堺 弁護士が解説:交通事故で「物損」のままにしない|後遺症が残りそうな人身傷害の初動対応と後遺障害等級の取りこぼし防止ガイド
交通事故人身事故目次
- 1 はじめに:事故直後に「大丈夫」と言ってしまった方へ
- 2 なぜ「物損事故」のままだと危険なのか
- 3 物損から人身へ切り替えるための実務手順
- 4 人身への切り替えが難しいと言われたときの整理
- 5 後遺症が残りそうな人身傷害で、治療中にやってはいけないこと
- 6 後遺症を見据えて「記録」を残す方法:今日からできる3つの実務
- 7 症状固定と後遺障害等級:取りこぼしを防ぐための資料作り
- 8 「軽い事故だから後遺障害は無理」と言われたときの反論の軸
- 9 堺市の交通事故でよくある悩み:短いQ&A
- 10 いつ弁護士に相談すべきか:見逃しやすい3つのサイン
- 11 堺 弁護士をお探しの方へ:後遺症が残りそうな交通事故は、初動で差がつきます
- 12 お問い合わせ
はじめに:事故直後に「大丈夫」と言ってしまった方へ
堺市内(国道26号線、中央環状線、フェニックス通りなど)で交通事故に遭った直後、現場では痛みがはっきりせず、警察からの確認に対して「大丈夫です」と答えてしまうことがあります。ところが数日後、首・腰の痛みや手足のしびれが出て、日常生活や仕事に支障が出ることは珍しくありません。
このとき怖いのは、事故の処理が「物損事故」のまま進み、後から後遺症が残っても、適正な賠償や後遺障害等級認定で不利になりやすい点です。交通事故の賠償は、治療の中身だけでなく、最初に作られる記録や手続きの流れが、そのまま後日の評価に反映されます。
本コラムでは、堺の弁護士として堺東駅エリアで交通事故案件を扱う弁護士の視点から、後遺症が残りそうな人身傷害があるのに「物損事故」扱いになってしまったケースを想定し、(1) 人身事故への切り替え、(2) 治療中にやるべき記録、(3) 後遺障害等級の取りこぼしを防ぐための実務ポイントを、できるだけ具体的に解説します。
なお、事故直後の一般的な初動対応の全体像は、別コラムの堺市・堺東で交通事故に遭ったら|初動対応から弁護士依頼までの完全ガイドにまとめています。この記事は、その中でも「物損のまま」になりやすい場面に絞って深掘りします。
なぜ「物損事故」のままだと危険なのか
1. 事故態様の記録が薄くなり、過失割合で揉めたときに痛い
事故の賠償では、治療費や慰謝料だけでなく、過失割合(責任の割合)が結果を大きく左右します。物損事故として処理された場合でも一定の書面は残りますが、人身事故のときに比べて、現場状況の確認が簡略化される運用になることがあります。
後遺症が残りそうな人身傷害の事案では、賠償額が大きくなりやすく、過失割合が数%動くだけで金額差が拡大します。だからこそ、事故態様の客観資料は、最初から厚くしておくべきです。言い換えると、物損のままにしてしまう最大の損失は「お金」そのものより、後から争うための材料が減ってしまう点にあります。
2. 保険会社の「一括対応」が続いていても、後から方針転換されることがある
物損事故のままでも、相手方任意保険会社が便宜上、治療費を立て替える(いわゆる一括対応)ことがあります。これにより「対応してくれているから大丈夫」と誤解されがちです。
しかし一括対応は、保険会社の運用に過ぎません。治療が長引くと、突然「そろそろ治療費対応を終了します」と言われ、治療費の支払いが止まることがあります。後遺症が残りそうなケースでは、治療の継続や検査が重要になるため、ここで主導権を失うと取り返しがつかなくなることがあります。
治療費打ち切りや示談提示の局面での交渉全般については、堺市で交通事故の示談金・慰謝料を最大化するために|保険会社提示額を鵜呑みにしてはいけない理由も併せてご参照ください。
3. 「軽い事故」というレッテルが、後遺障害等級で不利に働くことがある
後遺障害等級の審査は、基本的に書面審査です。事故状況、通院経過、検査結果、診断書などを総合して判断されます。
事故の処理が物損事故のままだと、事故態様の把握が浅く見られたり、車両損傷が軽微な場合に「傷病の程度と事故の衝撃が見合わないのでは」という疑念が生じたりして、因果関係や症状の信用性を厳しく見られることがあります。だからこそ、事故の早期から「人身」として整合的に記録を積み上げることが重要です。
4. 後遺症が残った後に大きくなるのは「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」
通院中に意識が向きやすいのは、治療費や休業損害、入通院慰謝料です。ですが、後遺症が残って後遺障害等級が認定されると、賠償の中心は、後遺障害慰謝料と逸失利益(将来の減収分)に移っていきます。
ここは金額差が大きくなりやすい領域であり、初動の記録が弱いと、後遺障害等級で非該当になったり、等級が低くなったりして、結果として賠償全体が大きく下がることがあります。慰謝料の種類や基準の考え方は、〖人身事故〗保険会社に請求できる慰謝料は?で整理していますので、全体像の確認にご活用ください。
