慰謝料請求/謝罪請求
Webサイトの掲示板やSNS等で誹謗中傷の投稿や書き込みをされると、信用が低下して様々な被害が出てしまうケースがあります。
そのような場合、発信者(加害者)に対して慰謝料請求は可能なのでしょうか。
そこで、本記事ではインターネット上での慰謝料請求の可否、また請求の流れや増額のポイント、謝罪請求についても解説します。
ネット上でも権利侵害があれば慰謝料請求は可能
インターネット上のホームページやSNS等で誹謗中傷を受けた場合、権利を侵害していると認められれば慰謝料請求が可能になります。
なお、権利侵害に該当するのは下記のような不法行為があった場合です。
名誉毀損
公の場で事実等を摘示し、他人の社会的な評価を失墜させるような行為や発言を行う
侮辱
事実を摘示せずに、公然と人を貶めるような行為や発言を行う
プライバシーの侵害
未公開だった相手の個人情報を勝手に開示・公開する
誹謗中傷の投稿や書き込みを行った発信者を特定し、上記の様な権利侵害があった旨を裁判で主張して認められれば慰謝料は請求できます。
ただし、発信者の特定は難しく負担も大きいため、時間や費用が掛かる点は認識しておきましょう。
加害者に対する慰謝料請求の流れについて
インターネット上で誹謗中傷を行った加害者に対する慰謝料請求は、一般的に以下の流れで行われるケースが多くなっています。
① 被害者が誹謗中傷の証拠を保存し弁護士に相談
まずは、被害者が誹謗中傷の投稿内容や、書き込みの日時などが分かる証拠を保存します。
その後、弁護士等に相談して発信者を特定する手続きを行います。
② サイト管理者に発信者情報開示請求を行う
弁護士が権利侵害であると判断すれば、サイト管理者に発信者情報開示請求を行いIPアドレスやタイムスタンプなどの開示を求めます。
③ アクセスプロバイダに発信者情報開示請求やログ保存の申請を行う
②で得られた情報を基に、インターネット接続事業者に対して加害者の氏名や住所等の情報開示請求・アクセス記録保存の申請をします。
④ 特定した加害者に対して慰謝料を請求する
誹謗中傷する内容を発信した加害者を特定した後は、直接交渉や裁判での損害賠償などにより慰謝料を請求していきます。
なお、サイト管理者やアクセスプロバイダが発信者情報の開示請求に応じるかは任意であるため、多くの場合は情報開示をしてくれません。
したがって、基本的には裁判所に「仮処分の申立て」を行って発信者の情報開示を求めていきます。
慰謝料の相場や増額のポイントとは?
インターネット上の誹謗中傷での慰謝料は、主に下記のような相場となっています。
①「名誉棄損」の権利侵害の場合
個人は約10万円~70万円程度、企業は約数十万円~100万円程度。
②「侮辱」での名誉感情侵害の場合
約数万円~10万円程度。
③「プライバシー侵害」の場合
約10万円~50万円程度。
ただし、慰謝料は被害状況や内容等により大きく変動するため、上記金額より高額な慰謝料になるケースも存在します。
なお、主に増額される要因には以下のような事項があります。
- ・被害者の生活に大きな支障が出るほどの深刻な被害が出ている
- ・被害者が性的な嫌がらせや執拗な侮辱といった悪質性の高い行為を受けている
- ・被害者が公共性の高い職業に就いており、社会的な評価が大きく低下しやすい場合
また、賠償金を増額させる手段として、示談交渉を行う方法も存在します。
裁判では内容が公開され、悪質な投稿を行った加害者も社会的に被害を受ける可能性があります。
そのため、口外禁止を条件にすれば、高い慰謝料請求に同意してくれる場合がありますので、示談も検討しておきましょう。
加害者に対して謝罪請求はできるのか
インターネットで誹謗中傷を受けると、時に大きな被害や精神的苦痛を負わされるケースがあります。
そのため、加害者に対して「謝罪を請求したい!」という被害者の方も多くいるのが実情です。
謝罪をさせる方法には、名誉棄損の場合に認められる可能性がある「謝罪広告請求」があります。
当該請求は名誉棄損があった場合において、裁判所が「金銭だけで名誉棄損の被害を回復するのは難しい」と判断した場合において認められます。
したがって、そもそも名誉棄損として認められていない、もしくは被害がそこまで大きくない場合は、裁判所が謝罪広告の掲載を命じることはないでしょう。
実際に裁判でも、謝罪広告の請求が認められたケースはかなり少ない現状となっています。
名誉棄損でない限り、加害者に謝罪を強制することはできませんので注意しましょう。
ネット上でも慰謝料請求は可能ですが、準備や手続きには負担が掛かります!
インターネット上での慰謝料請求の可否や手続きの流れ、金額の相場や謝罪請求についても解説しました。
慰謝料請求は発信者を特定できれば可能となりますが、裁判の準備や手続き、弁護士費用の支払いなどの負担がある点は覚えておきましょう。
なお、発信者の特定で要した弁護士費用は、裁判で認められれば加害者側に請求できるケースもあります。
ぜひ、本記事を確認しつつ弁護士にも相談しながら、慰謝料請求の準備を進めてみて下さい。