求をする
被害を受けた場合には、発信者の特定や証拠の提示を行うためにも、誹謗中傷の情報は保存しておきましょう。
ネット上の投稿では、スクリーンショットなどで記録ができます。
また、IPアドレスを特定できれば、発行元に発信者の個人情報開示も請求できますので覚えておきましょう。
③ 法的措置の検討をする
流された情報が悪質もしくは虚偽であり、発信者も特定できた場合は法的措置を検討しましょう。
前述のような名誉棄損や信用棄損、偽計業務妨害罪に問える可能性があります。
被害を受けた場合には冷静かつ迅速な対応を行いましょう
インターネット上での誹謗中傷や名誉棄損、風評被害に関する解説を行いました。
今はSNSなどでの投稿が活発化しているため、個人・企業問わず攻撃を受ける可能性があります。
被害を受けた場合は冷静に、かつ被害が拡大しないよう迅速に対処をしましょう。
ぜひ、本記事を確認しながら弁護士にも相談しつつ、対策を考えてみて下さい。