物損から人身へ切り替えるための実務手順
ステップ1:まず整形外科を受診し、警察提出用の診断書を取る
事故後に痛みやしびれが出たら、できるだけ早く整形外科を受診してください。後遺症が残りそうな人身傷害の立証では、初診のタイミングが極めて重要です。
受診が遅れるほど、「事故との因果関係が不明」「別の原因では」という反論が出やすくなります。まずは医師の診察と必要な検査を受け、警察提出用の診断書(傷病名や加療見込み期間が記載されたもの)を取得します。
ここでの注意点は、痛み止めを飲んで「その日は楽だった」からといって、症状が軽いと思い込まないことです。薬の効果で痛みがマスクされ、事故との関係が後から見えにくくなることがあります。診察の場では、服薬の有無も含め、事故後の体の変化を具体的に伝えましょう。
ステップ2:管轄警察署に診断書を提出し、人身事故への切り替えを申し出る
診断書を取得したら、事故を取り扱った警察署の交通課へ提出し、人身事故への切り替えを申し出ます。担当者の不在を避けるため、事前に電話連絡してから行くとスムーズです。
この段階で、事情聴取が行われ、必要に応じて現場の確認(見分)が実施されます。後遺症が残りそうなケースほど、事故態様の確認が後の争点(過失割合、因果関係、損害の範囲)に直結します。
ステップ3:「早いほどよい」ただし、受理の可否は個別事情で変わる
人身事故への切り替えに法律上の明確な期限が定められているわけではありません。ただ、実務上は、事故から時間が経つほど「事故による傷害かどうか」を警察側が判断しにくくなり、手続きが進みにくくなる傾向があります。
結論としては、痛みやしびれがあるなら、受診と診断書提出は可能な限り早く、これに尽きます。忙しさを理由に先延ばしにすると、後遺症が残ったときに「もっと早く動いていれば」と後悔しやすいポイントです。
人身への切り替えが難しいと言われたときの整理
「人身事故証明書入手不能理由書」という例外的ルート
事情により診断書提出が遅れ、警察から人身事故への切り替えが難しいと言われた場合でも、すぐに諦める必要はありません。自賠責保険の請求実務では、警察の人身事故証明書が入手できない場合に備えて、所定の理由書(一般に「人身事故証明書入手不能理由書」と呼ばれる書式)を提出し、事故と傷害の関係を資料で補う運用があります。
ただし、ここから先は「記録と立証」で勝負になります。後遺症が残りそうな人身傷害のケースでは、医療記録の精査や、事故態様資料の収集、陳述書の作成など、専門的な組み立てが必要になります。早期に弁護士へ相談することを強くおすすめします。
「遅れた場合」に最低限そろえるべき資料
後で立証する前提に立つなら、次の資料は早期に確保しておきたいところです。
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初診時の診療録(カルテ)の写しと画像データ
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事故直後からの症状の推移がわかるメモ(いつ、どこが、どう痛いか)
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事故車両の損傷写真、修理見積、ドライブレコーダー映像
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通院日・治療内容・処方薬の一覧
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仕事や生活上の支障がわかる資料(勤務実態、家事負担、介助の状況など)
ここで重要なのは、「後から作った説明」ではなく、当時の記録で裏付けることです。たとえば、痛みの強い日だけ後から思い出して書くのではなく、毎日の変化を短くてもいいので残す方が、結果的に信用性が上がります。
後遺症が残りそうな人身傷害で、治療中にやってはいけないこと
1. 通院間隔が空きすぎる、自己判断で通院をやめる
痛みが強い日と弱い日があると、「今日は我慢できるから」と通院をやめてしまいがちです。しかし通院の空白が長いと、後で「治っていたのでは」「必要性が低いのでは」と見られやすくなります。
もちろん無理な通院を勧める趣旨ではありません。ポイントは、主治医と相談し、治療計画として整合的な通院を継続することです。仕事が忙しい方ほど、通院回数がばらつきがちなので、現実的な範囲で計画を立て、記録に残る形で通うことが重要です。
2. 整骨院だけに通い、整形外科の受診が少ない
後遺障害等級の審査では、医師の所見と医学的検査結果が極めて重視されます。整骨院等を利用する場合でも、整形外科を軸にし、医師の管理のもとで治療経過を記録していくことが重要です。
「通いやすい」「手技が合う」という理由で整骨院中心になるのは自然ですが、後遺症が残りそうな場合は、少なくとも定期的に整形外科で診察を受け、症状や検査結果が医療記録に反映される状態を作っておきましょう。
