いじめ事件の証拠
いじめは、通常、学校の先生が間に入ってくれ、双方の言い分を聞き、いじめがあったとされれば、加害者側に指導をし、加害者が被害者に謝罪し、解決となります。
しかし、あまりにひどいいじめである場合や、長期間にわたって続いているいじめである場合で、加害者がいじめを認めず、話し合いもうまく調わないときには、訴訟を提起することになります。
訴訟で勝訴判決を得るためには、原告(被害者)の言い分が事実であると認めてもらうことが前提で、事実であると認めてもらうためには、被告(加害者)が争っている場合、原告が十分な証拠を出して立証しなければなりません。
それでは、いじめ事件の訴訟では、どのような証拠があるのでしょうか。
この記事では、いじめ事件でよくある証拠を紹介したいと思います。
①学校(国公立を想定)が作成した生徒指導記録
被害者が学校にいじめを通報すれば、学校は、加害者や目撃者に話を聞き、事実確認を行います。
そして、話を聞いた内容を書面にまとめ、「生徒指導記録」(名称は自治体や学校によって異なる可能性があります。)などとして保管しています。
そこで、訴訟を提起するに当たって、まず最初に検討するのは、生徒指導報告を手に入れて、その内容を確認するということになります。
生徒指導報告は、公文書であり、かつ、被害者の個人情報が記載された文書ですので、被害者は、「情報公開請求」や「保有個人情報開示請求」という制度を使えば、原則として開示を受けることができます。
この文書で、当初は加害者がいじめを認めていたとか、いじめを目撃していた目撃者が具体的に話してくれていたりすれば、それを証拠として裁判所に提出することになります。
②第三者委員会が作成した調査委員会
一定の用件を満たしていじめが重大事態として取り扱われた場合、教育委員会の下に第三者委員会が設置され、そのメンバーである弁護士等が、アンケート調査やヒアリング調査を行い、調査報告書を作成します。
調査報告書で、「このようないじめがあった」と事実が認定されていれば、それを証拠として提出することになり、訴訟での使い方は、基本的には①の生徒指導報告と同じです。
ただ、第三者委員会の調査報告書は、①の生徒指導報告のように学校の先生ではなく、法律の専門家である弁護士等が作成するものですので、生徒指導報告よりも詳細・精密な事実認定がなされていることが多く、証拠としての価値は生徒指導報告よりも高いといえます。
③面談の録音や保護者間のLINEのやり取り
いじめ発覚後、学校で先生を交えた面談が行われたり、保護者間でやり取りが行われたりすることもよくあります。
こうした場で、加害者がいじめを認めたり、いじめがあったことを前提に謝罪していたにもかかわらず、訴訟になって、突如、前言を翻すことがあります。
こうした場合には、面談でいじめを認めている録音や、保護者間のLINEを証拠として提出し、「当初は認めていたのに、訴訟になって急に否認するのは信用できない」と主張していくこととなります。
④被害者本人や目撃者の証人尋問
上記①②③の証拠がない場合でも、被害者本人の本人尋問や目撃者の証人尋問で話をしてもらい、いじめの状況を具体的・詳細に話をしてもらうことで立証していくことになります。
このほかには、被害者が保護者にいじめ被害を初めて打ち明けた際の録音やそれを聞き取ったメモなども、十分価値のある証拠になり得ます。
以上が、いじめ事件の訴訟でよく利用する証拠になりますが、ほかにも、事案によって、「これは使う価値がある」というものが考えられます。
どのように訴訟を進めるか、何を証拠として出すかはケースバイケースですので、いじめ被害で訴訟を検討なさっている場合には、弁護士に相談して見込みをお聞きいただくことをお勧めします。
なお、この記事は国公立の学校を念頭に置いたものですので、私立学校の場合には全てが当てはまるわけではないということ、ご留意ください。