3. 症状の伝え方が曖昧で、カルテに不利な記載が残る
診察で「だいぶ良くなりました」とだけ伝えてしまうと、カルテには改善傾向として記録されやすくなります。痛みやしびれが残るなら、具体的に、一貫して伝えることが大切です。
例としては、「パソコン作業を30分すると右手にしびれが出る」「振り向く動作で首がつっぱる」「階段の昇降で腰から足に放散痛が出る」など、生活の場面と結びつけて説明します。診察前にスマホのメモに要点を書いておくと、伝え漏れを防げます。
後遺症を見据えて「記録」を残す方法:今日からできる3つの実務
後遺障害等級で差が出るのは、検査結果だけではありません。日々の記録が、診断書の裏付けや陳述書の骨格になります。難しいことをする必要はなく、続けられる形がベストです。
1. 症状日誌は「短く」「具体的に」「継続して」
症状日誌は、長文である必要はありません。重要なのは継続です。
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いつ(朝、夕方、運転後など)
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どこが(首、肩、腰、手指など)
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どうなる(痛む、しびれる、力が入らない、動かしにくい)
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何ができない(洗髪、抱っこ、長時間座位、夜間睡眠など)
この4点を1日1行でも残せば、後から「日常生活への支障」を説得的に説明できます。
2. 仕事への影響は「業務内容」とセットで整理する
逸失利益や労働能力喪失の議論では、単に「痛い」では足りません。どんな仕事で、どんな動作が必要で、その動作がどう阻害されているかがポイントになります。
たとえば、デスクワークなら長時間の座位、画面注視、タイピングが負担になることがあります。現場作業なら重量物の運搬、前屈姿勢、車両運転が問題になります。仕事内容を具体化した上で、症状と結びつけて記録しておくと、後で主張が通りやすくなります。
3. 事故態様の資料は「早いうちに」確保する
物損扱いだと事故態様が薄くなりがちなので、被害者側で確保できる資料は早めに確保します。
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車両損傷の全景と接写(撮影日が分かる形が望ましい)
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修理見積書や整備工場の説明
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ドライブレコーダー映像(上書きに注意)
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現場写真(交差点の見通し、標識、停止線、車線など)
後から集めようとすると、写真が残っていなかったり、映像が消えていたりします。後遺症が残りそうな方ほど、ここは最優先で動いてください。
症状固定と後遺障害等級:取りこぼしを防ぐための資料作り
症状固定は「保険会社」ではなく、医師の医学的判断が出発点
保険会社から「そろそろ治療を終えてください」と言われることがあります。しかし症状固定は本来、医師の医学的判断が出発点です。被害者側は、主治医の見解を確認し、必要があれば治療継続の理由を整理して交渉することになります。
重傷事故や入院を伴うケースで、家族としてやるべきことをまとめたチェックリストは、堺市の交通事故(重傷・入院・後遺障害)で後悔しないためのチェックリストも参考になります。入院慰謝料の目安や増額ポイントに関心がある方は、交通事故の入院慰謝料はいくら?相場(目安)や増額のポイントも併せてご覧ください。
後遺障害の審査で見られるのは「整合性」
後遺障害の審査では、ざっくり言うと次の整合性が見られます。
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事故態様と受傷内容が整合するか
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初診から症状固定まで、症状の訴えが連続し一貫しているか
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画像や神経学的所見など、客観所見があるか
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日常生活・就労への支障が具体的に説明できるか
物損事故扱いのままだと、1の「事故態様」の部分が薄くなりがちです。だからこそ、ドライブレコーダー映像や現場写真、修理見積等の資料が効いてきます。
医師に後遺障害診断書を依頼するときの実務ポイント
後遺障害診断書は、医師が作成する書面ですが、審査で何がポイントになるかは、医療と損害賠償の両方の視点が必要です。
依頼するときは、次の点を「確認事項」として整理しておくと、記載漏れを防ぎやすくなります。
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現在残っている症状(部位、頻度、誘因、程度)
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他覚所見(画像所見、神経学的検査結果、可動域制限の測定値など)
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日常生活上の支障(運転、家事、育児、介護、職務上の動作)
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今後の見通し(改善可能性、治療継続の必要性)
ここで大切なのは、医師に「お任せ」で丸投げしないことです。患者側で事実を整理し、医師と共有した上で、医学的に正しい形で診断書に落としてもらうことが、結果を左右します。
「軽い事故だから後遺障害は無理」と言われたときの反論の軸
相手方保険会社や審査の過程で、「車の損傷が軽い」「軽微事故だから症状が重いのは不自然」という趣旨の主張が出ることがあります。ここで重要なのは、感情で押し返すのではなく、資料で組み立てることです。
反論の軸は主に次の3つです。
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事故態様そのもの(速度差、衝突角度、シート位置、身体の向き)を資料化する
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初期からの症状経過をカルテ・検査で積み上げる
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既往症や加齢変化と区別できるポイントを医療記録で示す
物損事故扱いのままでも、ここを丁寧に作れば、可能性が残る案件はあります。ただし、後遺症が残りそうな人身傷害のケースほど、早期からの整理が成否を分けます。
堺市の交通事故でよくある悩み:短いQ&A
Q1. 事故当日は平気でしたが、数日後から痛みが出ました。因果関係は否定されますか?
因果関係は「否定される」と決まっているわけではありません。ただ、受診が遅れるほど不利になりやすいのは事実です。痛みが出たら早めに受診し、事故後の症状経過を医師に具体的に伝えて、カルテに反映してもらうことが重要です。
Q2. 相手から「点数が引かれるから物損のままで」と言われました。応じるべきですか?
後遺症が残りそうな人身傷害があるなら、被害者側の利益を最優先に考えるべきです。口約束で治療費を払うと言われても、後で支払いが止まったり、賠償の範囲で揉めたりすることがあります。将来の不利益を避けるためにも、人身として整合的に記録を作ることをおすすめします。
Q3. 弁護士に相談すると、いつから費用が発生しますか?
ケースにより異なりますが、弁護士費用特約が使える場合、自己負担なく依頼できることがあります。特約の確認方法や使い方は、交通事故における弁護士特約の使い方|3つの手順をご参照ください。
いつ弁護士に相談すべきか:見逃しやすい3つのサイン
次のいずれかに当てはまるなら、早めの相談をおすすめします。
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事故処理が物損のままで、痛みやしびれが続いている
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保険会社から治療費打ち切りや症状固定を打診された
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MRI等の検査をしても症状が残り、後遺障害が不安
「弁護士は示談交渉の終盤に入れるもの」と思われがちですが、後遺症が残りそうな事案では、治療中から関与した方が資料づくりが整います。一般的に弁護士に相談すべき理由は、人身事故の被害者が弁護士に相談すべき4つの理由でも解説しています。
堺 弁護士をお探しの方へ:後遺症が残りそうな交通事故は、初動で差がつきます
物損事故として処理してしまったかどうかは、後から取り返せない要素が含まれます。しかし、適切な受診、診断書提出、治療経過の記録、検査資料の確保により、挽回できる場面もあります。
堺市・堺東駅周辺で交通事故に遭い、後遺症が残りそうで不安な方は、できるだけ早い段階でご相談ください。状況を丁寧に伺い、必要な手続きと資料づくりを一緒に整理します。
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